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精密化された数列の極限の定義について(第2回授業後記)
先日の授業後,数列の極限について質問があったので回答もかねて記事にまとめることにします.
授業で学修した数列の極限の定義は次の通り.
定義.$${\{a_n\}}$$は実数列とし$${\alpha}$$は実数の定数とする.このとき$${\{a_n\}}$$が$${\alpha}$$に収束する,または極限値$${\alpha}$$をもつとは次を満たすときをいう.
$${(\ast)}$$任意の$${\varepsilon>0}$$に対し,ある$${n_0\in \mathbb{N}}$$が存在して
$${n\ge n_0 ~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$
が成り立つようにできる.
この定義について授業後の質問で特に多かったのは次のようなもの.(以下では数列$${\{a_n\}}$$は$${(\ast)}$$を満たすとします.)
(1) $${\varepsilon>0}$$が小さくなると$${n_0}$$を大きくする必要があることがいまいち理解できない.
(2) $${n\to\infty}$$とするとき$${a_n\to \alpha}$$となるイメージがわかない.
上の定義では大切ですが盲点になりがちなところがいくつかあります.
まず
(i) 最初の$${\varepsilon>0}$$はあらゆる正の数ですが,ここでは1つだけ固定されているにすぎないところ.
次に
(ii) 後半の$${n_0\in \mathbb{N}}$$がこの$${\varepsilon>0}$$に応じて
$${n\ge n_0~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$
が成り立つように,必ず定めることが可能であるというところ.
加えて
(iii) このような$${n_0\in \mathbb{N}}$$がいったん定められれば,$${N>n_0}$$であるような任意の$${N\in \mathbb{N}}$$が$${n_0}$$と同様,
$${n\ge N~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$
満たすというところ.
以上を踏まえ,上記の(1)と (2)について考えてみましょう.
(くどいようですが以下では数列$${\{a_n\}}$$は$${(\ast)}$$を満たすとします.)
(1)について
$${\varepsilon}$$に換えて$${\frac{\varepsilon}{2}(<\varepsilon)}$$を考えます.このとき$${(\ast)}$$に含まれる条件は次のように変わります.
$${n\ge n_0 ~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\frac{\varepsilon}{2}}$$・・・①
ところが,①の後半部分
$${~~~|a_n-\alpha|<\frac{\varepsilon}{2}}$$ $${\Leftrightarrow}$$ $${\alpha-\frac{\varepsilon}{2}<}$$ $${a_n}$$ $${<\alpha+\frac{\varepsilon}{2}}$$
が先の
$${|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$ $${\Leftrightarrow}$$ $${\alpha-\varepsilon <}$$ $${a_n}$$ $${<\alpha+\varepsilon}$$
よりも条件が厳しくなっている($${a_n}$$が含まれる範囲(区間)が狭くなっている)ので$${n_0}$$のままでは①が成り立たない可能性があります.
($${n\ge n_0 }$$であるにもかかわらず,$${|a_n-\alpha|<\frac{\varepsilon}{2}}$$を満たさない$${a_n}$$が存在する可能性がある)
しかしながら,このような$${\frac{\varepsilon}{2}}$$に対しても,上で触れた(ii)から$${n_0}$$よりも十分大きな※¹$${n_1\in\mathbb{N}}$$をとれば
$${n\ge n_1~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\frac{\varepsilon}{2}}$$・・・②
が成り立つようにできます.
(※¹ $${n_0}$$より小さいものを考えるのは無意味であることに注意.余計に$${(\ast)}$$が成り立ちづらくなります.)
このことが分かってしまえば,結局上の極限の定義において$${\varepsilon}$$が小さくなると①のように条件がより厳しくなるので$${n_0}$$をより大きくとる必要があることが理解できると思います.
ところで,この関係から明らかに
$${n\ge n_1~~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$・・・③
であることも分かります.従って$${n_0}$$ではなく最初から$${n_1}$$を考えていれば②と③がとも成り立つことになります.
このことは要するに
「$${\varepsilon>0}$$がどんなに小さくても$${n_0}$$を十分大きくとっておけば$${(\ast)}$$はより成り立ちやすくなる」
ということを意味します.
(2)について
これまで議論してきたことから上の定義は次のようにも捉えられることが分かります.
『どんな小さな$${\varepsilon>0}$$に対しても,$${n_0\in\mathbb{N}}$$を十分大きくとれば
$${n\ge n_0~\Rightarrow~~|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$
が成り立つようにできる.』
従って,$${n}$$を極限まで大きくすれば$${a_n}$$と$${\alpha}$$との差はすでに十分小さく,無くなってしまう(いくらでも限りなく小さくなる)と見なしてよいことになります.
結局
『$${n}$$を限りなく大きくすると,$${a_n}$$は限りなく$${\alpha}$$に近づく』
ということになります.
この記事は以上です.
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