Vol.11 この因数分解、どうしてくれようか?~~その1


前回出題の問題、その1の解答解説

 次の式を有理数係数の範囲で因数分解出来たら良いのだが・・・と思ったとする。

$$
( m + 1 )( m + 2 )( m + 3 )( m + 4 ) - 3    \cdots(1)
$$

 (1)式を展開して降べきの順に整理すると、

$$
m^4 + 10m^3 + 35m^2 + 50m + 21   \cdots(2)
$$

 (2)式を見たとき、これを因数分解するのに因数定理を使ってみようと思うかもしれない。因数定理は高次の整式の因数分解にとって定石の一つであり、実は先月解説の因数分解にも有効である(それは後で述べようと思う)。

 しかし(2)式を$${m}$$ の整式と見做して、

$$
f(m) = m^4 + 10m^3 + 35m^2 + 50m + 21        \cdots(3)
$$

とおいても、

$$
f(m) = 0   \cdots(4)
$$

を満たす有理数$${m}$$が見当たらない。どうするか?仕方ないので(1)に立ち返り、何か使えそうなパターンが無いか探してみる事にしよう。

$$
( m + 1 )( m + 2 )( m + 3 )( m + 4 ) - 3    \cdots(1)
$$

 すると、(1)式が次のように変形できることに気付いた。

$$
\begin{array}{ll}
&( m + 1 )( m + 2 )( m + 3 )( m + 4 ) - 3 \\ \\
=&( m + 1 )( m + 4 )( m + 2 )( m + 3 ) - 3      \cdots(5) \\ \\
=&( m^2 + 5m + 4 )( m^2 + 5m + 6 ) - 3     \cdots(6) \\ \\
\end{array}
$$

 (1)を(5)の様に見ると、(6)の様に出来、$${ m^2 + 5m }$$ の型が2つ出来る。これを $${ t =  m^2 + 5m }$$ とする。すると (6)は、

$$
\begin{array}{ll}
&( m^2 + 5m + 4 )( m^2 + 5m + 6 ) - 3      \cdots(6) \\ \\
=&( t + 4 )( t + 6 ) - 3                                                  \cdots(7) \\ \\
=&t^2 + 10t + 24 - 3                                                  \cdots(8) \\ \\
=&t^2 + 10t + 21                                                        \cdots(9)  \\ \\
\end{array}
$$

 (9)式なら因数分解出来そうだ。その因数分解の後に $${ t =  m^2 + 5m }$$ とすると良い。すると、

$$
\begin{array}{ll}
&t^2 + 10t + 21                                                    \cdots(9)  \\ \\
=&( t + 3 )( t + 7 )                                                 \cdots(10)  \\ \\
=&( m^2 + 5m + 3 )( m^2 + 5m + 7 )             \cdots(11)  \\ \\
\end{array}
$$

 (11)は、有理数係数の範囲ではそれ以上に因数分解できない。よって(1)の有理数係数の範囲での因数分解は、

$$
\begin{array}{ll}
&( m + 1 )( m + 2 )( m + 3 )( m + 4 ) - 3 \\ \\
=&( m^2 + 5m + 3 )( m^2 + 5m + 7 )                       \cdots(11)
\end{array}
$$

 となる。


 ここで問題

 上記に示す因数分解結果について更に、実数係数や複素数係数の範囲での因数分解を検討せよ。(健闘を祈る)


前回解説の因数分解に因数定理を用いてみる


 まずは$${a^3 + b^3}$$ について、この式を $${a}$$ についての整式と見做し、以下のようにしてみる。

$$
f(a) = a^3 + b^3                      \cdots(12)
$$

 因数定理により $${ f(-b) = 0 }$$ であるから(12)式右辺は $${ ( a + b ) }$$ を因数に持つことになる。これが前回の記事で「$${ ( a + b ) }$$ を因数に持つ」と考えた根拠である。

 後は前回の記事の様にしても良いし、同じ事ではあるが $${a^3 + b^3}$$ を $${  a + b }$$ で割り算することで因数分解の結果を得られる。

 次に $${ a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 }$$ について、上記と同様に $${a}$$ についての整式と見做し、以下のようにしてみる。

$$
f(a) =  a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3                    \cdots(13)
$$

 (13)式右辺の文字の対称性から $${ f(-b) = 0 }$$ となる(確かめられたし)。つまり上記と同様に考える分けである。

 するとこれまた同様に(13)式右辺は因数定理により $${ ( a + b ) }$$ を因数に持つことになる。そしてまたまた同じ様に(13)式右辺を $${ ( a + b ) }$$ で割り算することにより因数分解の結果を得られる(確かめられたし。健闘を祈る)。


問題、その2の解答解説?

 今年の夏は気温が高くなる天気予報のもとに、牛乳の生産量が落ちる事が予想されたようだ。

 この夏は「牛乳をたくさん飲みましょう」キャンペーンの様なものは、いつもと比べて特には無い様だ。(私の記憶が正しければ)一頃は、農林水産大臣が「一人一日2リットル」等と仰っていたが、当時「いくら何でも、そりゃ無理だろう」と、私が勝手に思っていたのが懐かしい(やれば出来るかもしれないが)。

(その時の農林水産大臣がそう仰っていたのは、それだけ事が深刻な状況であったという事であろうと思う)

 閑話休題

 天気予報通りに今年の夏も暑い。湿度も高くなって、北海道は本州並みの湿気対策を含めた暑さ対策が必要になっているかもしれない。

 あの「カラッ」とした、北海道の夏が懐かしい。

 そのことで色々と考えてしまう。北海道の住宅は寒さ対策による高気密性を求めている(その代わりに湿気対策に気を使う必要がある)。この蒸し暑さでエアコンを使うと、寒さ対策だった北海道の住宅の気密性や断熱性が、逆に外の熱を遮断し、エアコンの冷気を逃がさないのに役立つ事になる。湿気取りはエアコンがやってくれるのだろう。これは皮肉なことだと思う。

 本州の住宅は、もともとは湿気をいかに逃がすかが大事で、そのために通気性を良くする事が肝心だと聞いたことがあるが、最近はエアコンの冷気を逃がさないように気密性を高くしているとの事だ。外の熱を遮断するための断熱材も必要かもしれない。

 本州の住宅も暑さ対策のために寒冷地仕様と同様なものが必要となるかもしれない。これも実に皮肉に感じる。

 でも、数日以上の停電になったら、どうするか?・・・バッテリーや自家発電で賄いきれるだろうか?あの電力大食らいのエアコンを。

 また、つまらぬ話をしてしまった・・・

(この部分はPDF版ではカットする予定です)


今月の問題

 私の出題にお付き合い下さい。

問題、その1

 「等差数列の和の公式」と「等比数列の和の公式」について、其々を数学的帰納法で証明せよ。

 (数学的帰納法の簡単な紹介と練習を兼ねての出題です)

問題、その2

 休憩しましょう。

(解答解説は次回に掲載予定です。)


 両脇の下を保冷剤で冷やすことで涼をとる「脇の下アイス」なるものをネッククーラーと同時に使ってみたところ、これがなかなか冷涼感がありました。片方だけの利用より、とても冷涼感を感じました(個人の感想です)。

 9月と10月の更新はお休み致します。次回は11月30日迄に掲載予定です。宜しくお願い致します。


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(この部分はPDF版ではカットの予定です)


初稿 2024年 8月 20日

高校数学1ミリメートル
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