Vol.12 数学的帰納法の練習~~その1


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1. 等差数列の和の公式の数学的帰納法での証明

1-1. 先ずは等差数列の和の公式の導出を・・・

 あるエピソードを紹介しよう(と言っても、私も人から聞いた話なのだが)。天才数学者ガウスが少年の頃、算数の先生が授業で(時間稼ぎに?)生徒に「1から100迄の自然数の和を求めよ」という課題を出したそうだ。

 この出題は、天才ガウスにとっては全く時間稼ぎにはならず、すぐに答えを述べたそうだ。その手法を一言で言うと、

\begin{array}{ll} &\dfrac{1}{2}  \big[  (1+ 100)+(2+99)+(3+98)+\cdots+(99+2)+(100+1)  \big] \\ \\ =&\dfrac{1}{2} \big(  101\times100  ) \\ \\ =&\dfrac{1}{2} \times 10100 \\ \\ =&5050 \end{array}

 これと同様な手法で、一般の等差数列の和を(練習を兼ねて)導出してみよう。

 初項 a 、公差 d の等差数列の第 k 項 "a_{k}"(k は自然数)は、

a_{k} = a + (k-1)d               \cdots(1)

とおける。a_{k} の第 n 項を "a_{n}" = l とし、この数列a_{k} の初項 a ( = a_{1}) から第 na_{n} 迄の和を S_{n}n は自然数)とおくと、

a_{1}=a,  a_{2}=a+d,  a_{2}=a+2d,  \cdots,  a_{n-1}=l-d,  a_{n}=l

 である。ここで S_{n} = a + a_{2} + a_{3} + \cdots + a_{n-1} + l について、次のような計算を行ってみる。

\begin{array}{cccc} &a &+ &l &= &a + l\\ \\ &(a + d) &+ &(l - d) &= &a + l\\ \\ &(a + 2d) &+ &(l - 2d) &= &a + l\\ \\ &&\vdots && \vdots\\ \\ &(l - d) &+ &(a + d) &= &a + l\\ \\ +)&l &+ &a &= &a + l\\ \hline \\ &S_{n}&+ &S_{n}&=&n(a+l)\\ \\ &&&2S_{n}&=&n(a+l) \end{array}

\therefore S_{n} = \dfrac{1}{2}n(a+l)            \cdots(2)

 また l = a_{n} = a + ( n -1 )d より、

S_{n} = \dfrac{1}{2}n\{2a+(n-1)d\}             \cdots(3)

 一般に、(2)又は(3)が等差数列の和の公式として良いと思う。

1-2. では、等差数列の和の公式を数学的帰納法で証明してみよう

  k,  n を自然数のとする。初項 a_{1} = a 、公差 d の等差数列

a_{k} = a + ( k-1 )d

の、初項 a から第 n 項迄の和 S_{n} は、 

S_{n} = \dfrac{1}{2}n\{  2a+(n-1)d  \}           \cdots(3)

である事を数学的帰納法で証明してみる。

( I ) n = 1 のとき、 S_{1} = \dfrac{1}{2}\times2a = a で成立。

(ある数列の第1項目から第1項目迄の和 S_{1} は、即ち初項(第1項目)の値である。当たり前であるが)。

( II ) n = k のとき、 a_k の初項から第 k 項迄の和 S_{k} について、

S_{k} = \dfrac{1}{2}k\{2a+(k-1)d\}

が成立する事を仮定する(仮にこれが正しいとする分けである)。この仮定のもとで数列の和の計算の事を考えれば、

S_{k+1} = S_{k} + a_{k+1}

が成り立つことは了解頂けると思う。私見なのだが、数学的帰納法を使うには、「 S_{k+1} の形を導くために、仮定 S_{k} をどの様に利用し、立式するか」が問われるところでは無いかと思う。

(この証明では上記の様に立式したが、証明する式が異なれば仮定の用い方も異なってくる。つまり、上式とは違う格好の立式になってくる)

 あとは上式右辺の計算結果が (3)式で n のところが k+1 に置き換わっている次の式の様に示す事が出来れば n = k + 1 のとき成立となる。つまり、上式右辺について次の式を目指して式計算、変形を進めていくのである。

S_{k+1} = \dfrac{1}{2}(k + 1)\{2a + [(k + 1) -1]d \}

  S_{k} + a_{k+1} の上式右辺への式変形を目指して計算すると、

\begin{array}{lll} &S_{k+1} \\ \\ =& S_{n} + a_{k+1} \\ \\ =& \dfrac{1}{2}k\{2a+(k-1)d\} + a_{k+1}\\ \\ =& \dfrac{1}{2}k\{2a+(k-1)d\} + a + \{ (k+1) - 1\}d \\ \\ =& \dfrac{1}{2}\{2ka + k^{2}d - kd +2a + 2kd \} \\ \\ =& \dfrac{1}{2}\{2ka + k^{2}d + kd + 2a \} \\ \\ =& \dfrac{1}{2}\{k(2a + kd) + (2a + kd)\} \\ \\ =& \dfrac{1}{2}(k + 1)(2a + kd) \\ \\ =& \dfrac{1}{2}(k + 1)\{2a + [(k + 1) -1]d \} \\ \\ \end{array}

 よって(3)式は n = k + 1 のときも成り立つ。 

 故に ( I ) ( II ) より任意の自然数 n について、

S_{n} = \dfrac{1}{2}n\{2a+(n-1)d \}   \cdots(3)

が成り立つ事が証明された。


2. 等比数列の和の公式の数学的帰納法での証明

2-1. 先ずは等比数列の和の公式の導出を・・・

  k,  n を自然数とする。初項 a_{1} = a 、公比 r の等差数列

a_{k} = ar^{k-1}                  \cdots(4)

である。この a_{k} の初項 a から 第 n 項 a_{n} 迄の和はどの様なものであったか? これも復習を兼ねて導出してみると、

\begin{array}{llllll} &a &&&= &a\\ \\ &ar &- &ar &= &0\\ \\ &ar^{2} &- &ar^{2} &= &0\\ \\ &&\vdots && \vdots\\ \\ &ar^{n-1} &- &ar^{n-1} &= &0\\ \\ +)&&-&ar^{n}&= &-ar^{n}\\ \hline \\ &S_{n}&- &rS_{n}&=&a - ar^{n} \\ \end{array}

これをすすめると、

S_{n}(1-r) = a ( 1 - r^{n} )

 よって r \ne 1 のとき、

S_{n} = \dfrac{a( 1 - r^{n} )}{ 1-r }

 また、(4)式で r = 1 のときには a_{k} = ar^{k-1} = a より、その初項から第 n 項迄の値が全て a なので、

S_{n} = na

  以上をまとめると、初項 a 、公比 r からなる等比数列の初項 a_{1} = a から第 na_{n}  迄の和 S_{n} は次のようになる。

r = 1 のとき、 S_{n} = na        \cdots(5)      

r \ne 1 のとき、 S_{n} = \dfrac{a( 1 - r^{n} )}{ 1-r }        \cdots(6)

2-2. では、等比数列の和の公式を数学的帰納法で証明してみよう

  k,  n を自然数とした、初項 a 、公比 r からなる等比数列 a_{k} = ar^{k-1} の、初項 a_{1} = a から第 n a_{n} 迄の和 S_{n}

r = 1 のとき、 S_{n} = na     \cdots(5)      

r \ne 1 のとき、 S_{n} = \dfrac{a( 1 - r^{n} )}{ 1-r }    \cdots(6)

を数学的帰納法で証明してみる。

 (5)式 S_{n} = na については、

( I ) n=1 のとき、S_{1} = a で成立。

( II ) n=k のときの成立、つまり S_{k} = ka の成立を仮定すると、

\begin{array}{ll} &S_{k+1}\\ \\ = &S_{k} + a_{k+1}\\ \\ = &ka + a\\ \\ = &( k+1 )a\\ \\ \end{array}

 よって n = k+1 のときも成立する。故に ( I ) ( II ) より、任意の自然数 n について S_{n} = na である事が証明できた。

 (6)式、 r \ne1 のとき S_{n} = \dfrac{a( 1 - r^{n} )}{ 1-r } については、

( I ) n=1 のとき、S_{1} = a で成立。

( II ) n = k のとき、 S_{k} = \dfrac{a( 1 - r^{k} )}{ 1-r } の成立を仮定すると、

S_{k+1} = S_{k} + a_{k+1}

 であるから、

\begin{array}{lll} S_{k+1} &= S_{k} + a_{k+1} \\ \\ &= \dfrac{a( 1 - r^{k} )}{ 1-r } + ar^{k} \\ \\ &= \dfrac{a( 1 - r^{k} )}{ 1-r } + \dfrac{ar^{k}( 1 - r )}{ 1-r } \\ \\ &= \dfrac{a - ar^{k} + ar^{k} -ar^{k+1} }{1-r} \\ \\ &= \dfrac{ a ( 1 -  r^{k+1} ) }{ 1-r } \end{array}

 よって(6)式は n = k + 1 のときも成り立つ。 

 故に ( I ) ( II ) より任意の自然数 n について、

S_{n} = \dfrac{a( 1 - r^{n} )}{ 1-r }             \cdots(6)

が成り立つ事が証明された。


3. 問題、その2の解答解説?

 私は北海道出身である。かつて本州に赴いて間も無くの事である。電車の車窓から「自分は北海道ではない本州にいるのだ」と少しばかり意識したのは、瓦屋根の家屋の建ち並ぶ風景に北海道のそれとは違うものを感じたからだと思う。

 他にもあった。例えば本州の住宅には雨戸があるが北海道のそれにはない。台風のもたらす暴風の、本州と北海道での強さがまるで違う事があるのだろう。本州で雨戸が無ければ、台風の暴風自体や、それで飛ばされた物の衝突で窓が破られてしまう可能性がある。

 私はいっそう「北海道とは違う土地に来たのだ」と意識した。

 そこで思った。今後は地球温暖化による気候変動が進むと、強烈な台風が勢力の衰えが少ない状態で北海道に襲来し、その暴風が雨戸の無い北海道の住宅の窓ガラスを破ってしまう事態が起こるかもしれない。

 やがて「建物の窓部分に雨戸を取り付ける工事の補助金を支給します」等という事になるかもしれない思う。社会は「台風の暴風が窓ガラスを破り、怪我人続出」とか「事業者が事業を一時中断」という事態を是非避けたいと考えると思うからだ(一個人の見解です)

 いや、それだけではない。北海道は断熱性を高めるために二重窓になっているではないか(三重窓という話も聞いたことがある)。本州の住宅の窓は、雨戸を除いては窓ガラス一枚で外気を遮断しているのが多いと思う。本州も夏場の酷暑対策と節電対策で冷房効率を上げるのに二重窓(ガラス)にするとか、壁や天井に断熱材を充てんするとかいうことで「工事のための補助金を支給します」となるかもしれない

 社会としては冷房効率を良くすることで、節電を是非に行いたいし、それが脱炭素にも繋がるではないか(一個人の見解です)

 そうなると工事を行ったり、その部材を製造販売する業者等は受注が増えて業績が良くなり、雇用も増え、景気が良くなり・・・

 「風が吹けば桶屋が儲かる」話をしてしまった。

※ 節電対策のために行った、工事を含めた生産活動自体が電力消費や炭酸ガス排出を行う事は勿論有る。その工事や、それに伴う生産活動と、成果物による節電効果を比較し、結果として節電や炭酸ガス排出削減につながるかは不明(というか、私には分からない)。

 この「問題、その2の解答解説」については、PDF版では(断腸の思いで?)カットする予定です。


4. 今月の問題

 私の出題にお付き合い下さい。

問題、その1

 次に示す(1)(2)について、その真偽を検討せよ。

(1) a + b + c = 0  \Leftrightarrow  a^{2} + b^{2} + c^{2} = -2( ab + bc +ca)

(2) a + b + c = 0  \Leftrightarrow  a^{3} + b^{3} + c^{3} = 3abc

問題、その2

 休憩しましょう。

(解答解説は次回に掲載予定です)


  次回は12月31日迄に掲載予定です。宜しくお願い致します。


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(この部分はPDF版ではカットの予定です)


初稿 2024年 11月 11日

高校数学1ミリメートル
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