√-1の5進展開を途中まで計算してみた
$${i=\sqrt{-1}}$$の5進展開を計算してみました.
計算方法を説明する前に、まず $${p}$$ 進整数について簡単に述べておきます.
$${p}$$ を整数とするとき,次の形で表される数を $${p}$$ 進整数と呼びます.
$${a_0+a_1p+a_2p^2+a_3p^3+\cdots +a_np^n+\cdots}$$
ここで$${a_n (n=0,1,2,\dots)}$$は 0以上$${p}$$ 未満の整数です.
$${p}$$ 進整数全体のなす集合を $${\mathbb{Z}_p}$$ と表します.
$${S:=a_0+a_1p+a_2p^2+a_3p^3+\cdots +a_np^n+\cdots\in\mathbb{Z}_p}$$
の第$${n-1}$$ 部分和を $${S_n}$$ とおきます.
$${S_n:=a_0+a_1p+a_2p^2+a_3p^3+\cdots +a_{n-1}p^{n-1}}$$
$${p}$$ 進付値の定義によって
$${|S_n-S|_p\leq p^{-n}\to 0 (n\to\infty)}$$
となるので $${p}$$ 進整数は整数の列の$${p}$$進付値に関する極限です.
さて自然な環準同型写像
$${\varphi_n:\mathbb{Z}/p^{n+1}\mathbb{Z}\rightarrow \mathbb{Z}/p^{n}\mathbb{Z}, m+p^{n+1}\mathbb{Z}\mapsto m+p^n\mathbb{Z} (n=1,2,3,\dots)}$$
によって
$${\varphi_n(S_{n+1}+p^{n+1}\mathbb{Z})=S_{n}+p^n\mathbb{Z}}$$ となるので
この$${S}$$ は次の準同型写像の列による数列 $${\{S_n\}}$$ の極限とみることもできます.
$${ \cdots\rightarrow\mathbb{Z}/p^{n+1}\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}/p^{n}\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}/p^{n-1}\mathbb{Z} \rightarrow\cdots\rightarrow \mathbb{Z}/p^{2}\mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}}$$
よって
$${\displaystyle\biggl\{S=\biggl(S_{n}+p^n\mathbb{Z}\biggr) \in\prod_{n=1}^{\infty}\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}; \varphi_n(S_{n+1}+p^{n+1}\mathbb{Z})=S_{n}+p^n\mathbb{Z}\biggr\}}$$
は成分毎の和と積によって可換環になります.
これを $${\displaystyle\varprojlim_n\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}}$$ と書いて $${\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}}$$ の射影極限(または逆極限) と呼びます.
すなわち$${p}$$進整数環 $${\mathbb{Z}_p}$$は$${\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}}$$ の射影極限と同型な環です.
$${\displaystyle\mathbb{Z}_p\cong \varprojlim_n\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}}$$
さてHenselの補題を使うと 1の$${p-1}$$乗根が $${p}$$ 進整数になることを証明することができます.
とくに$${p=5}$$ のとき $${i=\sqrt{-1}}$$ は1の原始4乗根なので5進整数です.
この5進展開を計算するための準備として-1の5進展開を証明しておきましょう.:
$${-1=4(1+5+5^2+5^3+\cdots+5^n+\cdots)\in\mathbb{Z}_5}$$
実際$${4(1+5+5^2+5^3+\cdots+5^n)=5^n-1}$$であり,$${\mathbb{Z}_5}$$の位相で
$${5^n\to 0 (n\to\infty)}$$となることからこの等式が成立します.
さて$${i=a_0+5a_1+5^2a_2+\cdots+5^na_n+\cdots}$$ とおきましょう.
今回は $${a_0,\dots,a_5}$$ を計算します.
$${i^2=-1= 4(1+5+5^2+5^3+\cdots+5^n+\cdots) ≡4 (mod 5)}$$ および
$${i^2=(a_0+5a_1+5^2a_2+\cdots+5^na_n+\cdots)^2≡a_0^2 (mod 5)}$$
より $${a_0^2≡4 (mod 5)}$$ となります.これをみたす $${a_0}$$ は2または3です.
ここでは $${a_0=2}$$ をとることにしましょう.(このとき$${-i}$$の5進展開に対応する$${a_0}$$が3です.)
このとき$${-1≡4(1+5)=24 (mod 5^2)}$$ と
$${i^2=(2+5a_1+5^2a_2+\cdots+5^na_n+\cdots)^2≡4+20a_1 (mod 5^2)}$$から
$${20a_1≡20 (mod 5^2)}$$で,これは$${a_1≡1 (mod 5)}$$と同値なので $${a_1=1}$$です.
次に $${-1≡4(1+5+5^2)=124 (mod 5^3)}$$と
$${i^2= (2+5+5^2a_2+\cdots+5^na_n+\cdots)^2≡49+14・5^2a_2 (mod 5^3)}$$より
$${14・5^2a_2≡75=3・5^2 (mod 5^3)}$$で $${14a_2≡3 (mod 5)}$$
$${14≡-1 (mod 5)}$$より$${a_2≡-3≡2 (mod 5)}$$となるので$${a_2=2}$$です.
同様の操作を繰り返して $${a_3=1,a_4=3,a_5=1}$$ となることがわかります.
(この辺りになると手計算ではキツイので電卓を使いました.ここから先はコンピューターを使った方が良いかもしれません.)
以上より $${i=2+5+5^2・2+5^3+5^4・3+5^5+\cdots}$$ です.
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