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言葉のアパルトマン

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詩や散文、頭に浮かんだ言葉を書いています。
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記事一覧

三行詩:選挙ポスター

傘がきかない 下から上に雨が降るようなこの時代 今までの考えで作られたものが通用しなくなってきている

三行詩:ぼう

耄期の男たちの謀略で動いている国に 恐ろしい三つの「ぼう」が渦巻いている 暴力、傍観、そして忘却で人々が倒れていく

三行詩:雨の日

SNSを具現化した光景だった 低い雨雲で上層階が見えないビル群 顔を隠して集まり 湿度の高い話をしている

三行詩:懐古

あの頃は良かったという古びた箱をいつか手放さなくては 時間が経つほどにひどく重くなるから 抱えたままでは前に進めないし遠くまでは行けない

三行詩:金権首相

傲岸不遜 我田引水 身勝手な言葉の中に潜んでいる首相の名

三行詩:立派な政治屋の心構え

男は国のために戦いなさい 女は国のために産みなさい 私たちのために働きなさい

三行詩:招待状

諦めへの招待状が絶え間なく私宛てに届く やめてしまえば苦しむ事も悩む事もなくなると 卑屈な私からの招待状が隙あらば目の前に置かれる

三行詩:インソムニア

ユートピア シャングリラ アルカディア たどり着くのは無理だろうか 命の頁を途中で閉じてしまったら 消えてしまいたいと願う心の宿痾 周囲の視線はこの上なく激しいtorture 街が動き出す朝が近づいてきたら 重力とロープで私らしい最期の描写

三行詩:選挙

苦しむ人たちの怒りがこの上なく沸き上がりついに堤が切れた 何をしても変わらないから無駄だと諦めていた「放棄」が 健やかな未来を私たち自身で決めるための「蜂起」に変わる瞬間

三行詩:矩形の海

情報が溢れる溟海を漂い続け いつまでも除去される事のない機雷名「差別」 時が経っても人を傷つけ命を奪う

三行詩:臨終

病床に横たわる痩躯 もうすぐ空に消えるのがわかる この上なく透き通った明けの三日月

三行詩:経年

時の流れで色が深まり 傷もまた味わいとなる 革手帳のような人になりたい

三行詩:矛盾

効率良くやろうと考えすぎて時間を使ってしまう 執着を手放す事にいつの間にか執着している 自分らしく生きる事にこだわりすぎて己を見失う

三行詩:本

本を読むと心に水が湧き それが池に川に湖に 果てしなく広がる海になる 頁をめくるたびに心がほぐされ 水と空気が奥深くまで入ってくる 本とは私を豊かに育てるための耕耘機