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//Dear

 「ねぇ、サンタさんって、ほんとうにいるの?」

 「どうしたんだい、急に。」

 「だってわたし、いままでサンタさんなんて見たことないもの」

 「そうかい。でもね、サンタクロースは本当にいるよ」

 「でも、おんなじクラスのみっちゃんは、サンタさんはうそで、ほんとうはパパかママなんだって言うんだよ」

 「きっと、みっちゃんのパパやママはサンタクロースのように優しい方なのだろうね。それでも、サンタクロースはいるよ」

 「パパやママじゃないのに、なんでわたしのほしいものがわかるの?」

 「子供のほしいものがわかる才能がある人だけが、サンタクロースになれるのさ」

 「そんなに他人にやさしくできる大人がいるなんて、しんじられないわ」

 「そんな事は無いさ。サンタクロースは子供たちの喜ぶ姿を見ることが幸せなんだ。」

 「サンタさんにも家族はいるの?」

 「サンタクロースにも子供がいるよ。きっと子供も大人になったら、サンタクロースになるのだろうねぇ」

 「わたしも大人になったら、サンタさんになりたい!私も、だれかをよろこばせることがしたいの」

 「それはとっても素晴らしいことだね。でも、サンタクロースにならなくても、誰かに喜んでもらうことはできるよ」

 「そうなの?」

 「そうとも。君は、将来やりたいこと、なにかないかな?」

 「わたしは歌手になりたい。まわりのみんなはムリだーとか、にあわないーとか言うのだけど。わたし音楽がすきなの。おかしいかな?」

 「なにも可笑しなことなんてないさ。とてもステキで、素晴らしいことだよ」

 「えへへ、そうかな」

 「そうだとも。さぁ、もうずいぶん長くお喋りをしてしまった。パパとママに夜更かしを怒られる前に、早く寝なさい」

 「ねぇ、またお話ししてくれる?」

 「そうだねぇ。君がいい子にしていたら、来年もきっと会いに来るよ」

 「じゃあわたし、いい子にしているね。おやすみなさい」

 「それは楽しみだ。おやすみなさい」

 

 子供がすやすやと寝息を立てる。

 私は、担いでいた大きな袋から手回しのオルゴールを手に取り、枕元の白杖の傍にそっと置いた。

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