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よよこ、ライティングが世界を変える

新しい会社には随分と慣れ、クリエイティブ集団の一員としてそれなりに活躍ができていた。
頭では次を考え、目では目の前の状況を読み、からだはそれに従って動く。
判断力と瞬発力がものをいう仕事だった。

しかし、次第によよこはそのスピードに限界を感じるようになった。
時に地下1階から猛ダッシュで4階のチャペルまで階段を駆け上がらなければならなかったり、
教会でのお式から移動しての披露宴、さらには二次会まで、長い時の撮影は12時間に及んだ。
そもそも運動能力の乏しい40代半ばを迎えたよよこには、かなり堪える仕事だった。

「そろそろブライダルも卒業かな」

10年近くにわたり、私を育ててくれたブライダルの撮影。
それがなければ今の私はない。
しかし、からだがものをいう仕事。
44歳のとき、ついに憧れて加えていただいたブライダルの会社を去り
ブライダル撮影からの卒業を決めた。

同じ頃、ありがたいことにプロフィールの撮影の依頼は日増しに増えていった。
課題はライティングだった。

クリップオンのストロボでももちろん撮影はできる。
ただし当時のクリップオンだけでは光量不足で、感度をあげたり絞りを開けたり、
カメラ側での操作に依存し、クリップオンで自在に光を作ることはできなかった。

「これはスタジオライティングを揃えねばならない」

しかしいいものは高い
カメラだって壊れたり更新したりでお金がかかるし
パソコンなどの周辺機器にも費用がかかる
ましてやライティングなんて、、、

そんなころ、仲良くしていただいていたヘアメイクさんから
「ちょっと背伸びしても必要な物を用意すれば、それを使った仕事が増えていきますよ」
ということばをもらった。
よよこの心にグサリと刺さった。

「そうだ、持たなければ始まらない」
迷いはなくなった。

ライティング機材の中でも比較的お手頃なモノブロックストロボを購入した。
合わせてスタンドも数本購入。
さあ、購入したからには使いこなさなければ宝の持ち腐れである。
しかし、自宅では撮影場所との条件が違いすぎてなかなか練習がうまくいかない。

「あ〜、自分のスタジオがあればなあ」

そうしたらいつだって練習ができる。
研究ができる。
いつしか『自分のスタジオを持つ』ことがよよこの夢になっていった。

そんなころ、別の創作活動をしていた友人も自分のアトリエを持ちたいと話していて、
二人は軽い気持ちで
「じゃあ、一緒に持っちゃう?」
と、場所探しを始めた。

本当に軽いノリだった。

不動産に勤める友人に相談すると、いろいろな物件を探してくれた。
物事が進むときは大抵の場合、準備より先にコトが進んでいく。
このときも軽いノリが瞬く間に現実を動かし、遠い未来の夢と思っていたマイスタジオが
ずっと近くに感じられるようになった。

当初、二人で借りようと話していた友人と借りる時期にズレを感じるようになり、
いつしか私だけのスタジオを探すようになった。

軽いノリで探し始めてから半年、最高の物件に出逢ってしまった。

自宅からも徒歩圏内であり、近くに公園もある。
マンションの1階という立地に加え綺麗なトイレもあり、メイクや着替えのためのスペースまで確保できる。
おまけに新しめのエアコンまでついていた。

「ここしかない」

よよこはマイスタジオを持つことに決めた。


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