コント・天狗バイト

◯下駄に、葉っぱのうちわを持った赤い人。鼻が長い。翼が生えてる。

男「あのー、」
赤い人「あ、はい。」
男「ちょっと道をお聞きしたいんですけど、地元の人ですか?」
赤い人「あー、はい。地元です。」
男「あ、よかった。あの、高尾山に行きたいんですけど、こっちで合ってますかね。」
赤い人「あー、逆ですね。あっちです。」
男「あ、そうなんですか。あっちですか。」
赤い人「ここからだとちょっと遠いですから、バスに乗って行った方がいいですよ。すぐそこにバス停ありますから。」
男「わかりました。ありがとうございます。助かりました。」
赤い人「いえいえ。山登りですか?」
男「あ、ちょっと仕事で。」
赤い人「仕事ですか。」
男「はい。天狗を探しに。」
赤い人「天狗ですか。そんなの本当にいるんですかね。」
男「最近目撃者が多いんですよ。」
赤い人「へぇー。」
男「なんか、下駄を履いてて、葉っぱのうちわを持ってて、全身真っ赤で翼が生えてて、鼻が高いらしいです。あれ?そういえば、似てますね…」
赤い人「あ、よく言われるんですけど違いますよ。」
男「ですよね。まさかこんな市街地にいませんよね。」
赤い人「私如きが天狗なんて、おこがましいですよ。」
男「あ、全然天狗じゃないですね。すごい謙虚。」
赤い人「どっちかっていうと山よりも海派です。すいません。」
男「仲良くなれそうです。よかったらLINE交換しませんか。」
赤い人「ごめんなさい。じゃあこれで。」

◯赤い人去る。

男「行っちゃった。うわ、空飛んだ!凄いな、あの人。あ、電線に引っかかって落ちた!痛そうだなぁ。あ、こっち来る。」

◯赤い人戻ってくる。

男「大丈夫ですか。」
赤い人「あんまり大丈夫じゃないんですけど、まいったなあ。今バイト中なんだけどなあ。」
男「何のバイトですか。」
赤い人「鳩に餌をやるバイトです。」
男「そんなに楽なバイトがあるんですか。」
赤い人「でも鳩が一定数集まったら、急に走って鳩を脅かさなきゃいけないんです。」
男「楽な上に楽しそうなバイトですね。よかったら代わりにやりましょうか。」
赤い人「いいんですか。給料は全額もらって頂いて結構なんでお願いします。じゃあ私と同じ制服を着てもらうので、一旦事務所行きましょう。」
男「それユニホームだったんですね。」
赤い人「もちろん。じゃなきゃこんな格好しませんよ。」
男「でもさっき空飛んでましたよね。」
赤い人「空ぐらい誰でも飛べますよ。ピーターパンだって飛ぶでしょ。」
男「そうゆうもんですか。」
赤い人「そうゆうもんです。行きましょう。」

◯2人、去る。
◯しばらくして男、赤い男と同じ格好して戻ってくる。
◯赤い男は私服に戻っている。

元赤い男「じゃあ、あとは頼みましたよ。」
男「はい。あ、ちなみに鳩を脅かして、そのあとはどうすればいいんですか。」
元赤い男「簡単ですよ。捕まえて、食べるんですよ。」
男「ん。」
元赤い男「捕まえて、食べるんです。」
男「ああ、捕まえて、食べるんですか。」
元赤い男「やったー!自由だー!人間に戻れたー!」
男「えっと、これって、本当にただのバイトですか。」
元赤い男「ちゃんと成り切らないと駄目ですよ。そして、人間達から逃げ延びてくださいね。57代目、天狗さん」
男「うわ、なんかまずいことになった気がする。」
元赤い男「ほら、早速刺客が来ましたよ。逃げてください。」

《完》

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