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詩集 いのちのぱん

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どこからか降ってくる言葉たちと編みました。 気に入っていただけたら嬉しいです。
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春が来て。

用水脇の片隅に見つけた春。 陽の光を感じ 風に吹かれ 青い空を見上げて 春の訪れを知る。 非日常が巣食う日常か、 日常の向こうに孕む非日常を掬うのか。 人の「不安」が世界経済を動かす。 ならば、人の「平穏」がもたらすものは何だろうか。 目の前に芽吹くものを愛おしむ。 たったそれだけの気持ちがもたらすものは。 昨日射す陽が慈陽であればいい。 今日降る雨が慈雨であればいい。 明日吹く風が滋養になればいい。 そう祈る。

【微力】

「聴く」ことの深さを。 「問う」ことの重さを。 「視る」ことの広さを。 自分の五感を開示して。 持てる力を投入して。 全神経を傾ける。 だけど。 それでも。 なんと微力な自分であることか。 落ちる私を、 落つる夕陽が宥めて、慰めて、沈む。 明日、晴れたら、いいな。

気配

雨と雷と風と雲とお陽さま。 視えない大気を可視化するように、 秋の匂いが充満する空に紋様が浮かぶ。 追いかけて、振り仰ぎ、 追いついて、見失い、 呼び声に応えて、掌中に収める。 あの雲の向こうに夜が在る。 あの空の向こうから朝が来る。 それを報せに来たものが、 埋もれた五感を呼び醒ます。 深い眠りから覚めて最初に視るものは、 生まれ落ちた時に 握り拳を開いて手放した魂のカケラ。 ーそれは希望であり笑顔であり慈しみであり愛。 ーそれは目で耳で鼻で唇でいのち。 ーそれ