わたしは 似ている

はじめてあった人に
だれかに「よく似ている」と言われる
その方の友人に
その方の学校時代の先生に
「よくある顔だから」と言葉を返す
 
アイヌの女性のユーカラを聞きにいくと
そのアイヌの方にわたしが「そっくり」と友人が言った
そうかわたしにはアイヌの血もはいっていたのか
 
前にテレビで中国雲南省の映像が流れたとき
店屋の前に座るおじいさんは、山形の死んだ祖父だった
「おじいさん、そこで生きていたんだね」
とつぶやいた
 
北だけではない
玄界灘にのぞむ父の故郷
器が好きなわたしは
秀吉の時代、そのもっと昔に朝鮮から
渡ってきた陶工が祖先ではないだろうか
と夢想してみる
 
20代の頃ケニアへ行ったとき
スーパーマーケットで
「ベトナム人か?」と聞かれた
ベトナムの難民と思ったようだ
 
わたしの中にアジアの顔が寄せ集っている
アジアのだれかに似ている
アジアから流れ結合し分散し
わたしになる
 
アジアだけではないかも
DNAを調べれば
自分の祖先がわかるらしい
 
人類発祥の地アフリカを走り
黒海あたりで羊の群れを追いかけていたかもしれない
 
わたしは だれかに似ている
だれかも わたしに似ている
 
 
 
 ※2018年4月23日 岩手日報掲載

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