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父の人生を変えた『一日』その64 ~世のために人のために~

その64 ~世のため人のため~
 頭が角刈りヘアースタイルの真面目そうな東北弁を話す東海営業所の中村氏がライオンに会いたいと来社があった。この会社は総合商社等が木材の輸入している現状を見て自社での直輸入を試みていた会社であった。自社で直輸入できる会社がなぜ総合商社の㈱トーメンのライオンに会いに来たか最初は解らなかった。
『ライオンさん総合商社の力に比べたら中小の輸入業者などは到底力が知れていますよ。』と彼は言った。そして自分のおかれた状況を素直に正直ライオンに説明し協力体制をお願いしてきた。
 伊勢湾台風の時の10数年前に話はさかのぼる。天竜川が氾濫し大洪水が発生し、ある製材工場が稼働不能になった。そしてこの会社は倒産しかけた。そして中村さんの会社、江間忠木材が債権を全て肩代わりしてこの工場の再建に乗り出した。細い丸太から垂木を作る製材工場であった。中村氏はこの工場の債権のために東海営業所長としてこの工場に赴任してきた。今までの営業所長では債権が巧くいってなかった。
ライオンは何度も何度もこの工場に足を運びどうしたらこの工場を儲けさせて再建させられるかばかり考えていた。理論理屈はしっかりと理解した。そしてあの大地アメリカの細丸太をいかに買い付けるか検品に検品を重ねた。細い丸太、特に栂つがの細い丸太の知識に関しては誰にも負けない専門知識をライオンは収得していた。
『よし、これならいける』とライオンの眼光がキラリと光った。そしてアメリカに飛んだ。ここからはアメリカのシッパーをいかに説得するかかかっていた。『中村氏を男にさせる』そして数年でこの工場を再建させるライオンは肝に命じた。

~倅の解釈~
 親父の情熱的になるスイッチは非常にシンプルであった。とにかく『人』をこよなく愛し、そこに感動的なドラマがあったらとことんその人を応援する。『本には必ず起承転結がある。人の人生もそうだ』。父が良く話ししていた。『互いのヒューマンドラマをぶつけ合うことで『信頼』というものが生まれ、助け合いの精神が波及していく。商売の根底なんてシンプルだ』。
 特に、困っているが諦めていないというシチュエーションを父はこよなく愛した。女性を愛する以上に愛した。この精神は水澤家、家族にもいつの間にか波及してた。どこか困っている人がいれば必ず声をかける家族文化がいつの間にか存在していた。
 『お前はよくそう声かけれるよな』そんなことを私はよく言われるが、それは親父からの遺伝である。困った人をほっておけない。人はこれを徳を積むというかもしれないが親父も私もそんなつもりでやっているわけではない。
 でも、必ずこんな人生をおくっていると色々なところで奇跡が生まれ、感動という素晴らしいご褒美をもらえる。『世のため、人のため』こんな精神が絶対に今の日本には必要だとあらためて感じる。


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