数学I・A/II・B最高の演習160

この問題集の特徴として
①type100と連携しているため、基礎と発展問題の関連が見えやすい
②一つの問題の中で複数の典型解法を使って解く実践できる
→実践的な発展問題へのアプローチが身につく
→難関国公立大学以上の2次試験、最難関私大を一般入試で受ける人向け

本書も東進ハイスクール講師の松田聡平先生が書いてらっしゃる問題集で、Type100を完成させて身につけた典型解法を実際の入試問題で応用させて解答を作成できるようになることを目的とした、高校3年生前期頃に取り組むべき問題集です。
実際の入試レベルの問題も多くあり、問題に対してどの解法を選べば良いのかを見極める力を伸ばせる一冊だと思います。(②)
最高の演習160レベルの問題では、入試を想定して、制限時間を設けて小さめの白紙の紙(ルーズリーフなど線が入っていないもの)に答案を作成するという学習方法で緊張感を持って問題を解くことでただ問題集を解くより何倍も解答作成能力を身につけることができるというアドバイスを松田先生からいただいたのですが、最高の演習160は問題のみの別冊もついているので、本書もそのように活用するとより効率的に数学力が身につく問題ばかりだと思います。
冒頭にも書きましたが本書の特徴として、Type100に解法の対応ページが記載されているため、基礎ができていないと感じた時にType100の対応する問題に戻って復習することで、発展問題の基礎には典型解法があるということをより意識することができて、Type100を完成させてから本書を解くことでさらに数学が頭の中で体系化されていく感覚がありました。(①)

<相加相乗平均の大小関係>

文系数学において分数関数を見たらたいてい相加相乗で解決できるため、まずは相加相乗を疑うという方針を立てることで、一文字消去して早めに1パラに持ち込んで、かけて定数になる分数関数を意識的に作るという解答の流れが見えてくると思います。
相加相乗平均の大小関係は、図形量の最大最小を求める問題とからめて出題されることが多いため、積極的に相加相乗を意識しておくと良いと思います。
相加相乗平均の大小関係を利用して最小値を求める問題では、必ず等号成立条件を確認することが必要です。また、本問でははじめにyについてすり替えを行っているので、この部分についても等号成立を確認する必要があります。
別解IIにもある通り、2x+yをターゲットに見立ててkとおく線形計画法と同じように考えることもできますが、この場合与えられた条件で領域を図示することができないことから線形計画法は使用不可であると判断した上で、式上で絞り込んでいくという思考の順番で方針が立てると良いと思います。
この解法の後半は、判別式Dと軸と端点の3ポイントを確認する解の配置問題と同じ考え方を用いて、実数x,yが存在するためのkの条件を調べることで求められます。

<定数分離>

基本対称式と解と係数の関係は密接である、ということは意識しておくと良いと思います。
(1)では三次方程式のα,β,γの3解が出てきていることから、解と係数の関係を準備することが考えられますが、(2)では逆に、解と係数の関係の形が与えられていることから式の形を逆算することができ、そこからVの最大値を考えるために定数分離をして求めています。本問では、Vに変数が絡んでいないため定数分離が可能ですが、定数分離が不可能な場合は極値積の正負によって調べることができます。
また値を評価する問題でも三次関数のグラフを用いることが有効です。
本問ははじめからα,β,γをおくように誘導されていますが、3つの解の具体値を求められる場合でも、自らα,β,γとおいて具体値を求めずに計算を進めることで途中式が頓挫にならずにスムーズに進められることがあります。このようにあえて求めないで全体像を見やすくしたまま計算するという考え方は他の分野でも活かせると思います。

<総括>
本書もType100と同様、問題を解く上でのポイントが書いてあるため、自力で解けない時に発想の部分を得て再度解き直しすることができます。前回Type100は解答が簡潔だということを書きましたが、私の実感として、高校1、2年生がType100を自力で解き進める方が高校3年生が最高の演習160を解くより難しい気がしていて、しっかりとType100を解いて典型解法を身につけていれば、自力で最高の演習160を解き進めることは難しくないと思います。写真を見ていただいたらわかるように、解答にポイントが書き込まれているため、何を目的に計算に進めているのかを認識することができると思います。別解も豊富に考えられる良問が揃っているので、自力で解けた問題も別解を通して新たな発見が得られると思います。

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