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落としたパンツが戻って来た話

あれは確か中学の修学旅行のとき。

大浴場で入浴を終えて部屋に戻った。脱いだものは特に袋とかには入れずに手に持って帰ってきた。

友達たちと部屋に敷かれた布団の上で、消灯までだらだらしようか。という時間。

突然ドアがコンコンとなった。

開けてみると見知らぬ女の子が僕のパンツを持って立っていた。

は?え?は!どゆこと???

女の子の方もおそるおそるパンツを差し出して、おそるおそる「パンツ落としませんでした?」と言ってきた。

僕は何も言えないまま突っ立って、顔が熱くなるのが明らかにわかって、差し出されたパンツをおそるおそる受け取った。

ありがとうという言葉をボソボソっと言って扉を閉めてしまった。

一部始終を見ていた友達たちになにかからかわれたが、もうそんなのどうでもよくて焦りが半端なかった。

その女の子は多分、同じホテルに泊まってたどこか別の中学の子で後ろにも数人いたので、グループで歩いてたに違いない。

で、その前を通り過ぎたアホな僕が何かの拍子で使用済パンツを落として、女の子たちは審議の結果、パンツを届けてくれたんだと思う。

持ってきた女の子が自発的にその親切心から届けてくれたのか、ジャン負けで嫌々だけど届けてくれたのかわからないが、そんなのどっちでもよくて。

その勇気にとてつもなく感謝している。今でも。

だって、誰ともわからない男の使用済パンツ届けてくれる天使のような人ほかにいる?


本当にアホなのは、ちゃんとお礼もできない僕と、名前も学校も聞けなかった僕だ。

もっと気持ちよくお礼出来ていれば、女の子も報われたかもしれないし、連絡先がわかれば後日ちゃんとお礼できただろうに…

今その子と話せるなら、お高いコース料理でも奢るし、何か活動してるなら間違いなくファンになる。無条件でなんでもするかもしれない。

それくらい自分の中で衝撃的な出来事だった。

羞恥や怠惰より、勇気や親切が勝つところをまじまじと見せつけてくれた彼女が元気でいてくれたらいいな。


それからはパンツを落とすことはもうなくなった。


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