Vol.5 定積分1ミリメートル その1

1. 計算結果が1になる定積分の式の例

(以下の私の説明は、積分についてのかなり直感的な説明の一つであり、こういう説明をする人もいると云う事を了解いただけると、とても助かる。)

 定積分とは面積(の増加量)なので、それを計算した結果が1になるような定積分の式を示す事となる。

1-1. 正方形の面積

 兎に角面積が1となれば良い。1 辺が 1 の正方形の面積を定積分で求めても、その値は当然 "1" となる。

 その正方形の 4 つの頂点の座標を其々$${ ( x, y ) = ( 0, 0 ), ( 0, 1 ), ( 1, 1 ), ( 1, 0 ) }$$ にとり、その面積を求めるために被積分関数 $${ y = f(x) }$$ を $${ f(x) = 1 }$$ として $${ x = 0 }$$ から $${ x = 1 }$$ まで積分する式は、

$$
\displaystyle{\int_{0}^{1} 1  dx        \left(  = \int_{0}^{1} dx   \right )}                          \cdots(1)
$$


 この ( 1 ) の計算結果が "1" となることを示そう。

 この被積分関数"1"は、$${x}$$ の変化量に対するその面積の変化量を示している。$${ x }$$ がこの定積分の下端 $${ 0 }$$ から 上端 $${ 1 }$$ 迄、無限に微小な量である $${ dx }$$ ずつ増加する毎に、この正方形の面積(定積分)は $${ 1 \times dx = dx }$$ ずつ増加する。$${x}$$ の増加量 $${dx}$$ に対するその面積の増加の割合(増加率)は"1"である。

( $${ \displaystyle{\int_{0}^{1} 2  dx} }$$ なら、その面積は $${ 2 \times dx = 2dx }$$ ずつ増加するので、$${x}$$ の増加量 $${dx}$$ に対する面積増加の割合(増加率)は"2"である )

 因みに、(1) の被積分関数は定数"1"であるために、積分変数である $${ x }$$ の値が変化しても被積分関数の値は"1"のままで変化しない。この辺りは、無理矢理書くと、$${ \displaystyle{ \sum_{x=0}^{1} (1 \times dx )} }$$ ( $${x}$$ は 0 から 1 迄 $${dx}$$ ずつ増加する)と書き換えられるかと思う。

 但し、この書き方は無理矢理のものである。普通はこんな書き方をしないと思う。「一体、$${ 1 \times dx }$$ を何回足し合わせることになるのか?」と尋ねられれば「無限回です」と答えることになると思う。そしてその、無限小とか無限回というやり方こそが $${\Sigma}$$ の計算とは違う $${ \displaystyle\int_a^b f(x)  dx}$$ 等と示す「定積分」と言うものなのである。

 その増加率"1"の量である面積自体は次のように表す事が出来る。

$$
F(x) = x + \mathrm{C} (  \mathrm{C} は定数  )                               \cdots(2)
$$

( 指定するのが増加率のみであるから、面積の値に確定できない部分がある。その確定できない部分の値について $${\mathrm{C}}$$ としている )

 老婆心ながら、この(2)式は中学数学で履修する直線の式 $${ y = ax + b }$$ で、$${ a = 1,  b = \mathrm{C} }$$ としたものである。これは、(1) で示す定積分の値は直線の式で表す事が出来る事を意味している

 (2) 式で $${x}$$ が(つまり正方形の 1 辺が )0 から 1 に増加すると、その間の $${ F(x) }$$ ( 面積 ) の増加量は、

$$
\begin{array}{lll}
F(1) - F(0) &=& ( 1 + \mathrm{C} ) - ( 0 + \mathrm{C} ) \\ \\
&=& 1
\end{array}                                                \cdots(3)
$$

 となる。

 ( 1 ) の計算結果が"1"となることを示せた。( 1 ) と ( 3 ) をまとめ、整理して定積分の計算過程を教科書の様に示すと以下の通りとなる。

$$
\begin{array}{lll}
\displaystyle \int_{0}^{1} 1 dx &=& \Bigl[  x  \Bigr]_0^1 \\ \\
&=& 1- 0 \\ \\
&=& 1
\end{array}                                                         \cdots(4) \\
$$

 (4) では、式の中で定数 "$${\mathrm{C}}$$" の記載は省略している。計算を進めるなかで、(3) で示した様に、引き算によりその値を相殺することになるからである。これは、定積分の計算式の示し方では一般的である。

 その定数 "$${\mathrm{C}}$$" を積分定数と言い、任意の数を示している。


1-2. 直角三角形の面積

$$
\begin{array}{lll}
\displaystyle \int_{0}^{1} 2x  dx &=&  \Bigl[  x^2  \Bigr]_0^1 \\ \\
&=& 1 - 0 \\ \\
&=& 1
\end{array}                                                   \cdots(5)
$$

 $${ f(x)  = 2x }$$ と $${ x = 1 }$$、$${ x }$$ 軸で囲まれる図形は直角三角形で、その面積は "1" である。それを定積分で求めたのが (5) である。

 面積の増加率は $${ f(x) =2x }$$ ( $${ 2x dx }$$ ずつ増加する )。その増加率のみにより面積そのものを表すと $${ F(x) = x^2 + \mathrm{C} }$$ となる。

 なので(5)は、増加率 $${ 2x }$$ の面積の、$${ x = 0 }$$ から $${ x = 1 }$$ 迄の増加量を示したものとも言える。

 「定積分の計算」を一言で言うなら「面積の変化率を示す関数から面積を示す関数を求め、それによって面積の増加量を求める作業である」という事にでもなろうか(一言にしては長くて申し訳ない)。


1-3. 直角双曲線の場合

 以下に用いる文字 $${ \mathrm{e} }$$ はネイピア数と云うもので、これを底とする対数を、底 $${\mathrm{e}}$$ を省略して $${\ln}$$ と書く。例えば、底が $${\mathrm{e}}$$ である $${x}$$ の対数を $${\ln{x}}$$ と書く(これを自然対数と言い、底 $${\mathrm{e}}$$ を「自然対数の底」とも云う)。

$$
\begin{array}{lll}
\displaystyle \int_{1}^{ \mathrm{e} } \frac{1}{x}  dx &=& \Bigl[  \ln{x}  \Bigr]_1^{ \mathrm{e} } \\ \\
&=& \ln{ \mathrm{e} } - \ln{1} \\ \\
&=& 1 - 0 \\ \\
&=& 1
\end{array}                                                          \cdots(6)
$$

 $${ \displaystyle f(x)  = \frac{1}{x} }$$ と $${ x = 1 }$$、$${ x = \mathrm{e}  }$$、及び$${ x }$$ 軸で囲む図形の面積は "1" である。それを定積分で求めたのが (6) である。

 面積の増加率は $${ f(x) = \dfrac{1}{x} }$$ ( $${ \dfrac{1}{x}  dx }$$ ずつ増加する)。その増加率のみにより面積そのものを表すと $${ F(x) = \ln{x} + \mathrm{C} }$$ となる。


1-4. 指数関数の場合

$$
\begin{array}{lll}
\displaystyle \int_{0}^{\ln{2}} \mathrm{ \mathrm{e} }^{x} dx &=& \Bigl[  \mathrm{ \mathrm{e} }^x  \Bigr]_{0}^{\ln{2}}  \\ \\
&=& \mathrm{e}^{\ln{2}} - \mathrm{e}^{0} \\ \\
&=& 2 - 1 \\ \\
&=& 1
\end{array}                                              \cdots(7)
$$

 $${ f(x) = \mathrm{e}^x }$$ と 直線 $${ x = 0,  x = \ln{2} }$$ 及び $${x}$$ 軸で囲む図形の面積は"1"となる。それを定積分で求めたのが (7) である。

 面積の増加率は $${ f(x) = \mathrm{e}^{x} }$$ ( $${ \mathrm{e}^{x}  dx }$$ ずつ増加する)。その増加率のみにより面積そのものを表すと $${ F(x) = \mathrm{e}^{x} + \mathrm{C} }$$ となる。


1-5. 正弦関数の場合

 正弦関数や余弦関数が其々、0 や $${\dfrac{\pi}{2}}$$ で 0 や 1 の値をとることを利用して、

$$
\begin{array}{lll}
\displaystyle \int_{0}^{ \pi / 2} \sin{ x }  dx  &=& \Bigl[  -\cos{x}  \Bigr]_{0}^{ \pi / 2 } \\ \\
&=& -  \Bigl(  \cos{\dfrac{\pi}{2} - \cos{ 0 }}  \Bigr) \\ \\
&=& - ( 0 - 1 ) \\ \\
&=& 1
\end{array}                                      \cdots(8)
$$

 $${ f(x) = \sin{x},  x= \dfrac{\pi}{2},  x}$$軸で囲む図形の面積は"1"である。それを (8) が示している。

 面積の増加率は $${ f(x) = \sin{x} }$$ ( $${ \sin{x}  dx }$$ ずつ増加する)。その増加率のみにより面積そのものを表すと、

$$
F(x) = -\cos{x} + \mathrm{C}               \cdots (9)
$$

となる。


問題その2

私の解答解説?

 円山動物園に行こうと思い、そのWEBサイトを見ていると「牛がいない」事に気付いて、やや衝撃を受けた。北海道札幌市の動物園なのに。酪農王国北海道の動物なのに(馬はいる様だ)。

 円山動物園では乳牛を飼って、搾乳した牛乳を「円山動物園牛乳」として販売すべきだ。温室効果を促進するとされている牛のゲップが問題なら、山羊から搾乳して山羊乳でも良い(冗談です)。

 しかしその、山羊もいない(羊はいる様だ)

 豚もいない。日頃頂いている豚さんの命に敬意を表するために「豚さんに会いに動物園に行こう!」という事があっても良いかもしれない等と、心のなかでぶつぶつ不満を述べていると、ヒグマは居る事が分かった。

 動物園に行ってヒグマを見ると、小春日和のなか、木を枕にしておやすみで、時折頭をもたげて来園者の様子を伺っているように見えた。

 ところで、動物園に行く人は、そこにいる動物たちを愛でるのが目的だろうか?私はヒグマを見た途端「この動物と出くわしたときの予行演習」のような気持になった。 

 ヒグマを見て「こいつが(失礼!)襲ってくると思うと良い。襲ってきたら背を向けて走って逃げる等してはいけない。ヒグマとかけっこで競争して勝てる分けがない。正面を向けたままヒグマの様子を見て、襲ってくると思ったら、蹲って頭や首を手で守る。ここで見るヒグマは、その場合の(人にとっての)害獣としてのヒグマの見本である」と思った。

 帰宅後、自分を襲う可能性のある動物の見本をみて、その動物から自分を守る意識を高めるというのは、動物園への訪問の仕方としてかなり間違っている(かもしれない)と思うに至った。

 ここに述べた野生のヒグマへの対処方法は「必ず適切なものである」とは言えないかもしれません。状況によっては他の対処法が良いかもしれません。専門家等の御助言を参考にされることをお勧めいたします。

(ここに記載の随筆(?)については、PDF版ではカット致しております)


今月の問題

私の出題にお付き合い下さい。

問題その1

計算結果が"1""2"となる定積分の式の例を、更に幾つか挙げよ。

(相変わらずとてもせこい出題かつ手抜きかもしれず、何だか申し訳ない)

問題その2

ゆっくり休憩しましょう。


 来月の更新は私の都合によりお休み致します。早過ぎるとは思いますが、皆さん、良いお年をお迎え下さい。

 (来年こそは、世界が平和であります様に。)

  マガジン「高校数学1ミリメートル」の次回の更新は、令和6年1月31日迄に致す予定です。次回も宜しくお願い致します。


初稿 2023年11月 18日


高校数学1ミリメートル
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