自分の代わりにシステムに働いてもらう「仕組み」を作る(役割分担)

もともと会社というシステムは、ビジネスモデルを駆動するために資金を株式という形で投入し、その資金を資源に割り振って仕入れ・設備・人員などをうまく回す「システム」を作ることで、自動的に収益を得る仕組みになっています。

この会社の仕組みは組織という人やお金、リソースが大量に集まった状態で力を持つものです。ただWebの「システム」を作ることでも、個人でも同じように自動的に収益を得る仕組みを作ることができます。ただし、会社組織とは違い「ヒト」も「モノ」も「カネ」もない状態で仕組みを作るにはそれなりの工夫が必要になります。

今回は何をシステムに肩代わりしてもらい、自分は何に注力すべきかについて話をしてみたいと思います。

接客

システムにおける接客とは、サービスの提供です。24時間365日いつネットからお客さんが来るかわかりません。もちろん個人では対応できるわけはないので、ここは可能な限りシステムに肩代わりしてもらいましょう。

そうは言っても、システムを使っている利用者はどうしても「人」とのかかわりが欲しくなります。わからないことは人に聞きたくなります。最後の最後は自分が対応することになりますが、何段階かステップを用意しておきましょう。

1.システム上で提供するサービスでできるだけ完結させる
2.FAQやマニュアルを用意して疑問点に事前に答える
3.サポートコミュニティを作って、利用者同士でも解決できるようにする
4.問い合わせと回答を可視化する掲示板を作って、利用者に見てもらう
5.上記を抜けてきた問い合わせには自分で回答する

上記のような努力をしても、例えばすべてをすっ飛ばして5のアクセスをしてきたり、法人の場合は会社の電話番号にいきなり電話をしてくる人もいます。「直接聞いたほうが速いからさっさと聞きたい」という考えの人ですね。

このような人に対応すると、単に自分の時間が盗られるだけではなく、本当は対応が必要な人のサービスを後回しにして割り込みを許すことになります。上記の1から4を案内して「問い合わせの内容には直接答えない」という方法も含めて検討すべきです。

問い合わせについても、よく来る問い合わせについてはシステムを組みなおして問い合わせが来ないようにシステムを改良したり、FAQを追加したりしておくと、5の絶対数を減らすことができます。とにかく人手がかかることは避けるようにしましょう。

営業

営業活動は、どのような商品を売るのか?ということにも影響してきます。営業が得意なエンジニアの人は少ないと思いますので、エンジニアが個人でやる場合はできる限り営業をシステムに任せることになります。

例えば広告を売る場合は、純広告については広告の媒体資料を作るだけにしておき、Ad Managerなどの広告配信システムを最大限活用しましょう。

サービスを使っている人への営業活動、例えば課金プランへの誘導などについては、システムの中で機能制限をかけるタイミングを調整し、本当に必要なタイミングで課金プランの説明をすることでシステム自体に営業をしてもらいます。

最近ではクレジットカードの課金システム自体に無料体験期間を設定できたりするので、有料プランのメリットがわかるだけの期間、無料の期間を用意するのもいいでしょう。

集金

お金の支払いは可能な限り自動化できるもの、クレジットカードのシステムやiOS/Androidの課金システム、キャリアの課金システムなどを活用しましょう。自動化できることに加えて、定期課金ができるシステムを選びたいところです。

ここで問題になるのが銀行振込です。カードが使えない人など、銀行でしか入金できない人は一定数存在しています。この人たちを切り捨てないためには銀行振り込みにも対応せざるを得なくなります。

ネット経由の振り込みはシステム連携できたりしますが、そもそも銀行振り込みを選ぶ人はネットバンキングをそもそも使っていない/使えない人も多いです。このような層からも集金をする場合は、銀行振り込みに対応せざるを得ません。

しかし、ATMや窓口経由の銀行振り込みは本人の時間が取れない限り実施できないので、「申し込みをしたが振り込まない」という人がかなりの確率で発生します。そして有料プランなどの無形のものは特に「振り込みをしたら即使えるようにしてほしい」と思うものです。

そうは言ってもこちらは個人なので、毎日毎時間振り込みを監視するわけにもいきません。この時に取れそうな選択肢はいろいろあります。下記に例を挙げておきますので、銀行振り込みに対応する場合は可能な限り入金チェックをする頻度・回数を減らすようにしましょう。

・銀行振り込みに対応しない(チェック不要
・ネット経由の振り込みだけに対応する(チェック不要
・切り替えを時刻を事前にお知らせしたうえで、入金チェックを1日1回程度に抑える。
・申し込みのタイミングで即座に有料プランに切り替えてしまい、後日入金がなかった人はキャンセル扱いにする(数日に1回、入金予定日を過ぎたものをまとめてチェック)
・事前に入金してもらってから、有料プランの申し込みをしてもらい、申し込みのタイミングで即座に有料プランに切り替える(数日に1回、申し込みがあって未入金のものをチェック)

システム監視

サービス自身がきちんと働いてくれているかを監視することも重要な仕事の1つです。障害や運用の監視も可能な限りシステム化しましょう。

サービスの状態監視としてはmuninなどのエージェント型のOSSのプログラムを利用するのが手っ取り早いです。あらかじめ監視対象に閾値を設定しておくことで、例えば温度が異常に高くなったり、I/O性能が低下したり、SQLサーバーで遅延が起きていたりと様々な異常を検知してアラートを上げることができます。

異常時のアラートはSlackのAPI経由で特定のチャンネル(特定のメールアドレス)に送るようにしておくと、自分のスマホの通知で知ることができるので便利です。

またエージェント型のサービスは外部から見た時の障害は判断できないので、別の場所から定期的にサービスにアクセスして、応答がなかったりスローダウンが起きているときにアラートを上げるシステムも併せて使う必要があります。これは外部サーバーからHTMLを取得するプログラムを作ればいいので、そこまで難しくないと思います。

有料にはなりますが、NewRelicもサービス監視を自動化できるツールの一つです。私の場合はスローダウンや障害発生時の原因追及に使っていますが、外部からのサービス監視にも利用できます。

また例えばWebサーバーはNginxのプロキシサーバーの後段に並列に並べておくと、障害が発生したWebサーバーを自動的に切り離してくれるなど、障害発生時の対応についても自動化できるところがいくつかあります。単一障害点をなくして、可能な限り自動化をしたいところです。

具体的なシステム監視の手段については改めて紹介したいと思います。

システム増強

システムの増強作業はソフトウェアでできる範囲のものは自動化すべきです。ハードウェアの設置は人手をかけざるを得ないですが、理想ではハードウェアの箱を用意した後の初期設定などソフトウェアに関するセットアップは自動化することも検討しましょう。

ただし、サーバーの台数が少ないうちは、自動化せずに手動でやったほうが全体的な工数が少なくなることも多いです。またセットアップを自動化してもOSやパッケージのバージョンが上がると自動化のやり方が変わってしまう場合も多いです。

やみくもにすべての増強・設定作業を自動化するのではなく、作業の難しさと発生頻度を踏まえたうえで、頻度が高いものから自動化するように考えてみましょう。

まとめ:システムと自分の分担

可能な限り人手が必要なものを排除していくと、システムの構築や障害時のトラブル対応、最終的な問い合わせ対応あたりが漏れてきて、あとは新しい機能開発が自分の仕事になると思います。

接客・営業・集金がシステムだけで回るようになると、自分個人が日常的に必ずしなくてはいけない仕事はかなり減るはずです。うまく作ると日によっては何もしなくてもよくなる状況が出てくると思います。

システム障害などのトラブル発生時の対応についてはどうしても時間が縛られてしまいますが、それ以外のものについてはいつ仕事をしてもいいし、仕事をしなくても収益とは直接は関係ない状況になります。

日常の業務は基本的に「全部」システムにお願いして、そこから漏れたものだけを自分でやるつもりで設計しましょう。

そうは言っても、自動化の仕組みを作るのにも時間がかかります。いきなり全部をシステムで自動化することはできないので、徐々に自分の仕事をシステムに委譲していくつもりで考えてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?