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新品未開封「安寿と厨子王丸」('61東映)

東映動画長篇第4作「安寿と厨子王丸」です。森鴎外の「山椒大夫」を原作にした、平安時代の荘園の中での農奴たちの悲惨な生活を題材にした映画です。

日本のアニメーションとしてはかなり大胆にライブアクション(実写を元にしたアニメーション作画)が取り入れられ、美しい大和絵調の作画に貫かれた作品ですが、まるで実写映画を観ているかのようです。

高貴な家に生まれた安寿と厨子王丸が、母親と生き別れ、奴隷商人に山椒大夫の荘園に売られて、筆舌に尽くしがたい辛酸を舐めます。

安寿は自分の命と引き換えに厨子王丸を逃しますが、自分は入水して果て、魂は白鳥の姿に。白鳥に導かれて国分寺に逃れた厨子王丸は、僧正から関白への紹介状を貰い、都に上ります。厨子王丸は時の帝に業なす妖怪を退治したことで、関白によって陸奥の国守に任ぜられました。陸奥への途上、かつて奴隷として働いた山椒大夫の荘園に向かいます。見違えるように出世した厨子王丸を見た山椒大夫は、驚いて平伏します。

そして佐渡に遊女として売られていた母と、涙の再会を果たすのでした。

最後に厨子王丸と山椒大夫の立場が逆転し、権力によって山椒大夫を屈服させる結末は、左翼ばかりの東映動画スタッフが猛反発し、会社と労働組合が反目し合う中で制作が進められる異例の事態となりました。

この労組と会社との反目はその後もずっと続き、高畑勲が労組の委員長に、宮崎駿が書記になって製作された「太陽の王子ホルスの大冒険」では、労働組合パワーで会社の要求を無視して制作した結果、高畑勲・大塚康生は責任をとって辞職することになります。

「安寿と厨子王丸」に話を戻しますが、アニメーションとしては、絵的にとても美しい作品です。ディズニーとは全く異なる東洋的・日本的な美意識をアニメーションに込めるやり方は、本作で一段と進みました。


「安寿と厨子王丸('61東映)」
佐久間良子 / 北大路欣也 / 藪下泰司


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