イタリアのダンディに憧れて、スケベ根性でドレスシャツを買う日本のオヤヂ
イメージアップ大作戦
仕事柄、いつもは着ないのに今でいうところの『キャバクラ』に行くときだけは、スーツを着てくる先輩がいました。
若い人は知らない、『DCブランド』全盛期の話です。
接客をしていた彼女らは、先輩がいつもスーツを着ていると勘違いしたことでしょう。
顔見知りの女性から、先日こんなことを言われました。
「この前は、どこかの帰り?」
???
「いつもは、部屋着の延長線上みたいな格好をしているのに、あの日はジャケットを着ていたから」
…………
その日は他に用事があったのでジャケットを羽織っていましたが、いつも彼女と会うときはプルオーバーやジップアップのトップスしか着ていないので(そういう場でもない)、そう思われても仕方がありません。
ごく普通の結婚をしてごく普通の生活をしている彼女からしたら、他人の服の「ブランドがどことか」とか「デザインがどうとか」は、どうでもいいことです。
ファッションのそういった細かいところは、その界隈でなければ自己満足の世界でしかありません。
でも、そのときに思ったのです。
べつに特別な関係でなくても、第三者に服装のイメージは持たれているのだと。
たしかに、会う頻度が高い人はいつもこんな格好をしている…という想像は容易につきます。
イメージだけですよ。
ですので、毎朝なにを着ればいいか?迷っているそこの貴方、迷うくらいなら昨日と同じ服を着ましょう。
大丈夫です。
大半の人間は、他人が昨日なにを着ていたか?までは覚えていませんから。
3日前の晩ゴハンがなんだった?かを即座に思い出せないのと一緒です。
もう1つ、思ったことがあります。
ファッションにそこまで興味がない層にでも、持たれているイメージの逆サイドを突けば、その印象は残るということ。
いわゆる、『ギャップ』。
ドレスとカジュアルの境目があいまいになった昨今、素材が「シャカシャカ」になったりパンツにドローコードが付いたりしたセットアップに代表されるように、スーツもカジュアル化してしまいました。
それに伴い、ジャケットの下に着るインナーもカジュアルシックなクルーネック等のカットソーに置き換わっています。
そういう時代だからこそ逆に基本中の基本、白のドレスシャツがなんかほしくなりました。
ドレスのシャツだから、カテゴリーはドレスです。
このドレスシャツ、安いものは紳士服量販店の青山商事が展開している“ザ・スーツ カンパニー”で買える2千円もしないものから、イタリア・ボローニャの名門シャツブランド“フライ”が売っている6万円するものまで、価格に幅があります(海外モード系ハイブランドにはまだ高額なものもありますが、ここでは専門外なので…)。
仕事で毎日着るでもなく、オッサンなのであまり安いものを着るのもアレだし、かといってイタリア製高級シャツの値段は、一般人が普段使いをするにはあまりにも高い!
初クラファン
ある日のことでした。
とあるクラウドファンディングの記事が目について『CAMPFIRE』のサイトに飛んだら、それより先に関連にあった違うプロジェクトに目が留まりました。
クラウドファンディングといえば、令和納豆と支援者がリターンをめぐってネット上をにぎわせていましたが…
最初のプロジェクトは期間がまだあるので置いといて、とりあえずそっちを見に行きました。
国産シャツブランドの“デッコーロウォモ”でした。
“デッコーロウォモ”はパイロットシャツが有名で、そっち方面の『意識高い系』オッサンにはカリスマ的人気、干場編集長もセレクトしているブランドです。
この“デッコーロウォモ”がやっていたクラウドファンディングは、『パイロットシャツ』と双璧をなす『ドレスシャツ』に、これまでの素材コンコルドから新素材オーヴァーチュアに変更したニットシャツが、定価の2割引で買えるリターンが付いたものでした。
支援金額 16,000円也。
募集終了まで1週間をきっているのに、支援者が3人しかいません…
中国で縫製していたころに比べて、製品価格が倍以上に跳ね上がってしまったのが、仇となっているのかもしれません。
注目されていないことに注目してしまう性癖があるので、少々お高めな気もしたのですが支援をすることにしました。
企業を応援して、金を回すことに参加できている感があったのも支援理由の1つでした。
実は…このドレスシャツ、『メルカリ』にも新古品が出品されています(執筆時現在)。
SMサイズとMサイズの人なら、販売チャンネルがかぎられていて基本定価販売の“デッコーロウォモ”が1万円弱で手に入るので、絶対に買いです。
未体験ゾーンへ
リターンのシャツは、新モデルでリリースしているドレスシャツの中から選べました。
元々の『お題目』がジャケットの下に着るシャツなので、タイドアップをする場面も考慮して首周りが自分サイズのMLサイズ。
最近のジャケットのラペルやネクタイは細いナロースタイルが主流で、それとバランスがとれるよう襟は1番小ぶりなゲーブルカラー(ショートワイド)にしました。
『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブルが、愛用した襟型です。
「体験したことのない全く新しいシャツ」というふれこみのシャツに袖を通すと、ジャストサイズすぎるくらいにジャストサイズにもかかわらず、ニットシャツなのでストレッチが効いていて可動部になんのストレスもなく、後ろ身頃にプリーツはおろかウエストのダーツすら入っていません。
シャツ単体で着てタイを締めないのなら、1サイズ上げた方がいいかもしれません。
高価なシャツだけあって、肉厚の白蝶貝ボタンにはブランド名が刻印されており(高級シャツは、そうなっていることが多い)、プラスチック製ボタンを採用している安価なシャツとは一線を画しています。
ボタンやジッパーのような人目につきにくい外注パーツのグレードは、シャツにかぎらず服の販売価格に左右されます。
細部にまでこだわったシャツだったので、ドーパミン放出は82%。
自宅で洗って干すだけでシワにならないのも、好評価ポイントでした。
良くも悪くも身体のラインがはっきり出るので、着る人の体型を選びます。
筋肉質の人にこそ似合うのですが、中年太りにはまずもって似合いません。
生地が薄く胸ポケもない本格仕様ゆえに、白だと特に両ビーチクが無防備にさらけ出されるので、アンダーシャツを着て恥部は速やかに隠しましょう。
アンダーシャツをまちがえて、ドレスシャツのボタンを開けて首元のTシャツが顔を覗かせている、残念なビジネスカジュアルの人が後を絶ちません。
チェックのネルシャツじゃないんだから。
元は下着だったドレスシャツの下に、さらに下着を着ているのが見えるという…マトリョーシカみたいな絵面になってしまいます。
そう高くもないので、ベージュでシームレスのアンダーウェアを着てください。
ただ…
この手のアンダーシャツは、かつての女性用ババシャツと同じく市民権を得ていないので、人前で華麗にドレスシャツを脱ぐ場面には適していないことを、ここにご報告しておきます。