そして身近なところから土壁などの伝統的構法の実践をしてみようと試みている。
現存する遺構から判断して、左官構法の起点は法隆寺金堂の壁画の下塗りである。飛鳥時代から続く長い歴史と伝統を持つ左官であるが、左官工事量は工事の絶対量、相対量のいずれも減少している。建築工事全体に対する左官工事業の完成工事高が占める割合は、近年は概ね1%前後で推移している。業種別の就業者数に関しても令和3年で27634人と全体に対しての構成比で0.6%、前年度比では-23.5%と大幅に減少した。
左官はこのまま滅んでもよいのか。いやそうではない。
住宅の壁仕上げとして左官仕上げの持つ美しさ、自然材料を原料とすること、壁の持つ調湿作用等のメリットは非常に魅力的である。現在では多くの左官仕上げが健康志向の住宅に採用されており、その総量も増加している。しかしその多くは、水と混練するだけで手軽に材料が出来上がる既調合漆喰等の新建材を採用する傾向が強く、伝統的左官仕上げを採用することは稀である。その理由としては、伝統的左官工事は手間と技術を要するため、他の仕上げ材料や技術と比較してコストが高くなりがちであるということである。特に、熟練した職人による手作業が必要な工法では人件費が大きな割合を占めることが挙げられる。また伝統的な技術は、乾燥や硬化に時間を要することが多く、建設プロジェクトのスケジュールに影響を与えることが多いことも理由の一つだ。さらに現代社会は熟練した左官職人の数が減少しており、このため適切な技術を持つ職人を見つけることが困難になっていることも理由となっている。
そこで僕は4月から左官に関する研究をするためにものつくり大学の大学院生になることを決めた。今後の研究を通して左官の盛り上がりに貢献したいと思っている。写真は弊社のトイレに塗った土壁の様子である。素材は淡路島の土に藁を混ぜたのみ。とても素朴で良い風合いに仕上がった。
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