資金調達をするのかしないのか問題
スタートアップが行う資金調達
スタートアップといえば、資金調達を何千万円、何億円しました、というニュースがTechCrunchなどのサイトで飛び交っています。
このような資金調達がどのような背景で行われているかご存知でしょうか?
お金を集めるというと借金をするイメージを持つ方もいらっしゃると思います。資金調達のニュースの中には借金での調達、いわゆるデットファイナンスが含まれている場合もありますが、スタートアップでの資金調達は「エクイティファイナンス」という資金調達方法が一般的です。
エクイティファイナンスによる調達
エクイティファイナンスとは新株発行を伴う資金調達のことです。
いわゆる株式会社は、会社の所有権である資本金を株という形に変えて、会社に出資した人が所有者として株を分割して持つことになります。この株を新たに発行して、発行した株の値段分だけ代わりに資金を出してもらう資金調達の方法がエクイティファイナンスです。
例えばAさんが1人で500万円のお金を準備して会社を創業した場合、資本金が500万円の会社が作られます。一人で立ち上げた会社なので、500万円の価値がある100%の株をAさんが所有することになります。
このような状況で、1000万円の資金を追加で調達したい場合を考えます。会社が成長して資金調達をしたあとに5000万円の価値があると判断した場合、資金調達後の株数で20%に当たる株を新規に発行することで資金調達を行います。
この新株をBさんが購入したとすると、創業者のAさんの株数は80%に減ってしまうのですが、会社の価値は5000万円になり、Aさんの株の価値は500万円から4000万円に上がったことになります。
このようにエクイティファイナンスは新しい株を発行していくことで、資金を調達し、その結果会社の価値を上げていって、資金を発行した人たち全員が恩恵を受けるような仕組みになっています。
エクイティファイナンス後に求められること
この出資をしたBさんは、さらに会社の価値が上がることに期待して1000万円を出しているため、Aさんは会社の価値を上げ続けることを意識する必要があります。具体的には売上を上げて、会社組織を大きくしていくことが求められます。
そして会社が大きくなるとBさんは株を売って抜けて利益を確定したいと言い始めます。一般的には上場をして一般の人に株式市場を通じて株を売れるようにするか、M&Aで会社自体を売りに出し、買収する企業にまるごと株を買ってもらうことになります。
つまりエクイティファイナンスで一度調達をすると、株式市場に上場することを目指すか、他の企業に会社を買ってもらうか、どちらかを目指すことになります。
売れる相手がいつ現れるかはわからないので、会社を大きくして上場を目指すというのが一般的な目標になります。その途中でいい相手がいれば会社を売り、もっと成長できるなら上場まで走り切ることになります。
ベンチャーキャピタルからの調達
資金調達のニュースを見ていると、資金の調達元にベンチャーキャピタルが入っていることもよく目にすると思います。〇〇ベンチャーキャピタルとか、○○パートナーズなどの名前の組織です。
このベンチャーキャピタルの資金には「期限」があることが特徴です。これはベンチャーキャピタルそのものの仕組みが原因になっています。
ベンチャーキャピタルは投資テーマなどを決めて「ファンド」という商品を用意し、そのファンドに出資をする出資者を募ります。ベンチャーキャピタルで投資を担当する「キャピタリスト」は集まったファンドの資金を使って、複数の企業に分散して投資していきます。
投資の結果儲けたお金については、運用の料金を引いた上で出資者に返すことになります。またこのファンドには何年間かという期間が決まっているので、基本的にはファンドの期限までに株を現金に戻す必要があります。
つまり、ベンチャーキャピタルから資金調達をした場合は、一定の期限までに上場もしくはM&Aを行って株式を現金化できるようにすることが条件として求められます。このように一度調達をしてしまうと、短い期間で急成長することが求められます。
創業後にどこかでベンチャーキャピタルからエクイティで資金調達をしてしまうと、スタートアップとして急成長が求められてしまいます。例えば細く長く成長したいというときに、また市場の規模がそこまで大きくなくて会社の価値を大きくできる可能性が低いときはベンチャーキャピタルからエクイティによる資金調達をすべきではありません。
もちろん最初からいきなり大きなベンチャーキャピタルからの資金調達をすることは稀であり、実際は個人などのエンジェルやシード期に特化したインキュベートファンドなどからの資金調達になると思います。どのような方法であっても資金調達を行うと出資者に還元することを必ず考えなくてはいけない、ということは頭に入れておきましょう。
最後に
私たちの会社は長い間続くことを目標に設立をしたことと、市場がどこまで伸びるか確信が持てなかったこと、そして自己資金で小さく始めたこともあり資金調達をしないという選択をしました。
創業の時点でここをきちんと押さえておかないと、本来目指したくなかった方向を目指すことになる場合もありますので、慎重に判断をしたほうがいいと思います。
もちろん資金調達をしたあとであっても、上場以外の方法で株主に還元していく方法もありますし、ベンチャーキャピタル以外からの出資であれば上場を求められない可能性もあります。このあたりは専門家や他の起業をした先輩方に相談をしながら進めていくべきだと思います。
ここまで色々書きましたが、私は資金調達をしない選択をしたので具体的な資金調達の手法などについては専門的な話はできません。それでもこれらの話は一つの情報源として参考にはなるのではないでしょうか。
資金調達について更に踏み込んだ情報が必要な方は、まずは基礎的な話として起業のファイナンスの本を読んでおくことをおすすめします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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