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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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現実バジルの写真から見える、家庭と時代

はじめに

 こんにちは、松田と申します。noteにて、OMORIに関する自分の解釈・考察をまとめております。
 後日、類似した内容の動画がYoutubeの「松田文哉」のチャンネルにて公開される可能性もございますが、この記事を書いているのも松田文哉であるため、ご安心ください。
 また、今回を含めまして、OMORIの解釈などはあくまでも「ゲームとしてのOMORI」や公式サイト、かつて没になったと思われる要素から組み立てていきます。ゲーム以外のメディア媒体のOMORIや、他のOMORIファンの方々の考察を否定するものではありません。
 資料として貼らせていただく画像は原語版・日本語版の両方を含んでいます。

 以上を踏まえ、苦手な方やネタバレを見たくない方はご注意ください。

バジルの写真について

バジルにとって「写真を撮る」ということ

 ご存じの通り、サニーの友人であるバジルは、作中の現実から4年前、友だちの写真を撮っていました。
 後にこれは、バジルにとって「失うのが怖いものを撮っていた」と判明し、バジルがどれだけ友だちとの時間を大切に思っていたかが分かります。

バジルにとっても、友だちとの時間はかけがえのないものであった。

 日本ではあまり馴染みのないものの、海外では写真を撮る際「その一瞬を切り取って残す」という意味を持っていることがあるそうです。
 例えば、ニューボーンフォトという文化があります。子どもが誕生したことを記念し、その生まれたての子どもの姿や家族の姿を残す、というものです。この時、「子どもが誕生した」という一瞬を保存するわけですから、中には誕生の前から写真撮影を予約し、生後まもなく撮影所へ向かう家族もあると言います。
 バジルの「友だちとの時間を残したい」という気持ちは、この考え方によく似ているように思えます。

写真から分析する曜日と年代

 そのように「一瞬」を大切にしてくれているバジルのお陰で、バジルの写真からOMORIの舞台の年代を詳しく推測することができます。
 写真には一つ一つ日付があります。それらを仮の曜日として1番から7番の数字を割り振り、並べてみたものが以下の通りです。

クリスマスの曜日を1とし、1~7の曜日を割り当てたもの

 最も写真が多いのは⑤と⑥の曜日です。
 ⑤と⑥の1番目の写真には、「今週末にサニーの家に泊まる」と明記され、⑤では洗い物をしているマリとヒロが、⑥ではサニーのベッドのぬいぐるみと戯れている友だちの姿が見られることから、「今週末」に該当したのがこの3月9日と3月10日であることが分かります。
 また、⑤の3番目に該当する5月22日の写真のコメントからは、学校生活が忙しく集まる時間がとれなかったことが分かり、この日は夕方まで6人が一緒にいることから、この日は休日であった可能性があります。
 更に①の2番目にあるマリがサニーを背負った写真は下校中のものであるとコメントが残されており、この①の曜日が平日であった可能性があります。

 早速曜日を振り直していきたいところですが、先程の番号では1つ解決できない問題があります。
 それは閏年です。2月が29日まであるとするならば、それ以前の日付であるクリスマスの曜日とバジルの誕生会の曜日はズレてしまいます。
 その為、まずは基準として休日が確定している3月9日と3月10日が土日である年を探していきます。

 閏年でない直近の年は2002年、1991年、1985年です。
 一方、閏年では1996年が該当します。

 ここで一つの指標として使うのが、OMORIの舞台に登場するゲーム機です。権利上完全に同一のものは表現できずとも、モチーフになったと思われるゲーム機は存在するはずです。

ゲームボーイのようなゲーム機と、たまごっちのようなゲーム機

 お恥ずかしながら、この時代のゲームについて詳しくないため、確信を持ってモチーフを特定できたのが「サニーが遊んでいた携帯型ゲーム機」と「ペットロック」の2種類のみでした。

 サニーがゲームをしていた様子や、ペットロックが丁度あの事件が起きる頃に最新型として発売されていたことを考えると、この写真の年代は1989年以降、1996年付近であることが分かります。
 先ほどの中でこの範囲に該当するのは、1991年と閏年である1996年です。
 1991年であればクリスマスは火曜日、バジルの誕生会は月曜日の出来事になり、1996年であればクリスマスは月曜日、バジルの誕生会は日曜日の出来事となります。

 友だちが仲良しであることは言わずもがなですが、実は友だちと誕生会を開いて祝っている写真が残されているのは、サニーとバジルだけになります。
 バジルが「親友」であるサニーの誕生会だけ写真を撮った、と考えることは出来なくもないですが、普段から友だちの様子を満遍なく撮影しているバジルの人物像としては少し不可解です。
 そこで、公式が画像で提示している各誕生日を見てみます。

6人の誕生日

 この中で、アルバムに写真が載っておらず、写真が撮影できるはずだった12月25日から最後の写真が撮られた9月22日までで誕生日を迎えているのは、ヒロ(1月1日)、マリ(3月1日)、オーブリー(5月23日)の3人です。
 先の通り、バジルたちが写真を撮るのは休日が多いです。これは学校がなく、1日をみんなで揃って過ごすことができているからでしょう。
 ヒロは元旦が誕生日ということもあり、ヒロが夏休みで家に帰ってきた際、家族の時間がないと酷く悲しんだ母親を見るに、恐らく曜日に関係なく1日を共に過ごすことは不可能です。残りの2月28日or29日以降であり閏年に左右されないマリとオーブリーの誕生日を見ると、3月1日は金曜日、5月23日は木曜日となり、学校があったためにみんなで誕生会を開けなかった可能性があります。
 マリもオーブリーも父親に大切にされていたため、友だちとの誕生会か家族との誕生会かのどちらかを選ばなければならなかった場合、有無を言わさず家族との誕生会を優先させられることになったでしょう。

 また、オーブリーの誕生日に公式ツイッターに投稿された漫画では、オーブリーが友だちに祝ってもらっているシーンが登場します。

不良チームに祝われる中、かつての誕生日を思い出すオーブリー

 バジルやサニーのケーキと比べて非常にシンプルであり、プレゼントやパーティハットなどを被っている様子もないことから、オーブリーのこの思い出は、出来なかった友だちとの誕生会の補填として行われたものである可能性が高いです。

 冒頭の通り、バジルが「その瞬間」を残そうとしていたことを考えると、この時は既に「オーブリーの誕生日」は終わった後であったため、バジルは撮影をしなかったのかもしれません。

 長くなりましたが、友だちの誕生日が平日であるならば、彼らは大きな誕生日パーティをしない可能性があります。
 であれば、バジルの盛大な誕生日会が行われたのは、みんなで1日過ごすことのできる休日である可能性があり、彼の誕生日が日曜日である閏年の1996年がこの4年前に該当することになるのです。

1995年と1996年のカレンダー、及び曜日に割り振った写真

これらから分かること

 まず初めに、写真が木曜日に1枚も残っていないことが分かります。火曜日、木曜日も決して多くなく、火曜日の写真は下校中のもの、木曜日の写真は夏休み中のものです。
 これには、マリが関係していると考えています。

マリは塾で帰りが遅くなることが多かった

 回想シーンでは、マリが塾に通っていて帰りが遅いということが明かされます。また、現実の写真でマリとサニーが抱き合っているもののコメントには「大学受験のために追加で授業を受けている」ということも記されています。
 サニーとマリが行うことになった発表会に対しても、そもそもマリがピアノを習い、レッスンを受けていたことが暗示されています。
 つまり、マリは平日のほとんどを習い事に費やしていた可能性があるのです。
 サニーのヘッドスペースに両親は登場しません。サニーの記憶が眠っていると思われる失われた図書館でも、両親に纏わるエピソードは登場しません。また、クリスマスやサニーの誕生日であっても、両親が写真や回想に映りこむことはなく、サニーとマリは二人で家にいることが多い可能性があります。
 マリがいない間、サニーは大きな家で独りであったのかもしれません。
 また同時にこれは、同じように両親と顔を合わせず祖母と暮らしているバジルにとって、友だちと会えない≒独りの時間を過ごすこととなっていたでしょう。
 二人にとってマリや友だちと過ごせる時間が、如何に貴重で大切なものであったかを、この写真からより深く理解することができるのです。

 またこれは、サニーとマリが引っ越してきた時期を推定するのにも役立つのですが、それはサニーと家族の記事にて紹介させていただきたいと思います。

おわりに

 この年代の特定には穴が多いです。今後、より明確な特定法や、よりしっくりくる年代が解釈出来次第、追記や訂正を致します。

 閲覧ありがとうございました。この記事が皆さまのOMORIの解釈を手助けするきっかけとなりましたら幸いです。

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