漫才・おちつけ

◯✖︎「どうもコンビ名です。よろしくお願いします」
◯「普通に生活しててもムカつくことって多いよね」
✖︎「そうだね」
◯「この前電車に乗って家帰ろうとしててさ、目の前の席が空いたから座ろうとしたら急に隣のサラリーマンが横入りしてきたのよ」
✖︎「横入りとかやだねえ」
◯「悪びれる様子もなく太々しく寝始めてさ」
✖︎「一番腹立つ」
◯「そん時すっげぇムカついてさ、その日の夜風俗行ってスッきりしてきたわ」
✖︎「…うーん…エピソードのオチが汚い」
◯「え?」
✖︎「無理やりオチに持ってかなくていいんじゃないかな。下ネタとか好き嫌い分かれるから」
◯「あそう。でも他にもムカつくことがあってね、自転車の籠にゴミを捨てられてたんだ」
✖︎「いやだね」
◯「しかも食べ終わったスナック菓子の袋で籠も油でベトベトしちゃってさ」
✖︎「ムカつくなあ」
◯「そのまま自転車で風俗直行」
✖︎「いらないいらない。無理やり下ネタで落とさないでよかったのよ」
◯「…すまん」
✖︎「すまんじゃないでしょ」
◯「ほんとにどうしてもさ、持っていきたくなっちゃう」
✖︎「サイゼリヤで男4人で話してるんじゃないんだよ?」
◯「空間履き違えてたわ。もう一個だけいい?」
✖︎「無理やり下ネタで落とさないでいいからね」
◯「雨降ってる日にコンビニ行って買い物してさ、外出てパッと見たら自分の傘が無くなってんの」
✖︎「おお、盗まれた」
◯「そうなんだよ。ザァーザァー雨降ってるのになんで人の傘持ってくんだよってムカついてさ」
✖︎「ムカつくねムカつくね、それで?」
◯「でさパッと視界に入った入り口のガラスに、なんとそこに」
✖︎「おお!」
◯「レインコート着た俺が映ってた。爆笑」
✖︎「…嘘はやめろ?」
◯「…なんでわかった?」
✖︎「気づくじゃんレインコート着てたら誰でも。せめて折り畳み傘くらいにしとけよ」
◯「そう、折り畳み傘だったわ」
✖︎「早いなあ。今俺が出したアイデアを俺で試すな」
◯「なんかむずい。エピソード話すのしんどいわ」
✖︎「いやエピソード自体は悪くないのよ。落とそう落とそうとしすぎてるんじゃない?」
◯「わかるわ。フレンチのシェフが最後のデザートは特に美味しいの出そうって思うのと同じだよね」
✖︎「知らんけど。お前は落とそう落とそうとし過ぎなんだよ」
◯「え、それはどうゆうこと?」
✖︎「例えばさ、…あ、メモ取らなくて大丈夫?」
◯「ああ、すいません(メモを取り出す)」
✖︎「オチって起承転結の結でしょ?聞いてる方の脳みそを納得させなきゃいけないのよ」
◯「起承転結の結」
✖︎「そう!オチでいきなり風俗出てきたり、真実味のないこと言われたりしてもカタルシスが起きないのよ」
◯「カタルシス。勉強になります」
✖︎「そこ踏まえてさ、もう一回やってみ?」
◯「はい!」

◯、上下に軽くジャンプしながら気合を入れる。さながら跳び箱前の新体操選手のよう。

✖︎「肩の力抜いて。リラックスして」
◯「いきます!この前、ムカつくことあってさ、傘をこうやって横に持つ人いるでしょ?あれ凄い迷惑なんですよ」
✖︎「わかるわかる」
◯「この前駅で前歩いてるおじさんがそうやって持っててね、俺の足に傘の先っぽが当たったんだけど謝りもしないんだよ」
✖︎「ムカつくねムカつくね、それで?」
◯「ほんとムカついたからさ、その後すぐ風俗行っちゃった」
✖︎「なんでだよーーーー!」
◯「なんでだよ俺ーーーー!」
✖︎「途中まで間違えてなかったのに」
◯「最後の離陸で失敗しました」
✖︎「ほんとは風俗行ってないんでしょ」
◯「いや行ってる」
✖︎「じゃあいいんだよ」
◯「言ってなかったけど俺、イライラをムラムラで発散するタイプ」
✖︎「知らねえよ」

《完》

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