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掛け算 順序問題 解明します。

掛け算の順序問題というものがあります。

これは、5つのベンチに2人ずつ座るときに何人座れるかなどの問題で、5✕2とした場合に正解か否かというような形で議論されます。
教科書では、1つ分✕いくつ文=全体の量というような言葉の式が紹介されているため、この順序でなければならないと言われて不正解となることが多いようです。

なんと、これ約50年間くらい論争になってるみたいです。私なりに解明しましたので以下にまとめます。

掛け算の順序問題の論争のポイントは、「順序を定めること」と、「順序はどちらでもいいということ」で意見が真っ二つに分かれていることです。

「順序を定めること」とは、1つ分✕いくつ分という決まりが大切で、文章の意味を理解することに役立つとされます。「順序はどちらでもいい」という意見では、交換法則が成立するし、そもそも掛け算はどちらでかけてもいいものとされます。現在は、どちらかというと後者が優勢であります。

この問題は、掛け算には本来2種類あるということに気づけば一瞬で説明がつく

と思います。どういうことかと言いますと、

割り算との関係で見ていけば一目瞭然です。

割り算には、

全体÷1つ分=いくつ分となる包含除
全体÷いくつ分=1つ分となる等分除

があります。1つ分で割ることと、いくつ分で割ることでは、その計算における頭の中での手続きが全く異なるということになります。

ただ、全体が全体の人数で、1つ分がベンチに座れる人数であり、いくつ分がベンチの台数という話では、出来事自体は全く同じシチュエーションを扱うことができます。単にその事象を捉える際の見方が異なるというだけです。

ちなみに包含除は、全体10の中に1つ分の5がいくつ入るかと考えるので、具体的です。等分除は、全体10を5等分したら1つ分はいくらかと考えるので、抽象的です。

この等分除ですが、実は難解で子どもには納得しにくいです。この等分除、本質は等分することではなく、あくまで2つの量の相関関係なのです。

つまり、10を5等分するのではなく、10を5と見たときに1に当たる数が2なのです。線分図で表わせば簡単ですが、これを小学生に教えないのはなぜでしょう。ということで、包含除も、10のうちの2を1と見たときに、10に当たる数が5になるというように表わせます。

では、掛け算についてです。式を逆にして掛け算で表してみます。

包含除は、いくつ分✕1つ分=全体
等分除は、1つ分✕いくつ分=全体

明らかに2つ存在します。
思えば、足し算の意味には合併と増加の2つがあり、引き算の意味にも求残と求差の2つがあります。
そして割り算にも2つの意味があるにも関わらず、掛け算に意味が1つっておかしいですよね。

いくつ分✕1つ分=全体って身の周りに明らかに存在しています。

たとえば、10、20。この表記は1つの10、2つの10という意味です。10が1つ、10が2つと理解するのはやや困難です。

続いて単位です。kmではk(キロ)は1000倍を表しています。つまり1000倍(1000個)の1mです。「1kmの1の中には、実は1000個の1mがありますよ。」と伝えているのです。

この2つ、算数・数学でずっとついて回る基本ですよね。それが1つ分✕いくつ分と順序を固定することで、理解しづらくなるのは確かです。

そして、ベンチの問題の場合は、ベンチが先にあるので、頭の中では5つの2が表れてくるのが自然です。よって、いくつ分✕1つ分が最も正しいと思われます。

子どもが1つのベンチに2人ずつ座るとき、ベンチが5台あった場合ならば、1つ分✕いくつ分でしょう。

ちなみにいくつ分✕1つ分は内包量を求めるため、手続きが分かりづらく、割り算の具体である包含除の逆の手順となり、抽象的です。

そして、1つ分✕いくつ分は外延量を求めるため、手続きは分かりやすく、割り算の抽象である等分除の逆の手順となり、具体的です。

今回注目しましたいくつ分✕1つ分の掛け算は、言語学的な観点から必然的ですが、ヨーロッパなどでは主流です。

さらに、日本においてももしかしたらいくつ分✕1つ分が本来の、「掛け算」であったかもしれません。なぜなら、掛けるとは、何かに引っ掛けるという意味だからです。

そして日本語では、5✕2を「5に2を掛ける」といいます。ということは、5の場に対して2を引っ掛けていくことです。これは明らかにいくつ分✕1つ分の考え方です。まさに、これが「掛ける計算」です。
一方、1つ分✕いくつ分は、掛けるというより、同数累加で、数をいくつか乗せていく形ですので、「乗法」と言えます。

以上のことから、順序問題はどちらが正しいかなどではなく、割り算と同様に掛け算にも2種類の全く異なる見方が存在することを理解しさえすれば、問題場面に応じて「乗法」(1つ分✕いくつ分)となるか、「掛け算」(いくつ分✕1つ分)となるかが自ずと決まってくるということです。

個人的には全体の割合(いくつ分)が先に見えていて、その1つ1つの内部に実はいくつかの数(1つ分)が内包していると考える「掛け算」の概念が好きです。人間もきっと同じで、実は見た目には分からないものすごい可能性を秘めていると思うとわくわくしてくるからです。

読んでいただきありがとうございます。

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