よよこ、プロへの一歩
デビューとは本当の本番である。
よよこにとってはデビュー戦でも、
目の前のお二人にとってはプロのカメラマンである。
「自分がやってきたことをやればいい」
よよこはそう自分を鼓舞し、プロとしての第一歩を踏み出した。
正直、頭の中は真っ白。ただただ必死だった。
きっとよよこの緊張はお二人にも届いてしまったと認めざるをえない。
とにかくなんとか切り抜けた。
そんな初日だった。
最初のうちは同じ会場、慣れた会場のみで撮影した。
そうして少しずつ自分の流れを作っていき、
徐々に自信もついてきた。
フィルムカメラで撮影するということは
デジタルとはかなり違う。
一球入魂。試し打ちは存在しない。
ワンシーンは1発で仕留める。
もちろん数カット撮るのだけれど、フィルムは36枚なので計算して撮らなければ肝心のシーンでフィルムを交換しなければならなくなる。
キリスト式では、ベールアップ・キス・指輪交換が立て続けに行われるケースも多い。
ベールアップの前に10枚しかフィルムが残っていなければ、撮る枚数を制限するか、フィルムを先に交換するか判断しなければならない。
神父(牧師)が説教をしているとき、音を立ててはいけない会場もある。
そんなときにフィルムの巻き取り音は御法度。
さまざまな制約の中で撮影は進んでいく。
慣れてくると次第にいろいろな会場にアサインされるようになった。
最初にアサインしてもらっていた会場がいかに撮りやすい会場であったかは
後に知ることとなる。
天井が低い。
天井が高い。
壁が木。
全体が黒。
狭い。
広い。
ルールが違う。
時間がタイト。
会場によって心構えも撮り方もまったく違った。
「この撮り方ならうまくいく」
という方程式など存在しない。
失敗と反省を繰り返し
「このくらいの天井ならこれ」
「この壁ならこうする」
「この会場はこのテンポ」
と、よよこもプロとしての力が徐々に備わっていった。
そんなころ、世の中にはデジタルの波が押し寄せていた。
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『よよこ、プロカメラマンになる』
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