見出し画像

STORY(ストーリー)

いつからだろう。毎年訪れるニューヨークでハイラインとSTORYはセットのように思えていた。空中公園ハイラインを歩いてミートパッキングディストリクトのホイットニー美術館まで散歩すること、そして、今回はSTORYがどんなテーマで展開しているのか、どちらも楽しい習慣になっていた。そんなクセになるコンセプトストアのベンチマークブランド、それが、STORY(ストーリー)。

2011年12月ニューヨーク、ハイラインの目の前、チェルシーにコンセプトストア「STORY」は誕生した。自分が初めて行ったのが2012年。創業者は、Rachel Shechtman(レイチェル・シェクマン)という女性で、2018年5月、米国百貨店Macy’s (メイシーズ)の買収に伴い、Macy’s 本体のbrand experience officer(ブランドエクスペリエンスオフィサー)に就任している。STORYは、6週間から8週間のペースで「LOVE」、「COLOR」などテーマを決め、ファッション雑誌の特集のようにマーチャンダイジングしていくスペシャリティストアだ。最初から雑誌のようなところはそのテーマごとにスポンサーが存在していること=コンセプトストアでありメディアとしてポジショニングできたことが当初から注目されてきた理由である。

画像6

2019年4月にMacy‘s NY本店の中2階が新生STORYとしてオープンしたことにより、残念ながらチェルシーの店舗は閉店、STORYに行きたい顧客は、戦略的には理解できるもののMacy‘sに行くしかない状況になってしまった。同時期にβ8ta(ベータ)への出資並びにインストア展開を開始しているメーシーズにとってSTORYのような新たなコンテンツ・マーチャンダイジングとビジネスモデル開発、そして、それを生み出したFounderのレイチェルは救世主だったのかもしれない。店舗のアイデンティティが売上から体験=エンゲージメントに変わろうとしている最中、体験型の代表のSTORYと発見型の代表のβ8taを戦略に組み込んだところまでは、Macy’sの戦略は理解できるものであった。(コロナによりニューヨークという街のあり様が変わる今後は正直まだわからない)。

画像7

画像8

正直自分が好きだったSTORYは、チェルシーにあった路面店の「STORY」でMacy‘sの「それ」ではない。チェルシーにあった頃のSTORYは何が斬新で、どこにその価値があったのだろうか?そもそも何故メディアとしてスポンサーが存在できたのだろうか?

スポンサーになる企業、商品をマーチャンダイジングしてもらうブランドは、STORYというお店に、STORYのショップスタッフに、その企業の商品、サービスの、提供するブランドの「STORY」を語ってもらうのである。企業やブランドや商品のアンバサダーであり伝道者であることに「STORY」の価値があったのだと思う。

画像5

画像6

今考えるとECで売るためのショールーミングでもなく、OMO戦略でもなく、むしろ『人』が「店舗」でお客様にその価値を伝えることの大切さと最大価値を新たなストラクチャーで実現したのが「STORY」なのだと思う。

最も懐かしいのはクリスマス準備の11月から12月ホリディシーズンのSTORY。ニューヨーク自体が世界でも有数のクリスマス体感シティだと思っているが、ここにしかないONLY1のクリスマスグッズを探すには男性の僕でも「ワクワクドキドキ」する商品が最高に可愛く楽しくディスプレイされていたことを思い出した。

STORYの変遷から学ぶべきこと。

構造やビジネスモデルだけをフィーチャーしても本質はそこにあったのではないということ。個人のエディトリアルとセンスの上にSTORYの空気感と価値が成立していたことを理解すべきなのだと感じている。

いつかまたチェルシーに「STORY」が戻ってくることを願って。

画像8

(コスメブランドMACとのコラボレーションによる体験型カスタマイズ)

画像9

(リーバイスとのコラボレーション)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?