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経皮的腹部電気刺激が脊髄損傷による便秘に与える効果:パイロット研究

概要

この研究の目的は、腹部電気刺激が脊髄損傷(SCI)による便秘に対して、排便頻度、便の硬さ、および排泄量に与える影響を評価することです。10名のSCI患者を対象に、従来の腸管リハビリテーションと腹部電気刺激(8Hzおよび20HzのFES)を組み合わせた治療を比較しました。

方法

  • デザイン:クロスオーバー実験パイロット研究(A:従来の腸管リハビリテーションのみとA➕B:腹部電気刺激 を比較)

  • 参加者:脊髄損傷による便秘を持つ入院中の患者

  • 介入:2週間、毎日30分間の腹部電気刺激を実施

  • 評価:排便頻度、便の硬さ、排泄量


A:従来の腸管リハビリテーション

  • 栄養管理(Nutritional Control)

    • すべての参加者に下剤食が処方されました。(具体的な内容は記載なし)

  • 排便ケア

  • 各参加者は異なる戦略を用いて腸管を排出していました。具体的には、以下の方法が含まれます :

    • 毎日の腹部マッサージ:(ロージング手技 食後20〜30分間、右から左、下から上に軽く圧迫)

    • 浣腸 摘便

    • 前傾姿勢の排便姿勢指導

  • 薬物治療(Medication)

    • 下剤(Lactulose)が参加者の90%に処方されました。投与量は入院前と同じで、研究期間中は変更されませんでした。

  • 看護チームによる指導

    • 看護チームは、栄養、薬剤、排便ケア方法を指導しました。

B:腹部電気刺激療法

  • 周波数:8Hzおよび20HzのFES電流を使用

  • セッション時間:1日30分

  • 電極の配置:腹部斜筋および横筋に電極を配置

  • 刺激強度:最初の5分ごとに刺激強度を増加させ、最大80mAまで調整

実施手順

  1. 皮膚の消毒:腹部を70%アルコール溶液で消毒

  2. 電極の配置:腹部斜筋と横筋に沿って電極を配置

  3. 刺激の調整:電流の強度を患者が感じるまで増加

  4. 観察と記録:毎回のセッション後に皮膚の状態を確認し、痛みや不快感の有無を記録


https://doi.org/10.1590/1980-220X-REEUSP-2021-0449en

研究の背景と意義

  • 脊髄損傷の影響:SCIは多くの機能障害を引き起こし、その中には神経因性腸機能障害が含まれます。これにより便秘が生じ、患者の生活の質に大きな影響を与えます。

  • 電気刺激の役割:腹部EEは、神経の経路を刺激することで腸管の運動を促進し、便秘の症状を改善する可能性があります。



結果

  • 参加者:10名(男性70%)、平均年齢39歳

  • 排便頻度:腹部電気刺激を併用した治療は排便頻度が増加(p = 0.029)

  • 排泄量:腹部電気刺激を併用した治療は排泄量の増加(p = 0.031)

結論

腹部電気刺激を併用した従来の治療法は、SCIによる便秘患者の排便頻度と排泄量の増加に有効であることが示されました。このパイロット研究は、より大規模な臨床試験の基礎となるものであり、今後の研究によってさらなる証拠が必要です。


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