見出し画像

わかりやすくすること。わかりにくくすること。

金平堂のブランディングについて綴りたいと思います。
すでに、WEBメディア「paperC」で取材いただき
簡潔にプロセスをまとめていただいているので
ここでは異なる視点でまとめてみます。
※先に「paperC」をご覧いただければより分かりやすいかと思います

このパッケージを初めてSNSで紹介した時、
大変反響があり、たくさんの方からリプライをいただきました。
その中に「プロセスを知りたい」というコメントがいくつかあり、
ニーズがあればいつか書いてみたいな、と自身でもぼんやり思ってました。

それから、メディアでの紹介が増えていき
本日はテレビで放映されました。
取材の際、やはり聞かれるのがブランディングのプロセスで、
そもそも金平堂を知っていただいたきっかけが
ほとんどがパッケージのデザインでした。

この状況やパッケージを、作者ながら客観的に考察すると
「わかりやすさ」と「わかりにくさ」の要素が混在していて、
そのバランスが興味をかき立てているのではないかと感じています。
そんな視点でこのブランディングを語ってみます。

画像1


まず、「わかりやすくする」視覚化の試みは大きくは以下の4点:
1)金平糖に新鮮さを与えること
2)メイドイン大阪
3)少量のサイズ感
4)価格設定


1) 金平糖に新鮮さを与えること

金平糖は450年前から日本で食されてきた菓子。
日本で知らない人がいないほど親しまれていますが
市場で販売されているものは、パッケージデザインは
誰をターゲットにしているのか、何を目的かが
定まっていないものばかりでした。
陳列棚でも、菓子の1コンテンツとして一応置かれている状態。
棚の隅っこに追いやられている姿を見ていて悲しくなるものばかり。
これこそメジャーなゆえの怠慢だと感じました。
ここをまず明解にするべく、ターゲットは
金平糖を菓子としてまだ新鮮に映るであろう若年層の女性にしました。
コアターゲットが設定されたことで新鮮さを演出するために
商品開発では自然素材を使い、パッケージでは感度の高いデザイン、
カラー設計、印刷技法を選んでいきました。

2) メイドイン大阪

コロナ禍前の観光産業はインバウンドによる日本ブームでしたが
大阪のお土産といえば粉もの系が未だに中心で
「大阪といえばこれ!」というものがなかなかありません。
日本で金平糖を製造しているのは10社に満たない中で
金平堂の製造元・佐々木製菓は1929年創業の老舗であり
そのポテンシャルを活かして
新たな大阪土産の選択肢として名乗りを上げました。
蔦屋書店や百貨店のポップアップが中心でしたが
最近では著名ホテルチェーンのホテルでの扱いも決まり
少しづつ扱いが増えてきています。

画像2

3) 少量のサイズ感

メジャーなゆえの市場の金平糖の怠慢はサイズにも問題がありました。
昨今の糖質オフブームに全く合わない量は、目的を完全に失っています。
金平堂では、ちょっとお試しに、または食べきれるサイズとして
ポケットにしのばせるサイズ感にしました。

4) 価格設定

少量設定、ターゲット設定と連動し、お手頃価格を目指しました。
また、市場の商品に対してメーカーだからこそ分かる価格設定に
疑問があり、金平堂では分相応の価格設定にしています。

画像3


わかりにくい視覚化

グラフィックデザインによる視覚化はわかりやすくすることが基本ですが
私は場合によって、わかりにくさも必要だと思っています。
わかりにくさにこそブランドの個性が出ると思っており
金平堂では「女性とライオン」の存在は大きくその役割を担っています。

『女性が猛獣に乗っているのに、まったりしている』様子は
金平堂・責任開発者の「金平糖で女性にほっこりしてほしい」という
思いから設計しています。
ライオンは女性の敵としての象徴であり、その上で乗り切っている
女性の組み合わせで、くすっとするタッチで描いています。
金平糖と全く交えないモチーフが、前述の新鮮さにもつながっていきます。

画像4

細かなデザインのディテールとして
ロゴタイプは、佐々木製菓の創業当時の流行りであった
アールヌーボを取り入れて背景である歴史を演出しており
懐かしさは若年層から見えれば新しく、
既視感のある世代には安心感につながります。
ライオンも創業当時の時代で、商品のトップ感、王様感を出すために
よく使用されていたモチーフでもあります。
印刷技法の活版印刷は、紙表面が凸凹のあるさわり心地です。
デジタル世代には新しく、ご存知な方には懐かしさを与えているようで
老若男女に購入いただいております。
(特に男性からの支持が思った以上に多いのは正直驚きでした!)

一見わかりにくいアウトプットですが、
担当者の思いや背景をベースに視覚化しており、
様々な情報を交差させ編集し、
それがブランドの個性に繋がったと感じています。

画像5


関西ローカルではありますが、テレビでの紹介が
来週か再来週にも続きます。
テレビは、広報活動より注目効果が大きく、
デザインによってこのようなきっかけが増えることは
うれしい限りです。



金平堂 http://konpeidou.jp/
佐々木製菓 http://www.sasakiseika.co.jp/
WEBメディア「paperC」https://paperc.info/editors-picks/3260
マスナガデザイン部 https://masdb.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?