アンノウンに対して

アンノウンに対してバランスをとる事の無意味さ

はじめに

 私はGTO学習派ですが、ほとんどのプレイではバランスをとる必要はないよという記事を書きます。矛盾しているようですが、私の中ではGTO戦略を学ぶ重要性は変わっていません。GTOが好きな方にとっても、そうでない方にとっても参考になれば幸いです。

 また、この記事ではアンノウンという言葉を使用しますが、この言葉はハンドが十分溜まっておらず、特別な情報がないプレイヤーのことを指します。



よくある混合戦略についての話

 最近はソルバーによって計算された戦略チャートが簡単に手に入るようになっています。例えばこんなものです。

100bb持ち、SB(OOP)vsBB(IP)時のSBのプレイレンジ(レーキ、ante無し) 
(出典:PioCloud:https://piocloud.weebly.com/)

キャプチャ2

 詳しいレンジの見方はここでは省略しますが、この計算結果ではSBは紫色のレンジで3bbオープンし、緑のレンジでリンプすることが推奨されています。(複数のアクションの選択肢がある場合、私はこれを混合戦略と呼びます)

 ここで、よく話題に上がるのが各ハンドにおける3bbオープンとリンプの割合を正確に守るべきか?という話です。例えばこの表では22は37%程度は3bbオープンし、残りはリンプというプレイが推奨されています。

 これを見て、勝つためには22sは37%3bbオープン、63%リンプするのがベストの戦略なのだと考える人を良く見かけます。実践中に乱数発生器(Random Number Generator)を使用し、得た数字からアクションを決めている人も見かけます。

 この方法はハンドが溜まっている強いレギュラーに対しては間違いではないのですが、あなたが例えば6maxZoomにおいてハンド数が500以上溜まっていない相手に対してこのようなバランスをとったプレイをしようとしている場合、改めたほうが良いです。今回の例ではプリフロップを用いましたが、フロップでも、ターンでも、リバーのブラフキャッチに関しても同じことが言えます。

 本記事ではその理由を以下の3点に分けて説明します。なお、②に関しては量が多いので別の記事で詳細なことを書きます。

①バランスを取っていないことはバレない
②(アクションについて)バランスよりも優先して考えることがある
③バランスを意識する手間をかけるなら面数を増やしたほうがいい



①バランスを取っていないことはバレない

 昔のブログでHUDの信頼性について述べました。

 ここからわかるように、6maxZoomにおいて500hand程度では、相当変なプレイをしているのでなければVPIP,PFR程度しか相手のプレイ傾向はつかめないのです。もちろん情報は無いよりはあったほうが良いですし、極端な傾向のプレイヤーも存在するのでHUD自体は重要です。しかし相手が、バランスを考えていないとはいえ、比較的まともなプレイを行う我々のハンドヒストリーからリークを見つけるのに、Zoomであれば基本的には1000ハンド単位のハンドヒストリーが必要です。

 しかも我々には、アンノウンに対して均衡から外れたプレイを続けるが、ある程度ハンドのたまっているプレイヤーに対してはバランスのとれたレンジ、あるいはvsアンノウンとは逆のレンジを使って搾取するという選択肢があります。
(例えば、アンノウンに対して超固い4betしかしない場合、レギュラーには4betが固い人として認識されます。それを逆手にとってレギュラーには超広い範囲で4betを行うことでレギュラーのエクスプロイトにカウンターすることができます。)

 このような状況でアンノウンに対してバランスを考慮してレンジの構成カードを意識したり、チャート通りの頻度を再現することはほぼ無意味です(アンノウンもレギュラーもカウンター不可能なので)。それよりは後述するようにバランス以外のことを考えたり、他のことに労力を割くのが得策です。



②(アクションについて)バランスよりも優先して考えることがある

 GTOが混合戦略を取っている場面で考えることは4つあります。1つは当たり前ですが、相手を搾取できる方の戦略を選ぶということです。

 例えば相手がフロップのCbetに対して極端に降りすぎるということが分かっていた場合、ブラフハンドは全てフロップでCbetします。バランスなどは関係ありません。ここでバランスを考えて一部をチェックに回すのは、長期に渡るHU等で相手に搾取を行っていることがバレたくない場合のみでしょう。

 似たようなものとしてリバーの相手のベットに対してブラフキャッチするかどうかというシチュエーションについて述べると、この場面ではある程度の強さをもつハンドであれば、GTO上はフォールドでもコールでもどちらでもいいことが非常に多いです。通常、アンノウンよりも我々の方がポーカーについてしっかりと考えているわけですから、ここで思考停止して乱数によってキャッチするかどうかを決めるのではなく、少しでも自分の頭で考えたほうが(相当変な思考をしていない限りは)期待値は高まります。

 このように思考停止でバランスをとるということは、搾取できるポイントを自ら捨てることになり非常に勿体ないです。コーチングの際になんとなくバランスを取らないといけないと思ったからこのアクションを選んだ、というような言葉をよく聞きました。本当にその状況でバランスを取るべきなのか、他に優先すべきことはないのか、しっかりと考えることが大切です。

 バランスよりも優先して考える、残りの3つのことについては長くなるので別記事で書こうと思います。



③バランスを意識する手間をかけるなら面数を増やしたほうがいい

 最後の理由です。これは文章そのままの意味であり、特に追記することもありませんが、真理だと思います。ポーカーにおいて色々な価値観があるとは思いますが、最も普遍的な価値観は時給を最大化するということでしょう。

 時給を上げ、相対的な分散を下げられるという面で、時間当たりのプレイハンド数を増やすことは重要な選択肢です。混合戦略の度に乱数発生器やチャートの頻度を一々確認する時間があるならば、その判断時間を捨ててもう一面増やしたほうが圧倒的に時給は上がります。もちろん、面数を増やさずに手間を思考時間に回すことで成績の向上を狙ってもいいと思います。



注意点

・HeadsUpに関してはハンドの傾向がわかりやすいため、100ハンド程度でもある程度はバランスをとる必要があります。

・アンノウンに対してバランスをとる必要はありませんが、バランスをとったプレイをいつでも行える必要はあります。基本がわかった上でバランスを崩さないと、今自分がカウンターされているかどうか分からず、戦略を適切に変更できなくなります。

・アンノウンに対しては搾取レンジを使い続けているということは、あまり大っぴらに言わないほうがいいです。Twitter等で発信し、向こうが一方的にこちらの搾取傾向を知っている場合、ライブやホームゲーム等でこちらを簡単にカウンターできてしまいます。なので、相手のリークをそのままにするためにも自分はバランスが取れた普通のプレイヤーだということを発信しておきましょう(笑)



最後に

 昔行っていたコーチングではこのバランスという点についての質問がまず初めに来ることが多かったです。バランスをとる意味についてもあやふやなまま、とりあえず計算されたGTO戦略を再現することは期待値の損失です。

 Twitterを見ていると、たまにGTOの完全再現というところを最終的な目的地にしている方が見受けられますが、GTOではっきりしないところについては乱数に頼らず自分で搾取の方法を考えることが必要だと思います。まあ、LibratusレベルでGTOを再現できれば、単純な完全再現でもボロ勝ちできるのかもしれませんが...

もし記事がいいなと思ったら是非サポートをお願いします! 小額でも執筆活動の励みになります!