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「すごくキレイよ!」

毎年必ずお世話になるところ。

歯医者さんである。

日本でも、こちらに引っ越してからも、変わらず歯医者通いは続いている。

子供のころからなぜか虫歯が多かった。学校では新学期の初めに受ける定期検診で必ずBとかCとか書かれた紙を持たされて帰ってきた。

特に歯磨きをサボった覚えはないし、家には歯間洗浄用の特別なマシンすらあったぐらいだから、親もちゃんと気を付けていたのだろうけど、本人の自覚がないのに次々と虫歯が発見され歯医者行きとなるのである。そういう歯の質なんだろうと諦めている。

そんなわけで、自慢にもならないが歯医者の患者歴は長い。

色んな先生に診てもらい、治療の順序もだんだん分かるようになった。軽い虫歯だからこれだな。根っこの治療はこうやるんだよね。とか。何十年も通っているので、技術の進歩までも分かるようになってきたりして。子どもの頃はこんな器具使ってなかった、とか。

スウェーデンに来てから虫歯がなくなるわけでもなく、やはり毎年のように通っていて、先日も一通りの治療が終わったところだ。

私の今お世話になっている歯医者さんは3軒目である。

こちらに来て最初に行った歯医者さんは東欧系のおじいちゃんだった。家から徒歩2分。優しい人だったけど、ちょっと手つきがおぼつかなく不安を覚えた記憶がある。案の定しばらくして若い中東系の女性がクリニックを継いだ。おじいちゃんは退職したそうだ。

その女医さんの所にもしばらく通ったが、定期検診のお知らせが途切れてそのままになっていたところ、虫歯ができてしまい、その時知り合いに勧めてもらったのが今通っているクリニックである。

若い男性の先生がオーナーのプライベートの診療所で、日本も含め今まで診てもらった歯医者さんとは印象が大きく違う。かなりカジュアル。歯医者というより美容師さんと話しているような感じだろうか。

「やあ、元気?仕事はどう?」

と、ごく普通の会話で始まり、治療中も助手の人とずっとおしゃべりをしている。しかも、休日何をしただとか、今度来る研修生の話だったり、今行われている治療とは何ら関係のない内容である。話をしていないと思ったら、ラジオから流れる音楽を口ずさんだり。これにはちょっと驚いた。

でもそのくせめちゃくちゃ仕事が早い。そしてとても腕がいい(と思う)。ちょっとした虫歯は削って埋めて30分ぐらいでハイ終了。

日本でひとつの虫歯に対して何度も歯医者に通わされたことを思うと大きな驚きだ。

彼はインプラントのエキスパートでもあるらしく、仕事の関係で日本にも行ったことがあると言う。なんでもスウェーデンと日本は歯科医療(特にインプラント?)の先進国なんだとか。

スウェーデンではスタンダードなのかなと思うのだが、検査後、治療を始める前に必ずどれだけ費用がかかるか教えてくれる。場合によっては分割払いの提案もしてくれる。加えて、どれぐらい補助が出るのか、つまりどれぐらいの割引になるのか、の説明もしてくれる。

こちらの歯医者さんの費用は高い。クラウンひとつに10万円近くかかることもある。ただ、治療費が一定額(確か3000クローネ=4万円ぐらい)を超えると補助を受けられる仕組みになっていて、その補助は治療費が高額になればなるほど多く出る。なので私のような毎年複数の歯が悪くなるような人は、その補助をフル活用することになる。補助は1年ごとに更新。つまり1年たったらまた最初の3000クローネは自己負担、その後治療費が上がるごとに補助額も増えていくという仕組み。

「補助がなければこの値段です。それが今ならなんとこんなお値段に!」

とテレホンショッピングばりのセリフで嬉しそうに値段を教えてくれる。

先日終わった治療は、同じクリニックの別の先生によるものだった。その先生も若く、30代ぐらいだと思う。彼もまたとてもカジュアル。そして前の先生同様、治療中に普通に雑談をしている。でも仕事は確実で早いのだ。

今回は何と合計5か所の治療だ。

まずひとつ目。クラウン(銀歯)が取れてしまい、その下の歯の治療とクラウンの作り直し。2回で終了。同じ日にレントゲンを含む検査をして他の問題箇所4つが見つかる。

その4か所中2か所は大昔に日本で治した歯で銀歯がついている。それをはずして治療し、型をとる。それでその日は終わりかと思いきや、まだ時間があるから続いて他の歯も治しましょう、と小さな虫歯を治療完了。

「まだもうちょっと時間あるけど、最後の歯、今日治す?」

と聞かれたが、私の方がギブ・アップ。既に2つの大きな歯(同じ側にある上下)を治療し、口の片側は麻酔をしていても痛む。3か所目である小さな虫歯を治すときは麻酔を使わなかったけど、やっぱり削られるとそれなりに痛かった。もう今日はこれで勘弁してくれー。ということでその日は終了。痛いのは痛いけど、でもなんとまあ、作業の早いこと。

そして最終回。新しくできた2つのクラウンは調整する必要もなく完璧に収まり、先生も満足そう。

「パーフェクト!これはお手本並みだね。色も他の歯(治していない歯)と違いが全然わからないよ。」

「本当!あなた、これ喜んでいいわよ。見たら嬉しくなると思う。もうバッチリ。すごくキレイよ!」

とは助手の言葉。

褒められているのか、歯医者側の自画自賛なのか、なんだかよく分からないけれど確かにすごくキレイになった。クラウンは銀歯ではなく歯と同じ色を選んでくれているので、虫歯なんて元々なかったみたいに見える。

最近はもう「銀」歯を使うことはなくなっているのかもしれないけれど。

ちなみに今回治療した奥歯に元々ついていた銀歯は、実はゴールドだったそうで、

「これ、街のお店に持って行って売ったらいいよ。」

と若い先生は言って、別室で洗浄しケースにまで入れてくれて、お持ちかえりとなった。それにしても、何10年も口の中にゴールドが入っていたのか、私。

そんなことで治療が完了したわけだが、結局どれぐらい費用がかかったか。

先生自慢の(?)割引率がどれぐらいなのかを最後にお見せしたい。
5か所中4か所治療した後のレシートだ。

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4つの項目があるが、一番上、704と書かれたものは新しくできた小さな虫歯を扱ったもの。続く2つ、800と番号があるのはクラウンの作り直しを含めた大きな虫歯の治療、最後703は以前治したところがまた悪くなって再治療、でもクラウンは必要ナシ、という内容。

右にかかれた値段が、800と990、5910と6780と2つあるのは、左側が参考プライス(私立公立関わらず値段の平均はこんな感じですよ、という意味だと思う。ネットで誰でもアクセスできる治療費の参考用値段表がある)、右側はこのクリニックの独自の値段。
で、ご注目いただきたいのが合計だ。

右端に太字で15990とある。普通にウチで治療したら15990クローナ、約20万6千円になりますよ、と。そしてその下、11759.75クローナが補助額、15万1500円。で、実際支払うのは4230.25クローナ、5万4500円ですよ、ということである。

実に実際の治療費の7割以上が補助として出ているのだ。これは大変ありがたい。5万円の治療費は痛いが、もし20万円だったら痛すぎる。

そもそも虫歯を作らなければいい話なんだけれど、たぶんこれからもお世話になり続けそうな気がする。今後もよろしくお願いします、歯医者さん。

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