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良い靴が素敵な場所に連れていってくれるのは本当か?オトコの色気靴で考察

シルバノとステファノ

しばらくは、革靴を買うまいと心に固く誓ったはずなのに、ヤフオクで目玉商品を見つけると入札せずにいられない病気は、どの診療科へ行けばいいのでしょうか?

もう、ビョーキです。

ビョーキ。

買ったままで、箱に入りっぱなしの積み靴が部屋で高層化してしまい、下層の箱は潰れかけてきているのでどうしたものかと…

そんな末期症状の中、またしてもポチってしまったイタ靴がこちら→


イタリアのファクトリーブランドは似たような名前が多く、靴だけでも“シルバノ ラッタンジ”に“シルバノ サセッティ”、今はなき“シルバノ マッツァ”の『シルバノ』つながり。

木箱に入った“ステファノ ベーメル”に“ステファノ ブランキーニ”、“ステファノ ビ”(これは、ブランキーニがLVMH社に売却したブランド)に“ステファノ ガンバ”の『ステファノ』つながり。

などなど…身内なのか?はたまた他人の空似なのか?イタリアに精通しているギョーカイ人でなければ、区別のつかない乱立状態です。

「ステファノ ロッシ?ロッシって誰?誰?」

ファッション雑誌でも見たことはないけれど、ステファノ ◯◯ならきっとメディアにもまだ発掘されていないだけの『ちょい悪』なイタ靴に違いない。

「LEONより先に、俺が掘ったどーーー!」

と、声高らかに流行の最先端をつかむ思いで『激安ステファノ』に飛びつくと…これがまた、大手靴チェーン店のABCマートが仕掛けた甘い罠。

自称ファッショニスタ、敗れたり…

イタリア靴といえばマッケイ製法が多いなかで、『ロッシ』は潔くセメント製法。

そして、そのほとんどはゴム底。

そりゃ、数千円から買えますわ。

こんな仕様じゃ、伝説の靴職人ステファノ ロッシ(仮)が作っているはずもなく…謎の天才時計師フランク三浦と同じく、想像上の人物なのでしょう。


『ステファノ』ではありませんが、“ステファノ ブランキーニ”が独立前に修行をしていた、“ア テストーニ”の靴が今回の落札靴です。

アメデオ・テストーニ氏は実在した人物で、「世界一美しい靴を作る」ために自らの名を冠したブランドで創業しました。

現在では靴にかぎらず、財布やベルトなどの革小物もラインナップしている名門ブランドです。

が、

日本での認知度が低いために、2次流通や並行輸入の値下がり率は、まるでスカイダイビングのよう。

銀座の旗艦店にて、定価で買ったあとにネットで相場を確認したら、自分のバカさ加減がいやになると思います。

正直、定価10万円オーバーの靴でもデザインが「?」の靴は数多く、革靴初心者は手を出してはいけないブランドです。

ファッションシーンにおいて、イタリア物なら間違いないという先入観からくる悲劇。



黒ラベルのフルブローグ

“ア テストーニ”にしても、韻を踏んだような同国産“サントーニ”や隣国産“マグナーニ”といった似たブランド名があってややこしい。

そして、靴のシルエットも似ている。

それでも“ア テストーニ”だけの意匠はあって、それは上級ラインのブラックレーベル以上で採用されます。

それは、“ア テストーニ”お得意のボロネーゼ製法(マッケイ製法の派生ver.)だったり、アッパーとリブ(正確には、リブではない)の際に配された独自のスパイラル(細いマカロニみたいなヤツ)だったりします。

この、見る人が見れば“ア テストーニ”の靴だと分かるスパイラルのある靴がほしくて、黒い内羽根式フルブローグのM11559FRH-98061-P18を落札したのです。

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ちなみに、フルブローグとはつま先にメダリオンのついたウイングチップで、切り返しの部分にはパーフォレーションの穴が空いている華やかな靴です。


イタリアの靴は、イギリスやフランスの靴みたいな靴固有のモデルネームはなく、その靴を表すのは工業製品のような数字とアルファベットの組み合わせです。

このフルブローグM11559FRH-98061-P18は、コバの張ったロングノーズのやりすぎ靴で、人によって好き嫌いがはっきり分かれます。

同じイタ靴でも、“エンツォ ボナフェ”のチャッカブーツがグラマラスな700系新幹線なら…

コイツは、シャープな500系です。

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イギリス靴のような質実剛健さは皆無なので、革靴を履く一般サラリーマンにはオススメしません。

(イギリス靴“ジョン・ロブ”の靴は「シュッ」としてますが、イタリア靴“ア テストーニ”の靴は「シュシュッ」としています。)

インソールにはマッケイの証である縫いが入っているのに、コバにもマッケイにはないはずの出し縫いが入っているので、多分ブラックラピド製法です。

カッチカチのソールは返りが悪く、このまま履くとロングノーズとの相乗効果で、つま先部分が鬼のように削れる未来が目に見えています。

アンティークスチール必須です。

曲がりなりにも定価は15万円以上するので、靴底の仕上げはヒデュンチャネル。

ヒデュンチャネルがどうこうではないのですが、普段は見えないし擦れてしまう靴底(とくに革底)の仕事具合を見れば、その靴のことがだいたい分かります。

いくらブランド物の靴であっても、安っぽい靴底はホントに安っぽい。

逆に安価な靴でも、いい仕事をしている靴底の靴はいい靴です。

この靴を履くにあたって、カジュアルチックなパンツにマッチングできるほどスタイリング力が凄腕でもなく…そうなると「カチッ」としたスーツに合わせるのがベターです。

プライベートでスーツを着るとなれば、それなりの場所に行くときにしか着用しないわけでして、靴が素敵な場所に連れていってくれるというよりも…「素敵な場所に行くときにしか、良い靴を履かない」の方が、理にかなっている気がします。



どこで買うか?

この出品者、ヤフオクだけでなくメルカリにも出品していましたが、送料無料の同条件でメルカリが800円安いのは、単純にサイト手数料の差なのでしょうか?

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《ヤフオク》


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《メルカリ》


結局は、ヤフオクのクーポンを使った方が安くなるので、ヤフオクで買いました。

15万円の靴が3万円台半ばと、ディスカウント率は70%を超えていますが、なにもココにしかない『掘り出し物』を見つけてきたのではなく、これがこの靴の需給バランスから弾き出された売価です。

現に、同じ靴なら楽天市場BUYMAで買った方が数千円は安く、これらのサイトではサイズが合わなかったので、買わなかっただけです。

(ウィズが広いので、あとハーフサイズ小さくてもよかった気もしますが…)

最安値でなかったとはいえ、革靴で3万円台はファッションに意識高い系の入門靴“スコッチグレイン”や“ジャランスリワヤ”の価格帯で、それで“ア テストーニ”のブラックレーベルが履けるなら、どう考えてもドーパミン放出80%以上。

ただ、素敵な場所へ訪れなければ履かずに終わり、箱入り靴タワーの新たな一部になるかもしれないのが『不安の種』です。



noteを書いている中の人はファッショニスタではありません。レビュアーでもありません。 あえてたとえるなら「かろうじて美意識のあるオッサン」といったところです。 自分が買いたいものを買っています。 サポートしなくていいです。 やっていることを遠くから見守っていてください🐰