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広島よいぞ

広島バスセンターから半径1キロ以内しかまともに歩いたことのない私が今、広島という街を語ろうとしている。

この極端に狭い範囲を闊歩してわかったことは、広島には、新天地のように雑然とした街並みがある一方、数百メートル歩けばたどり着く元安川のようにのどかな風景も存在しているということだ。

静けさと雑踏の併存が広島という街の本質を示しているのかもしれないと、無駄に歩き回った結果、私の胸中にて確信したのであった。

 普段歩かない街のアスファルトが私の足裏に痺れを与えるので、唐揚げ専門店にて、しばし休息を取ることにした。

 唐揚げとビール。衣と肉汁から溢れ出る油をビールによって洗い流すことは、人類にとって、普遍的慣行といっても過言ではなかろう。

「今日は出張ですか?」

「いえ、就活です」

これが店員さんとのファーストコミュニケーションであった。小生、21歳。

 ただ人生2周目の私は、知らない街を巡る時は、何か観光名所に行ったり、知らないものを見たり、食べたりするのが定石とみなして、奔走することはない。観光名所に行くより、知らない街の住人と会話する方が重要だと知っているからだ。土産話は本物の土産以上に脳内に焼き付き、人生の土壌を豊かに耕してくれる。

私を出張中のサラリーマンと勘違いした店員さんとの会話はとても愉快なものだった。酒で酔ってしまったが、これだけは言える。広島の人は良い人で溢れている。多分。良い街だ。うん。

#エッセイ


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