猛暑

最近、とても暑いです。
まぁ、私は人形なので大丈夫なのですが。
「じゃあ、美子ちゃん、気をつけて帰るのよ」
座敷童子の仕事も終わり、美子ちゃんに声をかけます。
「はぁい、お疲れ様でした」
そう言うと涼しげな麦わら帽子をかぶり、帰っていきます。
超狼も家庭の事情で今日はお休み。
私は戸締りをして帰路につきます。

家に帰ると、おばあさんが縁側にぐったりと座り込んでいました。
「あぁ、華かい、おかえり」
声にも元気がありません。
私は慌ててかけよります。
「大丈夫ですか、おばあさん」
「ちょっと頭が痛くてねぇ…気分もよくないよ…」
体を触ってみると…ちょっと熱い感じがします。
「風邪…ですかね…?」
「ついさっきまで元気に庭の手入れをしていたんだけどねぇ…」
「熱中症ですよ、それ!」
私はつい大きな声を出してしまいます。
私は専用の電話を取り出し、応援を求めます。
「あ、もしもし、女神様?
あ、はい、華です。
実はおばあさんがどうも熱中症みたいで…」
「あら、それは大変ね、すぐに行くから」

電話を切って2分ほどで呼び鈴がなります。
出てみると、女神様とコマさん、護さん。
「こんにちは、応急処置に来ました」
「どうぞ、入ってください」
お座敷に皆さんを連れて行きます。
「あぁ、華…孫たちによろしく伝えておくれ…
お迎えが来たようだよ…」
「お見舞いに来てくれたんですよ!」
まったく…シャレになりません。
女神様は苦笑いをしています。
「こんにちは、お久しぶりですね」
「あぁ、神主さんでしたか…
てっきり女神様がお迎えに来たのかと…」
「ちょっと横になって休んでください」
女神様は座布団を枕代わりにしておばあさんに渡します。
「コマ、経口補水液の準備、護くん、冷房をつけて扇風機を探して来て」
「あぁ、扇風機はこちらに…」
私は扇風機のある場所に案内をします。
その間に、女神様は保冷剤をタオルに包み、首と両方の脇の下、足の付け根辺りを冷やします。
「どうぞ」
コマさんが経口補水液を紙コップに入れて渡します。
おばあさんは体を起こし、少しずつ飲みました。
そしてふぅ、と一息つきます。
「これは美味しいねぇ」
「もう少しいかがです?」
「お願いしようかねぇ」
そう言って、2杯目もしっかり飲みました。
扇風機の風がゆるやかにおばあさんに当たります。

30分くらい横になり、おばあさんは言いました。
「だいぶ良くなって来たよ」
女神様はおばあさんの様子を見ながら大丈夫そうね、と言いました。
「経口補水液は冷蔵庫に入れておくから適度に飲ませて」
「はい、ありがとうございます」
女神様は優しく微笑むと、来たみたい、と言いました。
外から声が聞こえます。
「ねぇ、おばあちゃん病気って本当?
大丈夫?」
「多分大丈夫だけど二人を呼んできてって頼まれたの」
「おばあちゃんに?」
「ううん、女神様」
「まぁ、お盆明けてからきてなかったし…」
あぁ、由美ちゃんだ。
美子ちゃんが呼んできてくれたみたいです。
「じゃあ、お大事になさってくださいね」
振り向くと、女神様たちはもういませんでした。
「ありがとうねぇ、華…みんなを呼んでくれて…
私は幸せ者だよ」
「えぇ、座敷童子ですから」
そこへ、由美ちゃんが入って来ました。
「おばあちゃん、大丈夫?」
もう、すっかり元気なようです。

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