西日本アコーディオン仲間の集いに寄せて

この夏、西日本のアコーディオン愛好家が集まって交流・学習する場だった「西日本アコーディオン仲間の集い」が、その幕を閉じました。
45回目の年になるはずでしたが、新型コロナの影響で中止という形で終わってしまい大変残念でした。

記念冊子に文章を寄せましたので、掲載します。
アコーディオンを学ぶ人へのエールのつもりで書きました。
よろしければご一読ください。

***

 『誰も予想できない形で、ずっと続いてきたこの「西日本アコーディオン仲間の集い」が終わってしまうことになり大変残念な思いです。年に一度集まって学習し交流する場として、長年アコーディオンの普及、演奏技術の向上に多大な貢献をしてきたイベントだったと思います。
これまでこの集いに関わってこられた皆さまに、心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。

 最後に私から何か皆さんに…ということで、これまで私が担当した講座のまとめとまではいきませんが、私自身がアコーディオン演奏において大切にしていることをお伝えしたいと思います。

 アコーディオンは、皆さんもご存知のように風を使って音を出す楽器です。
風と一言で言っても、そよ風やつむじ風、突風、嵐のような強風があるように、空気の流れは一定ではなく様々に変化します。そして、例えばこれらの風で揺れる木々の葉のゆらぎも、風によって大きく変わりますね?
皆さんには、この風を蛇腹の開閉によって起こる「空気の流れ」、木々の葉を「リード」に置き換えて考えてみて欲しいのです。ただ単に蛇腹を開け閉めして鍵盤やボタンを押すのではなく、空気の流れを考えながら蛇腹を様々に操作し、それによってひとつの音が本当に沢山の表情・色彩を持っていることを体験してみてください。

 そのためには自分が鳴らしている音をよく聴かなければ、音の表情や色彩を体験できません。この「聴く」は多くの人が勘違いしていますが、音が耳に入ってくる状態のことではありません。耳には蓋がないので音は勝手に《聞こえて》きますが、これは《聴いている》とは言えないのです。
自分の音を聴くとは…

1.こんな音が鳴るだろうと想像し、または願いながら

2.音が鳴る前に、よーく耳をすませて

3.鳴った音が、想像または願い通りの音かチェックすること

これが自分の音を聴く、ということです。
アコーディオンは右手・左手・蛇腹と同時に三つのことをやらなければならず、頭がそれらでいっぱいになりやすいのですが、それでも自分の音をよく聴いて、一音一音に指や蛇腹で工夫を施していくところに、この楽器の面白さがあると思います。

 蛇腹や指でうまく工夫できるようになるには、楽器と身体の関係も見逃せない要素です。
背中を丸めて椅子にどかっと腰掛けていませんか?
アコーディオンは大きな楽器です。
こんな大きな楽器は全身を使ってちゃんと支えてあげなければ、蛇腹を操作する腕や鍵盤を押す指はうまく機能してくれません。
そして不思議なことに、姿勢が悪いと音をよく聴くこともできなくなります。
まずはちゃんと椅子に座りましょう。
背中が丸まっていたり逆に腰が反っていたりすると、身体はその体勢を維持するので精一杯です。楽器を弾くどころではありません。
これまで楽器の位置を工夫したことはありますか?
本当に、いまのその場所が最適でしょうか?
今まで疑いもしなかったところに、弾きにくさの原因があることは多々あります。

私達の身体はみんな違います。
ですので、最適な楽器の場所、ベルトの長さはそれぞれが自分の身体と相談して見つけていくしかありません。先生はあくまでも想像してアドバイスをおくることしかできないのです。姿勢に関しても音と同様に色々と工夫して、一番居心地が良い状態を自分で見つけていきましょう!

姿勢については、随分前からブログやnoteというサービスを使って、私自身の研究や考えを記しています。ご興味ある方は、ぜひ覗いてみてください。
(松原智美ホームページ https://matsubara-tomomi.com からブログやnoteにアクセスできます。YouTubeチャンネルも併せてチェックしてみてください。)

 もし皆さんの中に「もうこれ以上は上手くなれないだろうな…」なんて思っている方がいるとしたら、ここまで書いてきた三つのことー①空気の動きをイメージする②よく聴く③姿勢を見直すーに取り組んでみてください。
きっと、諦めるのは早すぎる!課題は山ほどある!と実感すると思いますよ。
そして本気で取り組んだら、絶対に上手くなります。

 みなさまのこれからのアコーディオン人生が、音楽と学習の喜びに溢れた日々になりますようにと心から願っています!     2020年6月 松原 智美』

いただいたサポートは、奏者としての活動や修練、身体の使い方研究への活力となります。サポートを是非よろしくお願いいたします。