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補充問題の解答について(第5回授業後記)

授業の最後に議論した補充問題は次のようなものでした.

補充問題.立方体Cの体積の増減量が$${a\%}$$以下($${a>0,\,a\approx 0}$$)であるとき,Cの1辺の長さの増減量はどれだけか.微分の考えを用いてそのおよその値を求めよ.

この問題の解答は授業で示した通りですが(なのでここでの解答の詳細は省略します)次のように考える人もいるかもしれません.

(答案例)$${x\,(>0)}$$をCの1辺の長さとし,$${f(x)}$$をCの体積とすると,
    $${f(x)=x^3}$$
である.ここで$${\it\Delta x}$$と$${\it\Delta f(x)}$$をそれぞれ,
  $${\it\Delta x}$$:$${x}$$の増減量,
  $${\it\Delta f(x)}$$:対応する$${f(x)}$$の増減量
とすると,$${{\it\Delta} x \approx 0}$$のとき・・・・・$${(\ast)}$$
次が成り立つ.
  $${{\it\Delta} f(x) \approx f'(x){\it\Delta} x=3x^2{\it\Delta x}}$$
よって,次が得られる.
  $${\left |\frac{\it\Delta f(x)}{f(x)} \right |\approx \left |\frac{3x^2}{x^3}\it\Delta x\right |=3\left |\frac{\it\Delta x}{x}\right |}$$
いっぽう,題意より
  $${\left |\frac{\it\Delta f(x)}{f(x)} \right |\le a\,\left (\%\right )}$$
である.したがって
  $${\left |\frac{{\it\Delta x}}{x}\right |\approx \frac{1}{3}\left |\frac{{\it\Delta} f(x)}{f(x)} \right |\le \frac{1}{3}a}$$
となる.(以下略.)

 最後の関係から分かる通り,授業で示した解答と同じ結果が得られます.
 しかしながら,上の説明には問題があります.

 どこか分かるでしょうか?

 次に進む前に少し考えてみてください.

 上の答案の問題点は$${(\ast)}$$において$${{\it\Delta}x\approx 0}$$となる理由が明記されていないところです.実際,本設定では$${x}$$はCの1辺の長さなので,これは
    「1辺の長さの増減量がほぼ$${0}$$であること」
を意味します.
 ところがこれは,本問の仮定から直接得られない関係(または,例えば授業で示したような議論や以下示すように(逆)関数の連続性を踏まえた考察の結果として分かること)ですので,予め微分の性質を利用することとは別にきちんと調べておく必要があります.これを怠ってしまっている上の答案は本末転倒と言わざるを得ません.
 上の答案のように考えてしまった人は,以後気をつけるようにしましょう.
 なお,$${{\it\Delta}x\approx 0}$$となることは,次のように(逆)関数の連続性から示すことができます.

 $${f(x)=x^3}$$より$${x=f^{-1}\left (x^3\right )=\sqrt[3]{y}\,\left (y=f(x)=x^3\right )}$$である.ここで,$${y}$$が$${\it\Delta y}$$増減するとき,$${x}$$が$${{\it \Delta}x}$$増減するとすると,$${\sqrt[3]{x}}$$の連続性から$${{\it\Delta}y\to 0}$$のとき
  $${{\it\Delta}x=\sqrt[3]{y+{\it\Delta y}}-\sqrt[3]{y}\to 0}$$
となる.すなわち
  $${{\it\Delta} y\approx 0}$$のとき$${{\it\Delta} x\approx 0}$$
である.

 この記事は以上となります.
 




  


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