野田秀樹氏や平田オリザ氏らの発言と炎上に関する感想 ②

前回の記事の続きを書かせていただく。もしまだ見ていない方がいれば、こちらを見ていただければありがたい。

【追記】本稿中にて平田オリザ氏のTwitterでの発言が、一時的に埋め込みできなくなっているため、リンクが貼られているだけとなっている。
お手数をおかけして大変申し訳ないが、リンクから飛んで閲覧していただきたい。

前回は野田秀樹氏の発言について私なりに(稚拙な文ではあるが)書かせていただいた。今回は、平田オリザ氏の発言について触れさせていただく。

まず最初に話題となったのは、こちらの記事だろう。

この記事での発言が「製造業を何だと思っているんだ!」と怒りを呼んだ。

 私も本職が製造業ではないので詳しいわけではないが、それでも「製造ラインには限界があり、いくらでも増産できるものではない」「一度生産ラインを停止、縮小してしまえば、それを元通り稼働させるだけでも大変な苦労がある」「一度止まった需要・供給をもとに回復させるだけでも営業の人々は必死に走り回らねばならない」「増産すれば取り返せるというほど甘くはない」ということを現場の人から聞いてきた。
 平田氏が「スイッチ一つで自由自在にポンポコ生産出来て簡単!」とまではさすがに考えていないと信じたいが、それでも「製造業への無理解」があることは否めないだろう。

「喧嘩を売った」と見なされているのは製造業だけではない。
・漫画家

https://twitter.com/ORIZA_ERST_CF/status/1258473381491429377
 過去の印税でしのげる漫画家は全体のどれだけいるのだろうか。全員が尾田栄一郎氏や鳥山明氏のように稼いでいるわけではないのである。

・研究者
https://twitter.com/ORIZA_ERST_CF/status/1258541992738344960

 これに関してはわかりづらいかもしれない。研究者のだす「科学研究費の申請書」は「これまでになかった○○という要素があります」「これまでの物とは違って××なのでさらによりよくなっています」「だからこそ、人々の役に立つのです、そのための研究費をください」というもので、「同様の業界、同様の過去の研究と比べて自分の研究の有用性を主張」している。間違っても「現在の他業種他業界」と比べてはいない。

・中小企業
https://twitter.com/ORIZA_ERST_CF/status/1258472352762871808

 「営業を停止すれば諸経費が掛からなくなる」というのであれば、それは演劇も同じではないだろうか。家賃やその他固定費という概念はないのだろうか。

簡単な紹介だけで長々となってしまったため、ここで私の考えのまとめに入る。

 平田オリザ氏の発言が炎上したのは、間違いなく【実情を知りもしない他業界を引き合いに出して演劇業界の苦境を訴えたから】であると考える。まだ実情を知ったうえで述べていればいい。ところが氏はよく知りもせず決めつけ、現場で働く人々から異なる点を指摘されている。だからこそ、引き合いに出された業界で働いている人々は「何も知らないくせにふざけるな!」と憤るのだ。
 言っておくが、私は(芸術関係の人間ではないが)演劇をはじめとする芸術が滅んでいいとは思っていない。程度の差はあれ、それで飯を食っている人がいる以上、なんらかの補助はあってしかるべきだと考えている。

 そのために「演劇業界は○○という状況で、××に困っています。だから、行政は△△という支援をください」という声はもちろんあげてよいと思っているし、そのような声に関しては「この現状でたかが芸術が助けを求めるんじゃねぇ!」と潰す行為は行うべきではないと考える。

 だが、この際に他業界を引き合いに出して「この業界はしのげるから(そこまで困ってないから)いいよね、でも演劇は困っているんです!」という必要性がどこにあるのだろうか?もし「他業界を引き合いに出して『この業界そこまで困ってないでしょ』と名指しして演劇は救わねばならない」とお考えの方がいたら、業界に詳しくない私にもわかるようコメント等でご教示いただきたい。

 そして最後に。野田氏や平田氏の発言により、業界全体が非難の的となり「芸術などいらぬ」と言われてしまっている状況はよろしくないと考えているし、一部の声の大きい人間だけで全体をそのような業界だとするべきではないとも考えている。
 しかし、残念ながら、業界を代表するような大物の発言である以上、そのようにみられてしまっていても仕方がないという側面があることも事実だ。これに対しては、「芸術業界はこのような考えの人ばかりではない」「私はこの考え(この言い方)には賛同しない」ということを、反対派の目に少しでも留まるようにするしかないだろうと私は感じている。
 柔軟さなどまるでなく、業界についてもよく知らない私では「有志で『この発言は業界全体の意志ではない』『この発言には賛同しかねる』という声明を出す」等の考えしか思い浮かばないが、何らかの「アクションを起こす」ことは必要ではないだろうか。

 非常に長い文章となってしまったことをお詫びすると同時に、最後まで読んでくださった方々に感謝申し上げる。肯定意見,否定意見、業界についての基礎知識などあれば、遠慮なくコメントしていただければ幸いである。
 仮にそれが「芸術は他の業界より高尚な素晴らしい上位存在であり優先されてしかるべきなのに何を言っているのだ貴様は!」という意見であろうとも、それはそれで一つの意見であるので(賛同はしないが)受け入れることをお約束する。









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