コント・マウンティング

◯大学の食堂
大学生の田中(20)が食堂でご飯を食べている。そこに同級生の山本(20)が通りかかる。

山本「おお、久しぶり!1人でご飯で食べてるの?」
田中「おお、山本…」
山本「(田中の前に座る)なんか日焼けした?」
田中「旅行で沖縄行ってたんだよ」
山本「沖縄?いいなぁ、楽しそう」
田中「めっちゃ楽しかった」
山本「いいなぁ、ダイビングとかしたの?」田中「したよ。海すげえ綺麗でさ、偶然ウミガメが見れたんだよ」
山本「羨ましいなぁ」
田中「最高だったなぁ」
山本「いいなぁ。俺、一緒に泳いだことあるのイルカしかないなぁ」
田中「え、イルカと泳いだの?」
山本「いや、たまたま野生のイルカが近くに寄ってきてさ。すげえ可愛かったけど、ウミガメは経験ないなぁ」
田中「あそう。沖縄?」
山本「いや、ハワイ。沖縄いいよなぁ、羨ましいよ」
田中「俺はハワイの方が行ってみたいけどな」
山本「そんな良くないよ?親戚が別荘持ってるから毎年行くんだけどさ、やっぱり日本の方が好きだなぁ」
田中「へぇー」
山本「うちの父親がサーフィン好きだからさー、子供の頃から無理矢理ハワイ連れてかれたなー」
田中「(耐えきれず立ち上がって)えぐいって。謙遜してるフリしてえぐいマウント取ってくるんだよなー」
山本「どうした?」
田中「なんでもないよ(席に戻る)」
山本「ねえ、沖縄っぽいの食べた?海ぶどうとかサータアンダギーとか」
田中「あー食べたよ!」
山本「いいなぁ。ハワイのロコモコとリブステーキ食い飽きたわー」
田中「(耐えきれず立ち上がって)えぐいって。海ぶどうにロコモコぶつけてくんのえぐいって」
山本「さっきからブツブツ何言ってんの?」
田中「なんでもないってば。俺予定あるから行くわ(去ろうとする)」
山本「待って!カバン忘れてるよ!(カバンを持って田中の元へ向かう)」
田中「あ、ほんとだ。わりぃ」
山本「おっちょこちょいだなぁ。はいよ(カバンを取ろうとして金のごっつい腕時計が袖から覗く)」
田中「(山本を通り抜けて)えぐいって。高そうな時計が袖から覗く絶妙な腕の角度、えぐいって」
山本「あ、そういえばお前午前中の講義出た?」
田中「出たけど」
山本「今日休んじゃってさ、ノート見せてもらえない?」
田中「まぁ、いいけど。ちゃんと来週までに返せよな(カバンを開いてノートを取り出そうとする)」
山本「あ、待てよ……この後カオリと会うから、そん時借りるわ」
田中「(カバン捨てて)えぐいって。さりげなく仲良い女友達いますよアピール、えぐいって」
山本「お前、カバンの中汚ねぇな」
田中「開けさせといて何言ってんの?(ファスナーが引っかかって中々カバンが閉まらない)あれ…くそ、引っかかってる」
山本「ほら〜、言わんこっちゃない」
田中「(カバン捨てて)えぐいって。言ってなかったくせに急に予言者ぶるの、えぐいって」
山本「あ、そいえば今度合コンやんだよ。他大の女友達が幹事やってくれてさ、結構可愛い子集めてくれてんのよ」
田中「あそう」
山本「見てみ?(スマホで写真を見せて)この4人全員可愛いでしょ?」
田中「…か、可愛いね」
山本「だろ?!男のメンバーは俺が集めてんのよ」
田中「おお、まじか」
山本「田中、どう?」
田中「(カバン捨てて)あついって。誤解しててごめんだわー。えぐいあついじゃん」
山本「おい、どう思うんだよ」
田中「絶対盛り上がるでしょ!」
山本「おお、だよな!よっしゃ、こっちのメンバーも厳選しないとなー」
田中「おう、楽しみにしてるわ!」
山本「OK!合コンのいい土産話持ってきてやるよ」
田中「え?」
山本「じゃあまたな(去る)」
田中「えぐいってーー!」

《完》

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