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大英帝国からやってきたオーソドックスな革靴に、詫び寂びの美意識を見た

基本への回帰

革靴を見るとき、下方向につま先があると靴が「シュッ」として見えます。

でも、実際に履いて真上から見ると上方向につま先があるので「あれ?なんか印象が違う…」と思ってしまいます。

不思議なことに。

“ローク”アルドウィッチはショートノーズ気味のセミスクエアトゥで、コバも土踏まずからつま先にかけて幅広になっているので、靴が横に広がって見えます。

魚にたとえると、“ジョン・ロブ”シティⅡがサバなら“ローク”アルドウィッチはヒラメです。

このヤボったさが命取りになって、ブレイクしないのだと思いますが…

この『古き良き』英国風シルエットはアルドウィッチの個性なので、ノーズがもう少し長い現代風シルエットが好みの人はラウンドトゥで同価格帯、同ウィズの“チーニー”ライムにした方が満足度は高くなります。

つまり、アルドウィッチは古臭いストレートチップです。

色気はなく…けっして有名でも高級でもない、茶人でいうところの丿貫(へちかん)的存在のアルドウィッチは、同じ黒のストレートチップでも『冠婚』ではなく『葬祭』のような場面でこそ、その威力を発揮します。

業がある利休とはちがうのです。


多くの革靴はヒールカップが前後同じ高さですので、新品靴を床に置いたときにヒールカウンターを上から押すと、フロントが宙に浮きます。

ヒールカップが高くて長い靴ほどそうなります。

接地しているのがフロント中央部とヒールカップ前部の2点で、ヒールカップの後ろは浮いているからです。

この靴は面白いことに、ヒールカップの高さが後ろから前にかけてだんだん低くなっていて、フロントとヒールカップ全体で接地しているので、ヒールカウンターを押してもフロントが浮きません。

インソールにも他のブランドがやらない、かかとが当たる場所にクッション材を入れているので、履いて歩くことにこだわったブランドなのかもしれません。


販売元の評価は【中古A】、数ヶ所に入った細かいスレがその理由で、ほぼ新品の革靴でした。

こういった2次流通品を取り扱っている質屋は、査定が厳しいところで買うと個体にハズレはありません。

靴なんか履いたとたんにスレるのは当たり前なので、『ミュージアムピース』でもないかぎりエンドユーザーがそこを気にするのは焦点がズレています。

履けばスレ以上に大きな履きシワが入るので、銀面に大きな損傷がなければ問題ありません。


ロウ引きされた純正シューレースが2組入っていて、やはり「カチッ」としたドレスシューズには「バシッ」としたロウ引き紐じゃないと締まりません。

ただ一般的に純正シューレースは、シングルで紐通ししてベストの長さになっていることが多いので、パラレルで紐を通したりベルルッティ結びをするなら5~10cm(アイレットの数による)長いシューレースに代えた方が、蝶々結びの収まりがいいです。

新たな発見もあったアルドウィッチの評価点は、その購入価格も考慮してドーパミン放出110%



高いのにはわけがある

英国靴なので、シューツリーを“チーニー”古靴と同じく“ダスコ”シダーアルバニーにしようかとも思ったのですが…入れてみると、ウィズFの靴には上手くテンションがかかりません。

履きなれてアッパーの革が多少伸びることを考えると、最初からユルいシューキーパーを入れるべきではありません。

もっと合った相棒を求めて、横にテンションがかけられる同じ“ダスコ”のサンデッドライムにしてみました。

どこで買っても、1万1千円也。

これでもサンデッドライムは、商品ラインナップの中では廉価ツリーです。


Yahoo!ショッピングにしか出店していないショップがポイント爆上がりしていたのでポチりましたが…ずっと【ご注文内容を確認しております】になっていて、1週間経ってもなんの音沙汰もありません。

『無在庫転売』かと、思ってしまいました。

ネットに出店しているほとんどのショップは、遅くても次の日には確認メールがきて発送までの流れを連絡してきます。

相手が見えない世界だからこそリアル以上に気を使うべきだと思うのですが…今どき珍しい会社です。

その旨をショップレビューしておきましょう。

ショップの塩対応に怒りがこみ上げてキャンセルしてよそで買おうとした10日後に、なんの前触れもなく送ってきたツリーをアルドウィッチに入れてみたら…ジャストフィットだったので、キゲンはよくなりました。

サンデッドライムも“サルトレカミエ”のようにサイドスプリットのツリーですが、可動部パーツのデキが違います。

少々お高いですが、英国靴で純正シューツリーが手に入らなかったら“ダスコ”1択です。

ドーパミン放出78%

ライム材の“ダスコ”とブナ材の“コルドヌリ・アングレーズ”の購入価格が、ほぼ変わらなかったところが減点ポイントです。

とはいえ、安価なシューツリーしか持っていない人は1度ホンモノのシューツリーを手にして、その違いを体感してみてください。



フィッティングが大事

スニーカーを買うときに、アスリートでもなければギチギチのサイズを選ぶ人は少ないと思います。

基本、ストレスのないやや緩め。

靴に興味がない人は、子どもの頃から履きなれたスニーカー感覚で革靴もサイズ選びをするので、履いている革靴のサイズが大きいことが多々あります。

紐を緩めて結んでおけば、紐靴でも紐をほどかずにスリッポン感覚で脱ぎ履きできます。

 これが居酒屋の小上がりでよく目にする、サラリーマンのNGパターンです。


極端な話、革靴はボールジョイントとヒールカップで足を固定しているので、ここさえしっかり抑えていればサイズが±0.5くらいズレてもそこまで問題ありません。

ビスポークではないレディメイドで、自分の足に100%合う靴なんてめったにありません。

ウィズがいつも履く靴よりも大きめの靴を履くときは、サイズを落とした靴も1度履いてみた方がいいと思います。

靴がなじんだときに、靴の中で足が遊びます。

足が遊ぶと履き心地は元より、靴ずれしたりライニングが痛むのが早くなります。

内羽根の革が硬い新靴をハーフサイズダウンしているので「この靴入るのか?」とも思いましたが、足入れして小指が当たって少し痛い程度なので履きならして革が柔らかくなったらちょうどいいはずです。


ローク 1880は最上級グレードなので革質も張りがあって申し分なく、きれいに磨いたアルドウィッチを履いてイギリスのブリティッシュパブを訪れたいものです。

そこでポーター片手に“ローク”の靴職人と革靴談義ができれば、革靴好き冥利につきます。

英語を喋れんけど。



noteを書いている中の人はファッショニスタではありません。レビュアーでもありません。 あえてたとえるなら「かろうじて美意識のあるオッサン」といったところです。 自分が買いたいものを買っています。 サポートしなくていいです。 やっていることを遠くから見守っていてください🐰