歴史、やっぱし、ぴったし
自分は先人の作ってきた道の上に立っている。
大げさな言い方になっちゃうけど、最近気づかされることが多い。40歳を超えたあたりから、
「あぁ、これが先輩たちが言ってたなぁ」
という現象が如実に増えだしたのだ。いわゆる加齢によって体験するもろもろ。
・老眼になる
・太っていく
・白髪が増える
・加齢臭がするようになる
・今までかかったことない病気になる
などなど。上の世代の先輩や自分の親が言っていた通り自分も同じ道をたどっていることに気づかされる。
数年前のある日突然、食事のときに口元にもってきた茶碗の白米がぼんやりしちゃってお餅みたいに見えた。衝撃的だった。あの日以来、老眼はみるみる進み、今やiPhoneを近距離で見ようとすると一生文字が読めることはない。近くを見る時にはかけているメガネをおでこに乗せる典型的なおっさんスタイルをせねばならない。
昔と同じ食事量、むしろ量自体は減っているのに増えていく体重と体脂肪。白髪を抜くのも半分趣味になっているくらい。
先日会社で「・・・ん?臭いぞ。誰だこんなソーシャルディスタンスの世の中で、周りに届くくらい加齢臭を漂わせてる奴は?まったくもう!」と辺りを見回しても本当に誰もおらず、まさかと思い自分のTシャツの臭いを嗅いだら紛れもなく犯人は自分だった。シュウんとした。
どのエピソードも一度は誰かから聞いたことのあるような内容だ。それがドンズバで僕にもやってきたのだ。びっくりしつつ、この話自体も今まで何度も聞いてきた話のひとつでもある。
元々性格が天邪鬼だから、セオリーみたいなものにハマるとそこから逃げたくなる衝動にかられたりするけれど、気がつけばその性格自体が歳をとっていわゆる丸くなったのかパワーが無くなったのか
「ま、そうだよな。」
と素直に受け入れている自分がいる。身の回りで、ギラギラしている人だったり、マウントを取ることで優越感を感じているだろうなって人だったり、自己肯定感に溢れすぎてやたら周りを否定している人を見るたびに
「なるほどー」「確かにー」「すごいっすねー」
と言いながらさらさらーっと受け流すようになってきている。真正面からぶつかってその人のエネルギーを食らっちゃうのがしんどいのだ。
そういう自分も昔は絶対に上記のカテゴリーに当てはまるタイプの人間だったはず。20代の頃にメーカーの偉い人と打ち合わせる機会があって
「増沢くんと一緒に仕事するのが、面倒臭いんだよ」
と面と向かって言われても「いや、でも僕間違ってませんから!」とイキがっていた。未熟な自分を強気に出る事でごまかしていたのだ。当然その人と一緒に仕事することはなかった。きっと当時の僕がもうすこしキャパが大きければあの人たちと楽しく音楽やれていたかもしれないと思うと相手の人たちには申し訳ない気持ちにもなるけど、もはや後悔する元気も持ち合わせてないのかもしれない。
だから逆の立場になった今(相手の年齢はあまり関係なく、オラオラ系の人に対してってことだけど)、相手の気持ちもなんとなく理解できるし、もっと言うと揉めるのが面倒だから、うまい懐柔策を考え出すのに尽力している。むしろ僕が一人で頑張ればどうにかなることは厭わない。皆んなが楽しくやれてないのが気持ち悪く感じちゃうのだ。
こう自分の書いていることに、本当に歳を取ったんだなぁとしみじみ思う。だってここまでの内容ひっくるめて先輩からまるっきり同じ話をされた記憶があるんですもの。
「歳をとるとマスにもわかるようになるさ」
脳裏にちょっとくたびれた顔の先輩の苦笑いが浮かぶ。
さらに健康面でもこれまた。もう20年くらい腰痛に悩まされているのもあって、毎日ストレッチをするようにしている。腰痛ってこれまた同じ世代の人たちにとって共通の悩みだから、腰痛の話だったりストレッチの話で盛り上がることもしばしばある。(あぁ、この話も聞いていた話だな・・・。)
ストレッチの面白いところは、何でかわからないけれどそれぞれ皆オリジナルのストレッチ法を持っているということだ。(コロナに対する正解を誰も持っていないから、ああだこうだと皆が主張する昨今の世の中に近い感覚なのかもしれない。)文章で書くのは難しいんだけど、
「足をこういう風に伸ばすとといい。」
「背筋を鍛えた方がいいから、こうするべき。」
「脇腹のやり方ひとつで腰痛は一瞬で消える」
みたいな。僕も今まで整体だったり、怪しげなマンションの一室にある接骨院みたいなのに行った経験があるから、こうしろああしろみたいなレクチャーを受けて自分なりに効果があるオリジナルのやり方がある。そしていろんな人たちの話を聞いてそれをミックスしたりして日々ストレッチ法の最新版をアップデートしている。今僕がやっている最新のストレッチ法にはちょっと自信があるので、もし腰痛持ちの方は僕に直接あった時にぜひ聞いてもらいたい。
思えばストレッチに人生の時間をこんなに費やすようになるとは思ってもみなかった。暇さえあればストレッチ。たまに広いスペースがあると床に転がってやっていたりするので、知らない人から怪しまれたりもするくらい。そしてどんだけ頑張っていても必ず腰痛は定期的にやってくる。このテキストを書いている今も腰痛で苦しんでる。(自信があるストレッチしてても、必ずやってくるのが腰痛だ。)
そして、腰痛をはじめ健康を害し始めている年代に入った僕、先人の歩んできた道の上に僕も生きているのだから、この先に間違いなく待ち構えているのが、
「癌にかかっちゃう」
ということだ。親族で癌以外で亡くなった人が思い当たらないくらい。「癌は遺伝するよ」みたいなことを言われるたびに、というか言われなくてもおそらく僕はいつしか癌になるんだろうなと自覚している。数年前に胃に大量のポリープができちゃって「毎年胃カメラを飲んで気をつけるように」とお医者さんから警告されているし。
今まで書いてきたように、先輩の言ってきたことを体現するたびに「来たなー」と思っている僕は、きっと癌になっても「そっかー来たなー」ってそこまで落ち込まず受け入れられるような気もしている。
むしろ嫌なのは癌になる前に事故とかで死んじゃうことなのかもしれない。ましてや自殺とかね。だって、先人の切り開いてきた道の上で「これも来るかー。ぴったり当てはまってるー」みたいな経験をして生きていくのも案外楽しいから。
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