見出し画像

【5月の絵本棚】おとうさんと子どもの対比『なんにもできないおとうさん』

どうもこんにちは。
絵本を人に貸すときに表紙を外すか付けたままにするか未だに悩んでいる男、MATSU-Gです。
皆さん5月ですよ。
5月といえば母の日、ですね。
そして来月は父の日もありますね。
本屋さんの児童書コーナーに行けば毎年のようにそれぞれの関連絵本が特集されていますので、今ではもうすっかりお馴染みのテーマになりつつもあります。保育園とかでも、制作でプレゼントを作ったりしますからね。
本当ならば5月、6月でそれぞれの特集をするべきなんでしょうけど、それはちょっとありきたりなのでまとめて棚にまとめました。
母の日と父の日、近年はこれでもかと言うほど関連作品もでているんですが、今回は私は単純に好きな絵本ご紹介します。

『なんにもできないおとうさん』です。

『なんにもできないおとうさん』
作 ひがしちから
発行所 あかね書房
発行年 2017年5月

格好良くない、さえない父親像

 突然ですが、皆さんの周りにいるお父さんはどんなお父さんですか?
私の父親は昔ながらってカンジの人です。野球と酒が好きで仕事一筋、営業の話になると普段の数倍は口が回っていつまでも喋っていました。
今と昔だと「お父さん」のイメージも大きく変わっているので、一言で言おうにも難しいですよね。
 んでこのお父さん、見たまんまの雰囲気の人です。そしてタイトルの通り、なんにもできない様子が次々映し出されます。
娘のみーちゃんに起こされて公園に出発し、三輪車にも乗れず、ねことお喋りも出来ず、砂場遊びもできません。
そしてみーちゃんに「もう おとうさんたら」と呆れられます。
見た目もそこまで特徴があるわけではない(でもノリはいい)お父さんの、ちょっぴりコミカルで情けない姿が沢山出てくるので、読んでいるとクスリと笑えてきちゃうんですよね。

本当に「なんにもできない」の?

 ただ、このお父さんをよく観察すると、決して「なんにもできない」わけではないことがわかります。
いまいちスマートではないものの、みーちゃんの言ったことは全てやろうとしてくれます。
約束していたとはいえ平日は仕事でへとへとになっているなら休みの日くらいゆっくりしたいだろうに、ちゃんとみーちゃんと一緒に居ます。
しかも公園に行って帰るまでの間、少しの文句も愚痴もこぼしていません。父親なんだから当たり前だと言えばそれまでですが、その当たり前って凄く難しいと思いませんか!?ねえ!?(誰に言うのでもなく)
最後の砂場のシーンだけ一緒にやるのではなく外で見ているだけですが、それでもベンチでスマホをいじらず目の前に座ってみーちゃんを見守っていますしね。見ているのも面倒くさいからではなく、その後の出来事を考えると娘の安全を
 極めつけに最後のお父さんが肩車をするところで、こんな台詞のやり取りが見られます。

みーちゃん「そういえば おとうさん、かたぐるまも できないね」
おとうさん「ああ ほんとうだ。もっと みーちゃんがおおきくなったら やってもらおうかな」
みーちゃん「いいよ、もっと もーっと おおきくなったら やってあげる!」

 このやりとりから「なんにもできない」というのは、みーちゃんから見たお父さんの印象だと言うことがはっきりします。
ですが、みーちゃんは全編を通してお父さんのことを嫌がったりすることは全くありません。むしろ大好きすぎるくらい大好きです。

みーちゃんの生命力!

 この作品の主役とも言えるみーちゃんはバイタリティとモチベーションの塊!元気いっぱいにお父さんのお腹にまたがって重い腰を上げさせたかと思えば、公園に行く道すがらも茂みのトンネルにくぐったり踊ったりと休む間もなく動いています。
 年齢的に3歳〜5歳の間かと思うのですが、その時期特有の万能感もひしひしと伝わります。生活面で自立し、言葉によるコミュニケーションがとれるようになったことで一気に世界が広がることで「なんでも自分でやろう!やってみたい!」と思っているのかもしれません。
転んだあとでお父さんが駆けつけるまでに立ち上がって強がってしまうのも、そういうみーちゃんの強さを象徴しているかのようです。

ひがしちからさんの絵力(えぢから)が光る

 本作は私が個人的に大好きなひがしちからさんの作品。水彩絵の具で淡い色彩を作りつつも、しっかりと線を作っているので登場人物達の存在感がはっきりとわかります。
 ひがしさんの絵で魅力的な部分はいくつもありますが、本作でいうならやはりおとうさんとみーちゃんの表情の数々。ねこの物まねをしている時の顔と、砂場で頬杖をつきながらみーちゃんの砂遊びを見守っているお父さんの顔は私のお気に入りでもあります。
 背景はページいっぱいに描いてはいないものの、必要な情報は過不足無く描き込むことできちんと場面転換を感じさせる説得力を持たせているのも見事です。
全体的にポップな絵柄で親しみやすく、でもしっかりと力を見せつけてくれる本作もめちゃくちゃおすすめです。

まとめ

 お父さんをテーマにした絵本、特に父の日に紹介されいる絵本の数々は、お母さんのものに比べると少し変化球な内容が多い気がします。真っ直ぐたくましい母親象をもつお母さんに比べ、お父さんは結構ユーモラスかつコミカルに描かれております。
今回の『なんにもできないおとうさん』もそういう要素が入っていますが、しっかりとお父さんの良い存在感が溢れている一冊になります。
皆さんも、ぜひ手に取ってくださいませ。

それではごきげんよう。
絵本専門士のMATSU-Gでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?