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FAB CUSHIONという天才

 FAB CUSHIONが13年ぶりに2ndアルバム「BERMUDA TRIANGLE」をリリースした。

 FAB CUSHIONは井筒昭雄のソロユニット。僕の友人でもある。十数年前にリリースされた1stアルバム「Catch The Poppycock!!」を僕はたまたま新宿タワレコの試聴機で聞いて、びっくりしてそのまま購入したのもそんな昔なのか。その後、たまたま友人が大学の同級生と言うことで紹介してもらって、数度ではあるが一緒にDJをする機会もあった。

 とはいえ、1stの後はしばらく活動がなくて、彼の活動はCMやテレビドラマなどの音楽に移行していった。しかも、気がついたら、あれよあれよと言う間に売れっ子になっていた。当初は有名な音楽制作会社に所属していたのだが、すぐに独立して、いまや手がけたドラマやCMは誰もが1個は知っているもので彩られている。家族で面白がって見ていたドラマの音楽が、井筒くんだったことも何度もある。

 最近のCMでは、このカップヌードルのCMのでんぱ組 inc.の曲の後のクレジットパートの部分がそうらしい。


 連続ドラマは今期は「死神くん」を手掛けている。ちなみに大野智つながりでは「怪物くん」もそうだったりする。個人的には「ブラッディ・マンデイ」を見ていてクレジットに見つけた時が一番印象に残っている。あと、ドラマではないが、子供とずっと見ていた「えいごであそぼ」のギターロックなABCの歌が井筒くんのアレンジだと知り驚いたという経験もある。残念ながら、もうオープニングは変わってしまったけど。(どうでもいい話だが、「えいごであそぼ」がケボーとモッチを外したのは本当にやってはいけなかったと思う。あれでかなり多くの視聴者を失ったと僕は思う)

 そして、何と言っても、一番の驚きは東京オリンピック招致のFinal Presentation Filmの音楽を手掛けたことだ。


 うん、井筒くん、出世しまくりだね。僕が中高のころ、ドラマサントラといったら、S.E.N.S.か日向敏文だったがもう、その領域に達しているといってもいいと思う。

 井筒くんの音楽は、CMやテレビサントラについて言えば、良い意味で型がない。あ、井筒くんだってわかるような特徴を音やメロディの中に残さない。その代りにその音楽が完璧にCMやドラマを引き立てる。必要な場面に必要な音楽を提供することこそが、彼の音楽の最大の特徴である。それゆえに引っ張りだこなのだろう。それはこのTOKYO2020のYouTubeを見ればよくわかるだろう。まるで佐村河内の指示譜面をもとに作曲する新垣隆のように、完璧に画面と音楽がシンクロしている。って、あまりほめ言葉になってない気もしないでもない。

 その彼がソロでやっているFab Cushionは、じゃあ、無味乾燥なBGMなのかと言ったら、全く正反対でアーティストエゴが丸出しな作品だ。1stのCatch the Poppycockがリリース当初、日本版Beckとか言われていたが、まあ、似ていなくもないがなんか、そのBeck的な部分以外の要素が大きすぎて、すごいことになっている。

 これは1stの1曲目だけどイントロのドラムのブレイクビーツがすごいよね。あと、間奏のオルガンの音がかっこよすぎる。全体にまるでバンド演奏的なのにこれ全部一人でやってるのだから困る。洋楽的なメロディの作り方も、ちょっとというか、かなりbeckっぽいのだがすごくかっこいい。そうそう、リリース当時、ちょうどこれとsexx lawsをつなげたりしてたのを思い出した。

 で、これが十数年へてどうなったかといったら、こんな感じですよ。


 なんも変わってねえ。歌は日本語になってるけど、beck感が残りながらも、オリジナル度はさらにあがってる。っつうか、このメロディでよく日本語乗せる気になったなあと思う。あと、音のスケール感が広がっている。アルバム全体にモンド感が増えているのはむしろ意外だったんだけど、細野晴臣が好きな人が好きになりそうな音だなあと思った。

 あと、彼のFab Cushionでの圧倒的な特徴は、ものすごく開放的なアレンジで、ものすごくクローズドなメロディを歌うことだとわかった。演奏上ではメロディをとるキーボードの音の使い方も好きなんだけど、それ以上に個人的にはギターのカッティングが好き。それと、本人はそこにはあまり固執してなさそうだけど、声が結構好き。このメロディにあった声だと思う。

 ちなみに井筒くんはFab Cushion以外にもLEMOというユニットをやっていて、そのミニアルバムも全国流通になった。こっちはよりポップ度が高いので、合わせておすすめしたいところ。

 ということで、まあ、何が言いたいかといえば、タイトルの通り井筒君は天才だと思うということ。

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