Webサービスやアプリで収益をどう確保するか

少人数で作るサービスやアプリは、多くの人が動くビジネスモデルを前提にしづらいので、いわゆるシステムやアプリなどのソフトウェアのみのサービスで収益を上げることを目指すことが多いと思います。この場合の収益確保の手段について紹介をしてみます。

なお、toBのサービスについては個人的な経験・知識が不足しているので、ここでは主にtoCのサービスやアプリを作る場合の話をしたいと思います。

そもそも収益を上げる必要があるか?

いきなりそもそも論ですが、趣味でサービスを提供していたり、サービスを公開して間もなく利用者も少ない場合は、そもそも収益を上げる段階に来ていないとも言えます。

またスタートアップとして外部から資金調達をするかどうかによっても大きく変わります。IPOやM&Aを目指して資金調達をすると、急成長することが求められるため、まずは収益化よりもユーザーのニーズをきちんと拾えるようにサービス内容を調整しながら、ユーザー数を増やすことに注力することになるでしょう。

逆に資金調達をすることなく長期的にサービスを育てていく場合は、サービスを提供する対価をどこかからいただく必要があります。ここではサービスを通じて収益を上げなくてはいけなくなった場合を前提に話をしていきます。

収益化のパターン

ご自身のビジネスモデルによって色々パターンはあるとは思いますが、ここでは広告配信とユーザー課金に絞って説明していきます。

広告配信サービス

Google AdSenseのような広告配信サービスや、Amazonアソシエイトのようなアフィリエイトプログラムを利用することで、自分で営業をすることなく広告枠に広告表示ができるようになります。

Googleの広告配信サービスにはみなさんがよく知っているAdSense以外にも、Ad Manager(旧Ad Exchange/DFP)という広告配信プラットフォームがあります。

Ad ManagerはAdSenseよりもシステムとしては複雑なのですが、その分、自社のブランド取引(自分のサイトや該当するジャンルに広告を出したいという名指しの取引)や匿名取引(どこでもいいから関係するところに出したいという取引)などがあり、各々の取引に対して細かく価格設定ができるようになっています。

サービス内の各広告枠ごとに、ブランドや匿名での最低入札金額(フロア価格)を設定することで、広告枠の単価を引き上げていくこともできます。

たとえば広告枠の需要は3月や12月などに増え、その翌月に急激に落ち込みます。この需要の変化に合わせてフロア価格を適正な価格に調整することで広告枠全体の収入が上がったりします。

なお匿名取引はブランド取引に比べて10分の1とか100分の1の価格で取引されるので、できれば多くの表示回数をブランドで買ってもらえるように「ブランド取引のフロア価格を下げたい」ところですが、「フロア価格を下げると今度は安い価格でブランドの入札が増えてしまって高い値段で売れなくなる」という関係にあり、設定の見直しもかなり大変だったりします。

このフロア価格の微調整を適切に行うと収益を上げていけるのですが、個人でやる分にはブランド取引が一定の割合以上になるようにフロア価格を調整すればいいと思います。(詳しくはここでは書けませんが)

このフロア価格の設定をAIで(=自動で)最適化するというサービスも出てきていますが、経験上サービスの料金を回収できるほど収益が向上するかどうかは微妙なところです。

なお、Google以外の広告配信プラットフォームも様々なものがありますが、販売の単価を見ても在庫の量を見てもGoogleをまず抑えておく事が重要です。まずGoogleのプラットフォームがきちんと使えるようにしておきましょう。

純広告の対応について

広告システムなどを介さずに自社で広告枠を販売する形態を「純広告」と呼びます。きちんと値付けをした上で個別に広告枠を企業に売り込むことができれば、広告配信サービスよりも大きな収益を得られる事が多いです。

純広告をはじめるには、まずどんなものでもいいので媒体資料を作ってみましょう。値付けや資料の作り方については類似サービスで公開されているところもあるので、資料の構成を参考にして作っていきます。広告枠の販売は本気でやる場合は営業活動が必要になりますが、ある程度のユーザーを抱えるサービスの場合は、サービス内で広告の資料を掲載しているだけでクライアントから問い合わせて頂ける場合もあります。

また、純広告として枠を販売した場合、バナー画像を配信したりクリック率の計測をするために、広告の配信システムが必要になります。これについても前述のGoogle Ad Managerが利用できます。

Google Ad Managerには、純広告の配信機能として
・複数のバナー画像を出し分けたり、
・特定の日時で自動的に配信したり、
・設定した表示回数(imp数)をきちんと配信してくれたり、
他にも使える機能がたくさんあります。
レポーティングの機能を使うと、日毎の配信数やクリック数を集計できます。集計データは配信中の定期レポート送付や配信後のレポート作成にも使えます。ぜひ契約をしておきたいところです。

また、ある程度サービスの認知度が上がると、クライアントさんからメディアレップや広告代理店経由で契約できるようになります。広告代理店がメディア側の代理として枠をクライアントに提案してくれるようになると、自分で営業することなく枠を販売してもらえます。ただし相場のマージンが取られますので、商習慣にあわせて手数料を含む値段(グロス価格)を媒体資料には掲載するようにしましょう。

ユーザー課金

利用者への課金については、買い切り、ゲーム内アイテムのような消費型、定期課金の3つがありますが、長期的な収益確保の手段としては定期課金の仕組みを入れておきたいところです。少人数でもしっかりとしたサービスを提供して長期的に契約してもらえれば、1人あたりのLTV(Life Time Value)が上がりサービス運営に必要な収益を確保することができるようになります。

なお、他の課金としてECや金融系など社会インフラに近いところを押さえて手数料ビジネスをするというモデルもありますが、開発規模としても運営規模としても個人が作るサービスでそこを目指すのはあまり現実的とは言えません。

定期課金は安定的な収益を確保できる一方で、課金システムを作ることが大変であるというデメリットがあります。定期課金をすばやく導入する方法については別記事であらためて紹介したいと思います。

基本的な考え方としては、課金対象の機能は、新規機能リリースの時から課金対象にしておくことです。最初無料で使えるものを課金対象にすると「今まで無料で使っていたものが使えなくなる」という状況に対する感情的な反発がどうしても大きくなります。また競合サービスがある場合に競合サービスに流れていくきっかけにもなります。

どうしても最初無料のものを課金せざるを得ない場合は、例えば「コストがかかるようになって課金にしないとサービスを維持できなくなる」など明確な理由をきちんと説明した上で、十分な期間を準備して告知するようにしましょう。

課金の値付けをどうするか?

特に仕入れが発生しないネットのサービス課金の場合、「経費にこれだけかかって、何人が有料課金に入る想定で値段はいくら」というような積み上げ方式はおおよそ想定外になるのでやめたほうがいいと思います。

類似サービスがある場合はその値段を参考にしましょう。同じジャンルでなくても、SNSというくくりで同じとか、違うジャンルで同じ形態のビジネスをしているサービスの価格も参考になると思います。

ただし、Yahooなどの大きい会社の場合は運営も効率化されていて、小企業が採算を取るには値段が安すぎる可能性もあるので注意しましょう。
値段を一度決めると変えるのは大変なのですが、どうせ正解はわからないので結局は勢いでエイヤと決めるしかないです。

まとめ

いろいろ書きたかったのですが、今回は表面をざっとなぞるだけで長くなってしまったので、この辺で一旦切らせていただきます。広告システムも課金システムも深く掘り出すとそれだけでビジネスが成り立つぐらいに複雑なので、まずは概要を抑えていくことが重要だと思います。各論については改めて説明したいと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?