Vol.4 常用対数表の活用を、その2


Vol.3 で出題した問題の、私の解答解説

問題その1、問1

(以下の記載では、指数法則 $${ a^{x} a^{y} = a^{ x + y },\ {  ( a^{x} ) }^{y} = a^{ xy } }$$ は了解済みとする)

 Vol.3で公式1とした次の式を、左辺から右辺へと導出致したく思う。

$$
\log_{a}{b} = \dfrac{\log_{c}{b}}{\log_{c}{a}} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (公式 1)
$$

 そのために左辺を

$$
y = \log_{a}{b}  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (1)
$$

とおく。これは、

$$
a^{y} = b  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (2)
$$

と同じ意味である。換言すると、(1) と (2) は同値であり、双方とも $${ b }$$ は $${ a }$$ の $${ y }$$ 乗だと言っている。この (2) で示す指数の形にして考えていく。

 次に、任意の底 $${ c }$$ の (2) の両辺の対数を考える。公式1右辺の分母分子が其々 $${ \log_{c}{a},  \log_{c}{b} }$$ だからである。そうして公式1に辿り着こうと思う。

$$
\log_{c}{a^y} = \log_{c}{b}  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (3)
$$

 (2) は (3) の様にして良い。底が共通である同じ値の対数は、当然同じ値となるからである。


 ところで (3) の左辺 $${ \log_{c}{a^y} }$$ はどの様なものだろうか?それを $${ \log_{c}{a} }$$ の形から考える。 まずはこれを、

$$
x = \log_{c}{a}  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (4)
$$

とおく。これは、

$$
a = c^{x}  \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (5)
$$

と同じ意味(同値)である。

(対数の式で分からなければ、それを指数の形にして検討する事は有るかと思う。それをやっている分けである。)

 (3) の左辺 $${ \log_{c}{a^y} }$$ は、その真数が $${a}$$ の $${y}$$ 乗となっているので、(5) も $${a}$$ が $${y}$$ 乗となるように両辺を $${y}$$ 乗すると、

$$
a^{y} = { ( c^{x} )  }^{y} = c^{ xy }
$$

よって、

$$
a^{y} = c^{xy} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (6)
$$

 この (6) は、

$$
xy =\log_{c}{a^{y}} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (7)
$$

と同じ意味(同値)である。$${ x = \log_{c}{a} \cdots(4) }$$ と置いていたので、これを (7) に代入し(左辺と右辺を逆にして)、

$$
\log_{c}{a^{y}} =y \log_{c}{a} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (8)
$$

 となる。

 この (8) を一言で言うなら

$$
x = \log_{c}{a} \ \ \Leftrightarrow \ \ \ a = c^{x}
$$

という関係に於いて、(8) は「真数の $${y}$$ 乗は、指数の $${y}$$ 倍」「指数の $${y}$$ 倍は、真数の $${y}$$ 乗」とでも言ったところであろう。


 話を $${ \log_{c}{a^y} = \log_{c}{b} \ \cdots(3) }$$ の続きに戻そう。(8) により、(3) の左辺について $${ \log_{c}{a^y} = y \log_{c}{a} }$$となる。冒頭で $${ y = \log_{a}{b} \cdots(1) }$$ と置いていた。よって (3) 左辺は、

$$
\begin{array}{lll}
\log_{c}{a^y} &=& y \log_{c}{a}  \\
&=& ( \log_{a}{b} ) ( \log_{c}{a} ) 
\end{array}
$$

と変形できる。(3) の左辺について話が長くなってしまった。当たり前だが、右辺も書いて (3) 式と同値である。\\

その (3) 式右辺は $${ \log_{c}{b}  }$$ であった。よって (3) 式は、

$$
( \log_{a}{b} ) ( \log_{c}{a} ) = \log_{c}{b} 
$$

$$
\therefore   \log_{a}{b} = \dfrac{ \log_{c}{b}  }{ \log_{c}{a} }       \cdots(公式1)
$$

 (ところで、公式1に至る直前の式変形で、両辺を $${ \log_{c}{a}}$$ で割っている様だが、割って良いのだろうか?

 良いのである。$${ \log_{a}{b}}$$ と言う式を示す事は、同時に $${ a, b \gt 0   かつ   a \ne 1 }$$ と云う事も言っている。それは $${ \log_{c}{a} \ne 0 }$$ である事も示している。$${ a \ne 1 }$$ だからである。

 よって、公式1に至る直前の式変形で両辺を $${ \log_{c}{a} \ne 0 }$$ で割るのは、これは、割って良いし、公式1の右辺の分母は0で無いのである。

 割り算は0で割ってはならないし、分数の分母は0ではいけないという事は、当たり前のようだが常に意識すべきことである。)


 次に、公式3について、どう考えるか?

$$
\log_{a}{XY} = \log_{a}{X} + \log_{a}{Y} \ \ \ \ \cdots (公式3)
$$

 右辺の2項は其々 $${ X,  Y }$$ について $${ a }$$ の何乗であるかを示している。其々$${ x }$$ 乗、$${ y }$$ 乗であるとして、

$$
X = a^x,   Y = a^y \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (9)
$$

と書く事が出来る。因みに其々が次の (10) 式の其々と同値である。

$$
x = \log_{a}{X},  y = \log_{a}{Y} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (10)
$$

 (9) と (10) は双方とも、$${ X }$$ は $${ a }$$ の $${ x }$$ 乗であり、$${ Y }$$ は $${ a }$$ の $${ y }$$ 乗だと言っている。

 さて、公式3の左辺は「 $${ XY }$$ が $${ a }$$ の何乗であるか」を示している。何乗となるだろうか? これは (9) より、

$$
XY = a^{x} a^{y} = a^{ x + y } \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (11)
$$

であるから、$${ XY }$$ は $${ a }$$ の $${ x + y }$$ 乗である事が分かった。これは次の (12) と同じ意味である。

$$
\log_{a}{XY} = x + y \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cdots (12)
$$

 そう言えば (10) で $${ x = \log_{a}{X},  y = \log_{a}{Y} }$$ であった。これらを (12) に代入すると、

$$
\begin{array}{lll}
\log_{a}{XY} &=& x  +  y \\
&=& \log_{a}{X} + \log_{a}{Y}
\end{array}
$$

$$
\therefore    \log_{a}{XY} = \log_{a}{X} + \log_{a}{Y}           \cdots(公式3)
$$

 公式3が導出された。これを一言でいうと「真数の積は指数の和」という事にでもなろうか。


問題その1、問2


(1)

 $${\log_{10}{11}}$$ について、私の常用対数表の真数の値は 9.999 迄しかないことは Vol.3 の記事の中で述べた。11 の常用対数の掲載は無い。そこで、$${ 11 = 1.1 \times 10 }$$ として公式3を使い、そのうえで常用対数表を参照するのが良い。

 私が常用対数表を参照すると $${ \log_{10}{1.1} = 0.0414 }$$ であった。$${ \log_{10}{10} = 1 }$$ は最早自明であろう(10 は 10 の 1 乗)。よって、

$$
\begin{array}{lll}
\log_{10}{11}  &=& \log_{10}{ (  1.1 \times 10  ) } \\ 
&=& \log_{10}{1.1} + \log_{10}{10} \\
& \approx & 0.0414 + 1 \\
&=& 1.0414
\end{array}
$$

 予想通り(?)1 より僅かに大きい値と分かる。

(2)

 $${ \log_{10}{0.9} }$$ について、私の常用対数表の真数の最小値は 1.000 である。0.9 の常用対数の掲載は無い。そこで $${ 0.9 = \dfrac{9}{10} }$$ より、以下のように考えてみる。

$$
\begin{array}{lll}
\log_{10}{0.9} &=& \log_{10}{ \dfrac{9}{10} } \ \ \ \ \ \ \cdots(13) \\ \\
&=& \log_{10}{ \left(9 \times \dfrac{1}{10} \right) } \\ \\
&=& \log_{10}{9} + \log_{10}{ \dfrac{1}{10} } \\ \\
&=& \log_{10}{9} + \log_{10}{10^{-1}} \ \ \ \ \ \ \cdots(14) \\ \\
&=& \log_{10}{9} - \log_{10}{10} \ \ \ \ \ \ \cdots(15) \\ \\
& \approx & 0.9542 - 1 \\ \\
&=& -0.0458
\end{array}
$$

 (14) から (15) にかけての右辺2項目の計算については $${ \log_{c}{a^{y}} =y \log_{c}{a} \ \cdots(8) }$$ による。(8) は公式と考えて良い。 

 私が常用対数表を参照すると、9 の常用対数は約 0.9542 であったので、この様な計算結果となった。 0.9 は 10 の 約 -0.0458 乗となる。負の値である。1より小さい正の数の常用対数は負の値となる(対数関数のグラフを参照されたし)。

 この計算過程において、(13) の右辺で真数が分数の形となっている。それには次に示す公式を適用することも出来る。

$$
\log_{a}{\dfrac{X}{Y}} = \log_{a}{X} - \log_{a}{Y} \ \ \ \ \ \cdots(16)
$$

 (16) 式を、公式3に関する本稿の記載を参考に導出されたし(健闘を祈る)。


問題その2

 私の解答解説?

 学生の頃、学生食堂 ( 学食 )で購入した牛乳を飲んでいると、向かいの席に御着席の同期生曰く

 「 牛乳なんか飲んで、旨いか? 」

 否、旨いとか不味いとか、そう云うものでは無いと思うのだけれど。牛乳には牛乳の味とか旨さが有ると思うのだけれど。と云うか、例えば、コカ・コーラと比較するような物でも無いだろう ( ペプシ・コーラでも良いのだが )・・・等と、何とも言葉に詰まった事があります。

 窓の外には乳牛が・・・居たかどうか迄は覚えていません。

 またしても、つまらん事を書いてしまった・・・

(ここに記載のものは、PDF版ではカットの予定です。了承頂けましたら幸いに思います。他の私のマガジンに転載する事は有るかもしれません)


今月の問題

私の出題にお付き合い下さい。

問題その1

計算結果が"1"となる定積分の式の例を、5つ挙げよ。

(相変わらずかなりせこい出題かもしれず、何だか申し訳ない)

問題その2

休憩しましょう。


 此の頃、特に北海道は、猛暑から急に涼しくなってきたかと思います。私の記事をお読み頂けますよう(冗談です)、風邪など召さず、健やかにお過ごし頂きたく思います。私も記事を書き続けられる様、健康に留意致したく思います。

  マガジン「高校数学1ミリメートル」の次回の更新は11月30日迄に致す予定です。次回も宜しくお願い致します。


初稿 2023年10月5日


高校数学1ミリメートル
©くぼいる 2021~
All Rights Reserved

 ささやかなコンテンツではありますが、貴方様の御支援を宜しくお願い致します。頂きました大切な御支援は、微力ながらも閲覧下さる皆様のために、内容の充実と継続に生かしたく思います。どうぞ宜しくお願い致します。