トップペアはトリプルバレルを打てるのか
はじめに
誰しもが初心者のころ、「そのハンドは強いからベットしたほうがいいよ」あるいは「そのハンドはベットしてもバリューが取れないから、ベットしてはだめだよ」と言われたことがあるのではないでしょうか。
その時は「なるほど」と思うかもしれません。しかし実際に各ハンドがどのくらいの強さなのか、明確に説明することは難しくないでしょうか。例えばトップペアは「トリプルバレルを打てるほど強いハンド」なのでしょうか?あるいは「トリプルバレルを打ってもバリューが取れないハンド」なのでしょうか?
今回の記事では、感覚寄りの説明が行わがちな「各ハンドの強さ」について、数字を使って説明してみようと思います。
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問
まず、以下のような問について考えてみてください。
要するにある程度強いハンドを持っている場合に、ダブルバレルを打つところまでは確定として、どういうハンドであればRiverのトリプルバレルを打てるか考えてみようという問になります。
もし初心者に上記のような質問をされた場合、どう答えますか?少し考えてみてください。
私なりの回答
もちろん、この問に対して一概に「こういうハンドはトリプルバレルを打つべき」と言い切ることはできません。ボードによっても求められるハンドの強さは異なりますし、ペアのキッカー次第でも答えは変わってくるでしょう。
ただ、もし私がここで簡潔に説明するのであれば、相手のプリフロップ参加レンジを想定し、その中で上位6.25%のハンドよりも強いハンドはトリプルバレルを打つべき。と答えます。
ここで、6.25%という数値は以下の手順で出てきた数値になります。
・前章の前提から相手はFlop, Turn, Riverでベットに対してそれぞれ50%のハンドを捨てる。
・つまりRiverでコールするハンドは上位12.5%(=50%*50%*50%)のハンド。
・BUがその12.5%に対してバリューベットできるということは、その12.5%にコールされた場合に、コールレンジの半分以上に勝っている必要がある。(半分以上勝っていないなら、チェックのほうが良い)
・すなわち相手の上位6.25%よりも強いハンドが必要になる
以下この内容について、具体例を交えつつ見ていきたいと思います。
具体例①
例えば、以下のボードでトリプルバレルを打てるハンドの強さについて考えてみます。
ここで、各ストリート毎のBBのハンドの強さとその割合を考えてみます。
まずフロップについてですが、よく「フロップでペアになる可能性は約3割(7割くらいはノーペアになる)」と聞いたことはないでしょうか。
これはつまり、フロップ時点ではトップペアが約10%、セカンドペアが約10%、サードペアが約10%存在するということです。
※正確に計算すると、ポケットペアでないハンドについて、フロップでペアがヒットする可能性は 1 - 44/50*43/49*42/48 ≒32.4%です。
そしてBBがBUの各ストリートのベットに対して毎回レンジの半分を下りるということは、BBが強いハンドから順にコールすると考えると、BBのレンジのうちのペアの割合は、以下のように高まっていくのです。
※以下、トップペア:TP、セカンドペア:2P、サードペア:3Pと表記
※実際にはツーペア、セット等も存在しますが、ここでは無視しています。
【Flop】TP10%, 2P10%, 3P10%
↓Flopベットにコール
【Turn】TP20%, 2P20%, 3P20%
↓Turnベットにコール
【River】TP40%, 2P40%, 3P20%(3Pの半分はターンで降りる)
↓Riverベットにコール
TP80%, 2P20%
すなわち、BBがRiverでコールしてくれるハンドはほとんどがトップペアになります。
これは逆に言うと、BUがトリプルバレルを打てるハンドは、トップペアの中でも強いハンドが必要ということになります。(トップペアの弱いキッカーはトリプルバレルを打てない)
そして、これの本質は、「相手のプリフロップ参加レンジを想定し、その中で上位6.25%のハンドよりも強いハンド」に、トップペアの弱いキッカーがあてはまらないためなのです。
話に戻って、最初のボード(Qs8h7d3c2s)で考えます。
BBのトップペアの構成を考えると、KQo~QTo,QJs~Q2sですから、キッカーの真ん中はQJくらいでしょう。つまりこのボードではBUはQJ以上のハンドであればトリプルバレルを打つべき、ということになります。
具体例②
先ほどのボードはストレートが存在しない、非常にドライなボードでした。では次は1枚でストレートが完成するようなボードでトリプルバレルを打てるハンドの強さについて考えてみましょう。
先ほどはBBが持っているペアの確率について考えていましたが、ここでは相手がK(=ナッツを完成させるカード)を持っている確率について考えてみましょう。ここで一般的な話をすると、プリフロップ参加者が特定の数字のカードを持っている可能性は約15%であるので、その数値をベースに考えていきます。
※簡単な計算方法:相手が仮に全ハンドで参加するとすれば、スタートハンドの2枚のうち1枚が特定の数字である確率は、1/13。なので2枚のうちいずれかが特定の数値である確率は(1/13 * 2) - (1/13*1/13) ≒14.8%
※ボード用のカードが必要ない分、特定の数字がペアになる可能性(約10%)よりも高い数字になります。
ここでBBがフロップのベットについて、すべてのKをコールするわけではないことに注意しつつ、各ストリート毎のBBのK割合を考えてみます。フロップの75%ベットについては、BBはKを持っているハンドのうち2/3ほどをコールすると考えると、BBのハンド構成は以下のようになります。
【Flop】TP10%, 2P10%, 3P10%, (うちKを持っているハンド:15%)
↓Flopベットにコール
【Turn】ストレート20%
↓Turnベットにコール
【River】ストレート40%
↓Riverベットにコール
ストレート80%, 他20%
このボードでは、BUがトリプルバレルを打ってBBにコールされた場合、BBからは半分以上ストレートが出てくるのです。つまり、バリューベットできるハンドはストレートのみなのです。たとえAAのセットでも、リバーはチェックになります。
これがポーカーの面白いところで、単純に「2ペア以上はトリプルバレルを打つ」とか、「セットはオールインを目指す」とか、ボードを無視してこういう役のハンドはベット/チェックと言いきることはできないのです。
具体例③
最後の例として、以下のようなペアボードについて考えてみます。
ここで、一般的にはペアボードにおいて相手がトリップスを持っている可能性は約8%です。
※計算方法: (48*2-1)/(50*49/2) = 約7.76%
しかし今回考えている前提では、BBのレンジにはオフスートのQが比較的多いため、BBがこの状況でQのトリップスを持っている確率は約10%です。今回はこの10%という数値は前提として、BBのレンジのうちのトリップス割合の推移を考えると、以下のようになります。
【Flop】トリップス以上10%
↓Flopベットにコール
【Turn】トリップス以上20%
↓Turnベットにコール
【River】トリップス以上40%
↓Riverベットにコール
トリップス以上80%, 他20%
具体例①に似ていますが、BBがRiverでコールしてくれるハンドはほとんどがトリップスになります。つまり、弱いトリップスについてはトリプルバレルを打てないという結論になります。
ちなみにボードが7s7h5d3c2sの場合はどうでしょうか?
QsQh5d3c2sとは違い、BB(BU)のプリフロップ参加レンジには「Q」は多いものの「7」は少ないため、この場合は弱いトリップスであってもトリプルバレルを打つことができます。
単純な役の強さではなく、「このボードでは上位X%のハンドは何になるだろう」という視点を持つことが重要なのです。
最後に
「こういう役ができたらこうプレイするべき」といった話をたまに見かけますが、ポーカーの"ハンドの強さ"は相対的なものなので、"役の強さ"とは切り離して考えるべきです。一方で上位●%のハンドという概念を持てば、"ハンドの強さ"についてかなり精度よく推定することができます。アクションを考える際はこちらをベースに考えるほうが好ましいです。
今回トップペアを持っている割合が約10%、トリップスを持っている割合が約8%と書きましたが、実際のレンジにはAが多いため、ボードにAが落ちた場合のトップペア率が30%になるような場面も良くあります。またベットサイズを小さく/大きくすれば相手のフォールド率も変わるため、現実ではそういった調整についても考える必要があります。
こうした補正を入れつつ、相手と自分のレンジはどういうハンドで構成されているのか、レンジのうちの半分の強さのハンドはどこなのか、そしてバリューベットが打てる範囲はどこなのか、見直してみると面白いと思います。
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