レインコード感想-not for me を認められなくて-

レインコード感想

ダンガンロンパの作者として知られる小高和剛が満を持して世に送り出したミステリアドベンチャーゲーム。率直な感想は、どこかで見たゲームのパッチワークでしかなく、期待を上回るほどではなかった。良作どまりというところだ。82点。

人によってゲームに求めるものは違うことと思う。私の求めるものは単純明快だ。そのゲーム以前にはなかったような圧倒的に鮮やかなプレイ体験を求めている。

ここに記載する感想は、今作に期待しすぎたプレイヤーが勝手に幻想を抱いて、勝手に裏切られたように錯覚して、不貞腐れているというだけなので、まじめに取り合う必要はない。これを読んで気分がよくなるのは偏屈な同士だけであって、純粋な作品のファンには毒でしかない。

キャラの魅力とか、ビジュアルのセンスとか、手軽に楽しめる世界観のおさまりの良さだとか、高評価できるところは多分にある。一方で、ロードの長さであるとかミステリとゲームシステムの食い合わせの悪さだとかは確かにあるのかもしれない。しかしそれらについては一切触れる気はない。純粋に斬新なミステリ体験を期待した人間としての感想・批判をドライに書く。
死神ちゃんのあほ可愛さとかが狂おしいほど愛おしいが、それについては他のファンの感想と同意見なのでわざわざ語る気はない。

一つひとつの章の雑感を振り返っていきたいと思う。

0章、ダンガンロンパではできない仕掛けに大いに魅せられた。マップを歩き回れることと、この特殊な殺人事件の舞台との相性が大変良かったように思う。

1章、ミステリは古典的なものではあるものの、登場した超探偵能力は目新しく、大いにワクワクした。この章でこのゲームの方向性がはっきりしたように思う。ミステリとして、難しすぎる必要はなく、そこにアプローチする解決策が斬新であれば、このゲームはより魅力的になるのだと声高に主張していた。この後の章ではプレイヤーの予想にもつかない能力がどんどん出てくるのだろうと大いに期待させられた。

2章、古典的なミステリが続く。超探偵能力もアイデアは面白いものの、現実的なものでしかない。

3章、不可能犯罪としては面白いがトリックは単純。超探偵能力は推理には役立たないものであり、ただのQTE要素。ここでやや肩透かしを食らった。

4章、こういうものが見たかったと手を叩いて喜んだ。超探偵能力を複数の側面でシナリオに取り入れており、大変面白い。特殊ミステリの模範解答だと思う。ミステリのキモは解鍵のラインアップでわかるしミステリとして理不尽なものではなく、そこまで難しくない。だが、これでよいのだと思う。高難易度の、作者からの挑戦状を楽しむというよりは、ミステリで遊ぶという態度であれば、これこそが正解だと思う。登場人物全員の能力紹介が終わったところか。次が本題だ。さて何が来る。大いに次章に期待が集まる。

5章、これで終わるのか?と愕然とした。やるべきことはまだあっただろうと唸る。捜査状況に合わせてプレイヤー自身に味方の能力を切り替えたり、複数の能力から得られる情報を有機的に融合させて新たな解鍵を生み出したりと、ゲームのクオリティをもう一段回上質なものへと変貌させる奇抜なアイデアが必要だろうに。

どこかで見たような、ぽっと出の設定を回収したそばからすぐ反芻するだけの単純作業。前々から思っていたが、最終章の構成がもったいなさすぎる作者である。このネタをやるにしても、前々の章から伏線として分散させたりといくらでもやりようはあったろうに、なぜ各章で未解決の謎という形で分散させてこなかった?

最終章を受けて私の評価は、それなりのところに着地したよくある良作というものであり、10年後もまたやりたくなるようなゲームにはならなかった。


つまるところ、メインのターゲット層ではないということ

ぎゃーこら言っても、ただ単純に私に合わなかったというだけである。このゲームを楽しめた人に対して、ケチをつけるつもりもなければ、それを羨むこともない。こんな私であるが、配信が予定されているDLCを楽しみに待っているし、難易度を変えたらどんなプレイ感になるだろうとか、真相を知ったうえで改めてプレイしてミステリとして穴がないか調べたろうとか、まだしゃぶりつくす予定である。ただそこに、熱狂や偏執はない。

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