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「少年猿飛佐助('59東映動画)」

東映動画(現東映アニメーション)が「白蛇伝」('58)の次に製作した総天然色まんが映画、シネマスコープで作られた長篇第2作です。

東映動画は1955年に「日本のディズニースタジオ」を目指して創立しましたが、初期の数本は扱う題材を「東洋の物語」に求め、「白蛇伝」が中国の民話を原作に作られ、第2作「少年猿飛佐助」では檀一雄の原作をもとに忍者少年を主人公にしました。これは東洋の作品であることを強調することで、作品に国際性を与え、海外セールスを狙う目論見がありました。

この作品で特筆すべきは日本を代表するアニメーター・大塚康生が初めて動画から原画に昇格し、クライマックスの魔女と猿飛佐助の死闘シーンを任されたことです。大塚は初の大役に大いに張り切って魔女が老婆に、さらに骸骨に変じてもなお佐助に襲いかかる場面を全力で描きましたが、あまりにリアルさを追求したため、画面からは迫力はあるものの、どこか滑稽な感じが出てしまい、社内試写では笑いが起きたということです。

怖い場面を描いたのに笑いが出るとは、と大塚は頭を抱えましたが、力作であることは監督以下全員が認めざるを得ず、このカットは残ることになりました。

大塚康生にとっては、ある場面だけが突出しても映画全体の中で調和されなければ意味がないことを悟った、重要な仕事になりました。

気になる方はどうかこのDVDをお買い求めいただき、どんな場面か確かめていただけると幸いであります。


「少年猿飛佐助('59東映動画)」
中村嘉葎雄 / 桜町弘子 / 大工原章



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