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【活用事例:無機材料の表面修飾】シリカゲル表面の分子修飾の効果の可視化


1. 表面修飾に対する親和性の評価を可視化したい

微粒子材料の溶媒への分散性の向上を代表例とする、粒子の分散性の制御方法の確立は、材料科学分野において重要な技術です。アプローチとしては粒子表面を分子で修飾し、溶媒への親和性を変化させる手法がとられることがあります。分子による表面修飾の効果を定量的に分析し、材料設計指針にフィードバックすることができれば、研究開発の加速につながると考えられます。

こちらの文献において、α-アルミナや、表面修飾したシリカゲルの分散性をハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いて定量評価することで、材料設計方針を可視化する事例が報告されています。

上記の事例を参考に、SoluVisionを用いてシリカゲルの表面を2種類の分子で修飾した場合の溶媒への親和性の変化を可視化してみたいと思います。この例に限らず、様々な材料同士の親和性の比較も可能です。

2. 表面修飾したシリカゲルの溶解度パラメータを求める

今回は、表面修飾官能基としてオクタデシルシリル基(ODS)とアミノプロピルシリル基(APS)の2パターンの分子よって修飾されたシリカゲルの溶解度パラメータ(SP値)を求め、それぞれの溶媒に対する親和性の違いを比較します。この場合は、いくつかの溶媒への溶解性を事前に評価し、良溶媒と貧溶媒の情報を知る必要があります。今回は前述の文献に報告されている沈降法を用いた良・貧溶媒の評価結果を用いてSP値を求めます。

まずはシリカゲル@ODS修飾の場合の評価結果を入力し、SP値を求めます。
※画面上の左上の材料カテゴリが無機イオン結晶となっていますが、アプリ内の材料カテゴリの区分けによるもので、計算結果には影響はありません。

シリカゲル@ODS修飾の実験結果を入力し、SP値を求めます

計算結果を確認すると、SP値は(dD:15.4, dP:12.0, dH:11.5)と計算されました。Rはシリカゲル@ODS修飾のSP値を中心とするグレーの球の3Dマップ上の半径を表しています。シリカゲル@ODS修飾のSP値を中心にグレーの球が表示されており、グレーの球内の溶媒が良溶媒であることを示していますので、実験結果を反映した結果が得られていると考えられます。

シリカゲル@DOS修飾のSP値

シリカゲル@ODS修飾のSP値が計算されましたので、同様にしてシリカゲル@APS修飾のSP値を計算すると(dD:15.1, dP:11.4, dH:14.7)となりました。これらのSP値を3Dマップ上で可視化、比較することにより官能基修飾の効果の違いを定量的に把握することが可能です。

3. 結果は…

上記の2つのSP値を3Dマップ上に同時に表示します。下記の図に示すように、黒丸で示されるプロットがシリカゲル@ODS修飾、緑丸で示されるプロットがシリカゲル@APS修飾のSP値です。赤と青のプロットはシリカゲル@ODS修飾の計算結果における良・貧溶媒を表しています。

注目するポイントは、3Dマップ上における黒丸と緑丸の位置、およびそれらを中心とするグレーの溶解球のカバー範囲の違いです。

3Dマップ上における2つのSP値の比較.。本事例では視認性のために緑丸の表示に加工していますが、アプリ内では比較時に追加するSP値のプロットは、黒色の図形違いになります。

溶解球の内部にプロットされる溶媒が、そのSP値を持つ溶質の良溶媒になる可能性が高いです。すなわち、表面の分子修飾の違いにより、良溶媒となりうる溶媒が変化していることを示しています。このように、3Dマップ上におけるSP値の位置や溶解球のカバー範囲を比較したり溶媒のSP値と比較することで、親和性の変化を視覚的に評価し、次の実験指針にフィードバックすることが可能です。

2つのSP値それぞれに対して、単一溶媒に対し良溶媒の探索をアプリ内で行うと、異なる溶媒が提案されることも確認できました。この結果は、アプリ内で下記の共有コードを入力すると見ることができます。
シリカゲル@ODS : 01HFH9RKF95VJYF23W238H965E
シリカゲル@APS:01HFH9SBB7B1CFS2FHZ4CD2EM5
※上記共有コードで結果が見れない場合は恐れ入りますが公式サイトのお問い合わせよりご一報ください。

今回は表面修飾官能基の違いによる親和性の変化について焦点を当てましたが、SP値が計算できれば材料同士の親和性を評価することができます。粒子材料と樹脂の系や、液相でリガンド交換する際の溶媒の選定等、様々な系における親和性を視覚的に評価することができます。

溶媒の選定にDXを。ぜひご自身の扱う材料で試してみてください。

4.まずはやってみよう

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