読書雑感2

ティモシー・スナイダー著ブラッドランド下巻をようやく読了。
1930年代初頭から1950年ごろまでのウクライナ、バルト三国、東欧(筆者はブラッドランドと呼称、訳語では流血地帯)の悲惨極まる歴史を記述している。上巻に引き続き、ナチズムとスターリニズムのこれでもかというほどの暴力、悪政が淡々と描写されている。上巻の終盤でも感じたことだが、読む進めていくうちに数万、数十万人の犠牲者数にだんだん慣れていくことが怖い。印象としては、下巻はポーランドに焦点が当たっているように思う。ドイツとソ連という大国に挟まれた、かつての大国。ポーランド人レジスタンスがドイツに対し、首都ワルシャワで蜂起したときの言葉が忘れられない。藁にもすがる、諦観にも似た意志を感じる。ポーランドのレジスタンスたちも一枚岩というわけではなく、ロンドンにいるポーランド亡命政権の「国内軍」やソ連が支援する「人民軍」など左右さまざまな勢力、思惑がある。結局、蜂起は鎮圧され、レジスタンスは壊滅状態、ドイツ側にも少なく無い損害が出た。漁夫の利を得たのはソ連。戦後を見据えて、ソ連体制に必ずしも親和的でない国内軍が主力のレジスタンスを支援せず(人民軍は少数派)、ドイツ、レジスタンスともに勢力が弱まることを意図していた…

戦争は政治の延長線上にあるのだなと強く印象に残った箇所でした。戦後、ポーランド国内にて自国に有利な政治体制構築を企図したソ連の狡猾さを感じます。

ポーランドの苦難の他にも、絶滅収容所や赤軍の暴虐など酸鼻極まる状況とその犠牲者数が続きます。

人間は本当に進歩しているのか、歴史から学んでいるのかと疑わざるを得ないばかりです。
50年後、100年後、もっとずっと先の将来までしっかり継承していくべき内容の本でした。
同じことを繰り返さないため…


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