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デヴィッド・リンチ「エレファントマン」

デヴィッド・リンチの出世作「エレファントマン」です。主人公のジョン・メリックは象の外観を思わせる重い身体的奇形を持ち、言葉も不自由で、エレファントマンと呼ばれて見世物にされていました。

彼を発見したトリーブス医師(アンソニー・ホプキンス)は、最初メリックを知恵遅れだと考えていましたが、ある日メリックが教えた覚えがない聖書の一説を暗誦していることに気がつき、彼の知能が正常であるばかりか芸術に高い感性を持つ人物だと知り、驚愕します。

トリーブスが世間に紹介したことで、メリックは有名人になり、社交界の花形になりますが、しかし世間の彼を見る目は好奇心からの欺瞞そのものでした。そして悲劇が起こります。

この映画は日本でも大ヒットし、リンチはまるでヒューマニズムの大作家のようにもてはやされましたが、それが誤解であることは、この映画のヒットで日本でも公開された映画史上最高に気持ち悪い処女作「イレイザーヘッド」で明らかになりました。

しかし「エレファントマン」を撮り、これが世界的にヒットしたことでリンチが脚光を浴びたことは確かです。それでどアングラ監督から3作目でハリウッド超大作「デューン」の監督を任されました。リンチにとっては本当は撮りたくない映画でしたが、それをやり遂げたことでご褒美に「ブルーベルベット」を撮ることができ、それで初めてリンチにとっての正当な評価が得られたのです。

「エレファントマン」は、映画に先立ってデビッド・ボウイが主演した舞台がヒットしていました。見世物小屋で育った異形者ジョン・メリックを超美形ロックスターのデビッド・ボウイが演じるという逆説は、舞台ならではの演出で、リンチはそうではなく超リアリズムでメリックの異形を真っ向から造形しました。

メリックを演じたのはジョン・ハートですが、彼は「イレイザー・ヘッド」を観てリンチの才能に感銘を受け、自分の素顔が全く分からないメリックの特殊メイクを甘んじて受け、演じたのです。

この映画のプロデューサーがメル・ブルックスというのが面白い。彼は「メル・ブルックスの新サイコ」とか「珍説世界史パートⅠ」などで有名なお笑い映画専門の監督なんですが、糞アングラ監督だったリンチに目を付け、さらにはデビッド・クローネンバーグに「ザ・フライ」を撮らせてメジャーデビューさせるという、才能を見つける確かな眼を持っています。

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