オフ会の前後左右。

今まで、誰かに好かれているのではないかと思うたびに、失敗してきた。

嫌われるようなことを言ってしまったり、
私の全てを受け止めてもらおうとし、精神的な重荷を相手に背負わせようとしたり。

何をどうするのが正しいのか分からなかった。
人に好かれるために努力をしていたつもりが、全て報われなかった。

今ならわかる。
他人に好かれようとしての行為は、相手の重荷になっていたのだ。

「こんなに優しくしたから、貢いだから、君のこと考えてあげたから、好きになってくれるよね?」

私の脳内はそれ一色だった。
そりゃ誰も好きにならんだろう。面倒臭い人間は誰だって嫌だ。

それに気づかされ、どうにか修正し、「みんと」として配信を始めた。

昔の私と似たような「優しくするから好いて?」という損得勘定の見える人間は全てNGにした。
精神的に不安定で、配信者やリスナーを頼ろうとする人間も。

この種の人間はこちらを使うだけ使って、こなくなるのも知っている。

インターネットでの過度ないじりをする人間や、自分の正義を勝手に押し付けてくる人間もNGにした。

兎に角、私は私らしくいられる相手だけをリスナーとして受け入れた。リスナーが配信者を選ぶ権利があるように、私たち配信者も選ぶ権利がある。

そうして、少なくとも私の目から見て、最高で最強なリスナー達が集まった。

居心地が死ぬほど良くなった私の枠。

人生で初めて、複数人で仲良くなるという経験。

吐きそうなくらい怖くなった。
もしも、もしもこの中の誰かに嫌われたらどうしよう。
本当は全員に嫌われていたらどうしよう。
オフ会をして、実際に私を見て、なにか私が思い付かない理由で私を嫌ったらどうしよう。

推し、と言ってくれた人が、離れていったらどうしよう。

この全ての不安を、出来るだけ出さないようにつとめた。
言いようのない、意味不明な消極的な自分の態度が気色悪くて仕方なかった。

「オフ会当日、たくさん楽しませてあげられたらいい。」
それだけに集中した。

そうして迎えたオフ会。
あっという間に全て終わった。

なんてことだ。私が楽しんでしまった。

心の底から後悔した。
楽しませるどころか、私が楽しんでしまったのだ。

みんな優しかった。
配信の時と変わらず、私が口を開けば聞いてくれた。
配信上の暗黙のルール、「まず枠主たる私の話を聞け。」が目の前で守られていた。三次元のみんなでもこんな風に守られるのかと放心しそうになった。

なんてことだ。
こんなはずじゃなかった。

最強で最高のリスナーは皆、「みんと」が「みんと」でいることを許してくれた。

それは、リスナーが私を盲信しているわけではなく、個人個人の意思で私を許してくれているのだ。

楽しんでしまった!!こんなはずじゃなかった!!

オフ会解散後、私はここ一年で一番大きなメンブレを起こした。
起こしたから、寝た。たくさん寝た。

寝て起きて、気づいてしまった。

昨夜のメンブレは幸せへの恐怖だったのだと。
これが幸せか、と!!!!

今後は、恐怖を見たら幸せへの第一歩だと思って頑張れそうである。

来てくれたみんとリスナー、来られなかったみんとリスナー、
全員、ありがとう。

私に本当の幸せを教えてくれたのは間違いなく君達だ。
今後、私と君たちがずっと仲良しでいられる保証は互いにない。
明日、私と君たちが違う方向に進んでいく可能性もある。
しかし、毎日新しい気持ちで、生命と運命の許す限り、ずっと一緒にいよう。

またね。









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