自作ミニ小説

書いた絵を破り捨てた。放り投げた。
それはまるで雪のようだった。

ああ、これで何度目だろうか。
いつも、右手は言うことを聞かない。

同じことを繰り返すうちに、いつしか慣れを感じる自分がいる。

それで、いいのだろうか。いいのだろうよ。
そうと信じる他、そこに希望は無い。

捨てた紙を集め、枕にして、頭をかき乱した後に横になった。

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朝、起き上がると髪に紙がまとわりついていた。
朝からなんと鬱憤を溜めさせてくることよ。髪の紙を振りほどくように、また左手で頭を掻きむしった。

朝飯などいらぬ。いや、そもそもそこに飯はない。
妻とは離縁し、有り金も底を尽きた。

だから、眼前に広がる草野畑から野草をむしり、腹の足しにする他ないのだ。

いつからこのような体たらくに陥ったのか。
いや、これもまた仕方ないことかもしれぬ。

またいつものように、いや、今朝の鬱憤を草にぶつけるように、眼前の野草を引きちぎった。

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まずい、まずい。
なんて野草はまずいのだ。

そんなこと、今に始まったことではない。
これまでも、そしてこれからも、この劇味に耐えねばならない。

まずい、まずい。
とてもまずい。

だが、いくらまずかろうとまずかろうと、手を止めることは許されない。
止めることはできるのだが、止めることができない。

そこにいる、誰でもいい。
どうか私の手を止めてくれ。

私の手よ、なぜ動く。

お前の手は、紙を破き、頭を掻きむしり、不味い草を引きちぎるだけに生まれたのか。

そうか、そうなのか。
なれば仕方ない。

仕方のないことだ。

もう誰にも止められぬ。
私の手は動くのだ。止められぬのだ。

ああ、また目の前に紙がある。
もうどうしようもない。他にすべきこともない。

絵を、描くしかない。

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