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先に列へ連なった友人へ

「〇〇の兄の△△と申します。先日、弟の〇〇が亡くなりました。つきましては葬儀を開催します。サークル仲間の皆様には生前大変お世話になりました」

2016年のある夏の日。突如、こんなメッセージを受信した。信じられなかった。

君は、サークルの一年後輩だった。いつもニコニコして、でも少し天然なキャラで。一年先輩だからといっておれは先輩風を吹かしたりもしていたのに。「真澄さんありがとうございます😂」という絵文字をよく使って、いつもとても素直に接してくれたね。

サークルの追い出しイベントで、みんな卒業文集みたいなものをA4一枚書く。みんな感極まって長文を書きがちだし、おれも怪ポエムみたいなものを書いていたとおもう。でも、君は、大きな文字で、これだけを書いたことを覚えている。

「◯◯合唱団で歌えて、僕、満足!!」

そんなシンプルな構成で書くやつは君しかいなかった。何年かかっても、おれは君のようにはなれない。

君は、地元の浜松で就職をして。自動車関係工場の生産技術職になって。家族を大事にしていたから、ちょっと自分の専門性と違う仕事でも、地元に残ろうとしたのかな。

葬儀のため慣れない喪服を着て浜松まで向かう。集まったサークル仲間たちは、皆、彼が亡くなってしまったことに対して語る言葉を持っていない。みんな20代で、友達が亡くなるという経験をした人なんてほとんどいない。
涙なんか流しているのを見たことないのに号泣している人。立ち尽くす人。ただただ混乱している。

あのときのおれは、面接で大きなことを言って会社に入ったはいいが、全然仕事ができない。毎日上司に怒られる。途方に暮れていた。きっとみんなそんなものだったのだろう。君もまたそうだったのだろうか。そんな中、旅立ってしまった。

あれから8年が経ち、サークルの仲間と再会する機会があって。おれの人生もみんなの人生も変わっていて、うまくいかなかったことも折り合いの付け方を覚えたりもして。それでも、時々君のことを思い出す。

生きている時がどんなに楽しくても、そうではなくても終わりが必ずある。先に行って、君はそれを教えてくれたんじゃないかって。何かと格好つけたがりのおれは、飾らなかった君から、いまも学ぶところがあるんじゃないか。

生きているとか死んでいるとか、そんなつまらないことで、友達の君を区別することなんてあるものか。先人が連なっている列に、君は先に加わって、おれは後から行く。ただそれだけだ。また必ず会える。

今度サークル仲間と会ったら、君の話をしようと思う。そして君の墓に花を添えにいく。

君の故郷の浜松を通り過ぎる新幹線から、君の家の方に手を合わせながら。

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